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841.【ハル視点】食事会への誘い
座り心地の良いソファに、アキトと二人並んで腰を下ろす。両親が配ってくれた飲み物を一口飲んでから視線を上げれば、みんなもそれぞれソファに落ち着いた所だった。
どうやらアキトに質問をしすぎないようにと気をつけてくれているらしく、話題は色々な方向へと飛んでいった。
和やかな空気の流れる中での会話を楽しんでいると、再びノックの音が響いた。
「どうぞ」
父さんの声かけを待って部屋へと入ってきたのは、予想通り執事のボルテだった。
「失礼いたします」
ボルテは優雅な一礼をしてから、口を開いた。
「ケイリー様、お食事のご用意が整いました」
「そうか、分かった。ありがとう」
案内は私がするから下がってくれて良いよとさらりと続けた父に、ボルテはもう一度丁寧に一礼してからすぐに部屋を出ていった。
普通なら貴族家の領主が自ら客を案内するなんて、そうそうあり得ることじゃない。相手によっては使用人の真似事かと非難されたり、自分の事を軽んじているのかという疑いを持たれるかもしれない行為だ。
まあ、うちの家族は貴族らしくない家だからな。これぐらいは許して欲しい。
どうやら俺の読み通り、ここからは家族そろっての食事会になるようだ。アキトにも事前に伝えておいて良かったなと考えていると、不意に父が口を開いた。
「アキトくん」
「っ!はいっ!」
急に自分自身の名前が呼ばれた事によほど驚いたのか、返事の声は思いっきりひっくり返っていた。ビクッと身体を揺らしてから、恥ずかしそうに頬を染める姿はとても可愛い。
そんな慌てるアキトの反応に、母とウィル兄が噴き出しそうになりつつなんとか堪えているのが視界の端に見えた。アキトが気にするからやめてくれ。
ここは笑いそうな二人を注意すべきか?それともアキトを慰める方が先だろうか?
そんな事を考えている間に、ジルさんが隣に座っているウィル兄を見据えて口を開いた。
「ウィル、そんな事でそんな風に笑うのは失礼です」
「えーごめん。一応笑っては無かったよ?」
「いいえ、あれは笑ってたも同然です」
ウィル兄への注意は、ジルさんがきっちりしてくれるようだ。
「君の歓迎をかねて食事の用意をしてもらったんだが、もしよければアキトくんも参加してもらえるだろうか?」
もちろん疲れているなら無理にとは言わないよと、父はさらりとそう続けた。
「そうそう、別に歓迎会は今日じゃなくても良いんだからな」
明るく笑いながらの母さんの言葉には、アキトが断りやすくするための気づかいがたっぷり込められている。
そうだな。ここで無理をさせたくは無いよな。両親の考えに乗って、俺もすぐに口を開いた。
「アキト。顔合わせは無事に終わったんだし、母さんも言ってたけど疲れてるなら後日でも良いんだからね?」
うちはみんな伴侶優先に慣れてるから何も問題は無いよと、俺は笑顔で続けた。
「無理だけはしないで欲しいんだが…どうだろう?」
父は伺うようにアキトの顔を見つめて尋ねる。
「お気づかいありがとうございます。いえ、まだまだ元気ですよ」
「だが、初めての魔法陣での移動に加えて、あの階段の後だろう?本当に大丈夫かい?」
もう一度確かめるように尋ねた父に、アキトはニコッと笑みを浮かべてすぐに頷いた。
「大丈夫です。むしろ参加させて欲しいです!」
元気に即答したアキトをちらりと見てから、父さんは今度は俺をじっと見つめて口を開く。
「…ハルの意見は?」
もしハルから見てアキトくんが無理をしていると思うなら、頼むからここで止めてくれ。そう訴えかけてくる視線を感じながら、俺はちらりとアキトの様子を伺った。
うん、特に普段と比べて顔色が悪いわけではないし、浮かべている笑顔も自然なものだ。体力的には疲れているだろうが、本当に心から参加したいと希望してくれているらしいアキトの邪魔はしたくない。
「アキトが大丈夫だと言うなら、俺も文句は無いよ」
俺から止めるほど体調は悪くないよと匂わせれば、父さんはやっとすこしだけ笑みを浮かべた。
「…そうか。それじゃあアキトくんもぜひ参加して欲しい」
「はい、ありがとうございます」
領主城の長い長い廊下を、俺達はぞろぞろと連なって歩く事になった。
案内役を務めている父と母が先頭を歩き、そのすぐ後ろにアキトと俺が続いている形だ。
貴族のルールにのっとれば、本来ここを歩くのは長兄のファーガス兄さんと伴侶のマティさんなんだがな。今回は今日の主役はアキトと俺だからと、あっさりと譲られてしまった。
まあここには口うるさい文句をつけてくるような貴族なんていないから、別に問題はないかと俺はすぐにその提案を受け入れた。
アキトを尊重しようとしての提案だったからな、断るなんて選択肢が無かったとも言える。
どうやらアキトに質問をしすぎないようにと気をつけてくれているらしく、話題は色々な方向へと飛んでいった。
和やかな空気の流れる中での会話を楽しんでいると、再びノックの音が響いた。
「どうぞ」
父さんの声かけを待って部屋へと入ってきたのは、予想通り執事のボルテだった。
「失礼いたします」
ボルテは優雅な一礼をしてから、口を開いた。
「ケイリー様、お食事のご用意が整いました」
「そうか、分かった。ありがとう」
案内は私がするから下がってくれて良いよとさらりと続けた父に、ボルテはもう一度丁寧に一礼してからすぐに部屋を出ていった。
普通なら貴族家の領主が自ら客を案内するなんて、そうそうあり得ることじゃない。相手によっては使用人の真似事かと非難されたり、自分の事を軽んじているのかという疑いを持たれるかもしれない行為だ。
まあ、うちの家族は貴族らしくない家だからな。これぐらいは許して欲しい。
どうやら俺の読み通り、ここからは家族そろっての食事会になるようだ。アキトにも事前に伝えておいて良かったなと考えていると、不意に父が口を開いた。
「アキトくん」
「っ!はいっ!」
急に自分自身の名前が呼ばれた事によほど驚いたのか、返事の声は思いっきりひっくり返っていた。ビクッと身体を揺らしてから、恥ずかしそうに頬を染める姿はとても可愛い。
そんな慌てるアキトの反応に、母とウィル兄が噴き出しそうになりつつなんとか堪えているのが視界の端に見えた。アキトが気にするからやめてくれ。
ここは笑いそうな二人を注意すべきか?それともアキトを慰める方が先だろうか?
そんな事を考えている間に、ジルさんが隣に座っているウィル兄を見据えて口を開いた。
「ウィル、そんな事でそんな風に笑うのは失礼です」
「えーごめん。一応笑っては無かったよ?」
「いいえ、あれは笑ってたも同然です」
ウィル兄への注意は、ジルさんがきっちりしてくれるようだ。
「君の歓迎をかねて食事の用意をしてもらったんだが、もしよければアキトくんも参加してもらえるだろうか?」
もちろん疲れているなら無理にとは言わないよと、父はさらりとそう続けた。
「そうそう、別に歓迎会は今日じゃなくても良いんだからな」
明るく笑いながらの母さんの言葉には、アキトが断りやすくするための気づかいがたっぷり込められている。
そうだな。ここで無理をさせたくは無いよな。両親の考えに乗って、俺もすぐに口を開いた。
「アキト。顔合わせは無事に終わったんだし、母さんも言ってたけど疲れてるなら後日でも良いんだからね?」
うちはみんな伴侶優先に慣れてるから何も問題は無いよと、俺は笑顔で続けた。
「無理だけはしないで欲しいんだが…どうだろう?」
父は伺うようにアキトの顔を見つめて尋ねる。
「お気づかいありがとうございます。いえ、まだまだ元気ですよ」
「だが、初めての魔法陣での移動に加えて、あの階段の後だろう?本当に大丈夫かい?」
もう一度確かめるように尋ねた父に、アキトはニコッと笑みを浮かべてすぐに頷いた。
「大丈夫です。むしろ参加させて欲しいです!」
元気に即答したアキトをちらりと見てから、父さんは今度は俺をじっと見つめて口を開く。
「…ハルの意見は?」
もしハルから見てアキトくんが無理をしていると思うなら、頼むからここで止めてくれ。そう訴えかけてくる視線を感じながら、俺はちらりとアキトの様子を伺った。
うん、特に普段と比べて顔色が悪いわけではないし、浮かべている笑顔も自然なものだ。体力的には疲れているだろうが、本当に心から参加したいと希望してくれているらしいアキトの邪魔はしたくない。
「アキトが大丈夫だと言うなら、俺も文句は無いよ」
俺から止めるほど体調は悪くないよと匂わせれば、父さんはやっとすこしだけ笑みを浮かべた。
「…そうか。それじゃあアキトくんもぜひ参加して欲しい」
「はい、ありがとうございます」
領主城の長い長い廊下を、俺達はぞろぞろと連なって歩く事になった。
案内役を務めている父と母が先頭を歩き、そのすぐ後ろにアキトと俺が続いている形だ。
貴族のルールにのっとれば、本来ここを歩くのは長兄のファーガス兄さんと伴侶のマティさんなんだがな。今回は今日の主役はアキトと俺だからと、あっさりと譲られてしまった。
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