生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
847 / 1,561

846.コース料理

「ヌキプルのスープです」

 そんな言葉と共に目の前に運ばれてきたのは、真っ白なスープだった。ヌキプルって言ってたけど、初めて聞く名前だ。白い野菜とかなんだろうか?

「あ!アキトさん、これ僕の一番好きなスープなんです!」

 キラキラと目を輝かせたキースくんは、アキトさんにも食べてもらえて嬉しいとニコニコと笑みを見せてくれる。なんて良い子なんだろう。ついつい頬が緩んでしまう。

「アキトはきっと好きだと思うよ」

 ハルの言葉にワクワクしながら、俺はそっとスプーンに手を伸ばした。すくいあげてみたスープは、どうやらポタージュみたいなすこしとろみのあるタイプみたいだ。

 キースくんの視線を感じながら口へと運べば、ふわりと野菜の甘みが口いっぱいに広がった。

 あーうん、なるほど。これは風味こそちょっと違うけど、かぼちゃとかさつまいものポタージュにちょっと似てる気がする。甘いスープが苦手な人も世の中にはいるらしいけど、俺はかなり好きな味だった。

「うん、キースくん、これ美味しいね!」
「良かったーこの甘さが好きなんです」
「しつこくないのにほんのり甘いね」
「そうなんです!」

 元気に答えてくれるキースくんを微笑ましく見つめていると、ジルさんが口を開いた。

「もしかして、アキトくんはヌキプルを知らなかったんじゃないですか?」

 ジルさんの質問に、俺はすぐにひとつ頷いた。

「はい、今初めて名前を知りました…よく分かりましたね?」

 感想ぐらいしか言ってないのにと不思議に思って思わずじっと見つめれば、ジルさんはふふと優しい笑みを浮かべて答えてくれた。

「ヌキプルはこの辺りではわりとよく使われる野菜なんですが、トライプール周辺では滅多にみないものですから」
「そうなんですか」
「ええ、なかなか面白い見た目の野菜なので、機会があればハルさんと一緒に市場で探してみてください」

 すこし悪戯っぽくそう続けたジルさんに、周りのみんなも笑いながら口々にそうしたら良いと声を揃えた。

 一体どんな見た目なんだろう。ちょっと怖いような、やっぱり気になるような。いや、ハルと一緒に探すんだったら、別にどんなみためでも大丈夫かな。

 そう思い返して顔をあげれば、ハルも悪戯っぽい笑みを浮かべていた。

「ヌキプル、探してみる?」
「うん、探してみよう!」
「辺境領でしたい事がまた増えたな」
「良い事だよね?」
「ああ、間違いなく良い事だよ。俺はアキトにもっとここを知って欲しいし、できれば好きになって欲しいからね」

 穏やかにそう続けられたハルの言葉に、周りのみなさんもコクコクと頷いている。

 俺はもうかなりここを好きになってると思うけどな。



 どんどんと運ばれてくる料理は、どれも本当に美味しかった。

 魚料理に使われていたのはこれまた見た事のない魚だったんだけど、これは近くにあるダンジョン内の池で釣られたものらしい。

――そもそもダンジョン内って池があるんだ?

 かなり驚いたけど、淡泊な白身の魚と香草の効いた力強いソースがすごくよく合っていて絶品だった。

 あと今日のコースの肉料理は、ハルの大好きなステーキだった。明らかに嬉しそうにしているハルをみんなが微笑ましそうに見つめているにの気づいてしまって、なんだかほっこりしてしまった。

 俺の知ってる野菜や果物ももちろん使われているんだけど、全く知らないものも多かった。

 それなのにどれもこれも美味しいって、料理人の人がすごすぎるよね。

 コースの最後に登場したデザートは、まるで花を閉じ込めたような見た目の繊細なゼリーだった。しかも色とりどりの花に見えているのは、全て果物なんだって。

「これは料理長の一番得意なデザートなんだよ」

 あまりに綺麗な見た目にスプーンをいれるのが躊躇われたけど、あんなに料理上手な料理長さんが一番得意なデザートと言われたら食べないわけにはいかない。

 そーっとすくいあげたゼリーは、驚いて言葉が出なくなるぐらいの美味しさだった。

「アキト、どう?」

 心配したハルにそう声をかけられるまで、俺はたっぷりと沈黙してから口を開いた。

「すごい」
「すごい…?」

 美味しいとかじゃなくてすごい?と不思議そうに繰り返したケイリーさんに、ハルは苦笑しながら答えた。

「ああ、アキトは本当に美味しいと言葉が出なくなるんだよ」

 ハル、説明ありがとう。うん、これは語彙力が消失するぐらいの美味しさでした。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。