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845.料理と気遣い
「アキトくんは、チーラが気に入ったのかい?」
「はい、シャキッとしてるのにみずみずしくて、すごく美味しいです」
あまりの美味しさに満面の笑みで答えれば、ケイリーさんは呆れるでもなく嬉しそうに笑ってくれた。
「あ、アキトくん、そっちのソースをつけて食べても美味しいよー」
俺はソースありの方が好きなぐらいと、ウィリアムさんはニコニコ笑顔で教えてくれた。隣でジルさんも頷いているから、ジルさんもソースありがお勧めらしい。
もちろん二口目は、かかっていたソースをちょこっとつけて食べてみたよ。
あー…うん。これまたすっごく美味しいな。ちょっと濃いめのチーズっぽい風味のするソースだ。これってチーズでは無いのかな。いったい中には何が入ってるんだろう?
「どう?どう?」
「んっ!ソースをつけたのも確かに美味しいです!」
「良い反応だ、口には合ったようだね」
ファーガスさんはそう言うと、部屋の隅に控えていた男性にそっと目くばせを送った。ぺこりと一礼して部屋から出ていった男性を思わず目で追っていると、彼は料理長に伝えに行ったんだよとハルがこっそり教えてくれた。
なんでもこういう時は、客の反応を見て少しずつ味を変えたりするものなんだって。そんな微調整までしてるとか、料理長さんってすごいんだな。あと、見られている事に気づかせなかったあの人も、すごい人だと思う。
「それにしても、今日の食事にこの形式の料理が出てくるとは思わなかったよ」
ハルはすこしだけ苦笑しながら、ケイリーさんにそう尋ねた。
たしかに、ハルはこの形式の料理が出てくる可能性はかなり低いと思うけどねって、そう言ってたもんね。一応念のためって感じで説明してもらっただけだったし。
「まあなーこの形式にしなくても良いんじゃないかって、私は言ったんだぞ?」
味は確かに美味いけど、どうしても堅苦しい雰囲気になるし、慣れてないと疲れるだろう?と続けたグレースさんは、その言葉に反して美しい所作で優雅に料理を口に運んでいる。
本人曰くの貴族らしい演技をしていない時でも、食べ方はすごく綺麗なんだな。マティさんも食べ方はすごく優雅なままだし、ハルの兄弟たちもすごく綺麗に食べ進めている。
「ああ、きっと母さんならそういうだろうと思ってたからね…」
だから予想外だったんだと言いたげなハルに、ケイリーさんが少し申し訳なさそうに答えた。
「それは駄目だと、私がグレースに断ったんだ」
「そうなのか?それはまたどういう理由で?」
何か理由が無いと父さんが母さんの提案を拒否なんかしないだろうと、ハルはさらりとそう尋ねる。
ケイリーさんは、本当にグレースさんには弱いんだね。今のハルの言い方で分かっちゃったよ。
「まあすごく単純な理由だよ。アキトくんとの初対面の食事でそれをしてしまうと、もしかしたら辺境領は彼を歓迎していないという意味に取られるかもしれないだろう?」
「ああ、なるほど」
後でハルが教えてくれたんだけど、この国ではないけど実際にそういう慣習がある国もあるんだって。歓迎してればコース料理形式で、そうじゃないとそれ以外の料理を出すらしい。
そんなルールがあったりする国もあるんだ…。
「もちろん、私たちがアキトくんを歓迎している気持ちは本物だが――」
ケイリーさんはそこで言葉を切ると、じっと俺とハルを見つめた。
「もしそう考えた誰かから文句をつけられたりしたら、ハルとアキトくんが困るだろうと思ってな…?」
これは私の考えすぎかもしれないが、邪魔が入らないようにと考えたんだ。ケイリーさんは、苦笑しながらもそう説明してくれた。
そうか。わざわざこの形式での食事にしてくれたのは、俺とハルのためだったのか。
「そう言う事か。父さんの配慮に、心から感謝します」
目礼しながら告げたハルの横で、俺も一緒になって目礼をおくる。
「俺からもありがとうございます」
「どういたしまして」
ニコッと笑ったケイリーさんの横から、またしても顔を出したグレースさんは楽し気に笑いながら続けた。
「まあ、もしここまでしてそれでも変なやつに絡まれたりしたら、ハルか…せめて私達の誰かには教えてくれ」
そこはきっちり私が話を通すからなと呟いた声は、聞き取り難いぐらいに低かった。ちょっと怖い感じがしたのはなんでだろう。グレースさんは別に怖い人じゃないのにな。
「はい、シャキッとしてるのにみずみずしくて、すごく美味しいです」
あまりの美味しさに満面の笑みで答えれば、ケイリーさんは呆れるでもなく嬉しそうに笑ってくれた。
「あ、アキトくん、そっちのソースをつけて食べても美味しいよー」
俺はソースありの方が好きなぐらいと、ウィリアムさんはニコニコ笑顔で教えてくれた。隣でジルさんも頷いているから、ジルさんもソースありがお勧めらしい。
もちろん二口目は、かかっていたソースをちょこっとつけて食べてみたよ。
あー…うん。これまたすっごく美味しいな。ちょっと濃いめのチーズっぽい風味のするソースだ。これってチーズでは無いのかな。いったい中には何が入ってるんだろう?
「どう?どう?」
「んっ!ソースをつけたのも確かに美味しいです!」
「良い反応だ、口には合ったようだね」
ファーガスさんはそう言うと、部屋の隅に控えていた男性にそっと目くばせを送った。ぺこりと一礼して部屋から出ていった男性を思わず目で追っていると、彼は料理長に伝えに行ったんだよとハルがこっそり教えてくれた。
なんでもこういう時は、客の反応を見て少しずつ味を変えたりするものなんだって。そんな微調整までしてるとか、料理長さんってすごいんだな。あと、見られている事に気づかせなかったあの人も、すごい人だと思う。
「それにしても、今日の食事にこの形式の料理が出てくるとは思わなかったよ」
ハルはすこしだけ苦笑しながら、ケイリーさんにそう尋ねた。
たしかに、ハルはこの形式の料理が出てくる可能性はかなり低いと思うけどねって、そう言ってたもんね。一応念のためって感じで説明してもらっただけだったし。
「まあなーこの形式にしなくても良いんじゃないかって、私は言ったんだぞ?」
味は確かに美味いけど、どうしても堅苦しい雰囲気になるし、慣れてないと疲れるだろう?と続けたグレースさんは、その言葉に反して美しい所作で優雅に料理を口に運んでいる。
本人曰くの貴族らしい演技をしていない時でも、食べ方はすごく綺麗なんだな。マティさんも食べ方はすごく優雅なままだし、ハルの兄弟たちもすごく綺麗に食べ進めている。
「ああ、きっと母さんならそういうだろうと思ってたからね…」
だから予想外だったんだと言いたげなハルに、ケイリーさんが少し申し訳なさそうに答えた。
「それは駄目だと、私がグレースに断ったんだ」
「そうなのか?それはまたどういう理由で?」
何か理由が無いと父さんが母さんの提案を拒否なんかしないだろうと、ハルはさらりとそう尋ねる。
ケイリーさんは、本当にグレースさんには弱いんだね。今のハルの言い方で分かっちゃったよ。
「まあすごく単純な理由だよ。アキトくんとの初対面の食事でそれをしてしまうと、もしかしたら辺境領は彼を歓迎していないという意味に取られるかもしれないだろう?」
「ああ、なるほど」
後でハルが教えてくれたんだけど、この国ではないけど実際にそういう慣習がある国もあるんだって。歓迎してればコース料理形式で、そうじゃないとそれ以外の料理を出すらしい。
そんなルールがあったりする国もあるんだ…。
「もちろん、私たちがアキトくんを歓迎している気持ちは本物だが――」
ケイリーさんはそこで言葉を切ると、じっと俺とハルを見つめた。
「もしそう考えた誰かから文句をつけられたりしたら、ハルとアキトくんが困るだろうと思ってな…?」
これは私の考えすぎかもしれないが、邪魔が入らないようにと考えたんだ。ケイリーさんは、苦笑しながらもそう説明してくれた。
そうか。わざわざこの形式での食事にしてくれたのは、俺とハルのためだったのか。
「そう言う事か。父さんの配慮に、心から感謝します」
目礼しながら告げたハルの横で、俺も一緒になって目礼をおくる。
「俺からもありがとうございます」
「どういたしまして」
ニコッと笑ったケイリーさんの横から、またしても顔を出したグレースさんは楽し気に笑いながら続けた。
「まあ、もしここまでしてそれでも変なやつに絡まれたりしたら、ハルか…せめて私達の誰かには教えてくれ」
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