849 / 1,561
848.困る質問
「あの…でも俺は別に料理に詳しいってわけじゃないんですけど…」
期待してくれてるのに申し訳ないけど、俺に言えるのなんてこっちの方が好きとかこっちは酸味があって好きとかそういうレベルの感想なんだよね。情けない気分で思わずそう呟けば、ラスさんはいいやと首を振った。
「味覚が鋭くて素直な感想を教えてくれるのが一番だ」
ラスさんによれば、むしろ料理の仕方とか味付けにあれこれと口出しされるのは、料理人の誇りに関わるらしい。
「だから安心して、バカ息子共の飯を楽しんでやってくれ」
ふわりと笑いながらそう言ってくれたラスさんの柔らかい笑顔は、レーブンさんとローガンさんにそっくりだった。笑うと一気に温かい雰囲気になる所も一緒なんだね。
そんな事を考えながらハルと笑い合っていると、不意にラスさんがハッと息を飲んだ。
「そうか…レーブンが息子扱いをしてるなら、俺の孫みたいなものじゃないか?」
「あー…ローガンと同じ理論だな…」
呆れ顔のハルを綺麗に無視して、ラスさんは俺を見つめて尋ねた。
「もちろんアキトくんが迷惑だと言うなら、孫扱いはやめておくが…どうだろう?俺の孫は嫌かい?」
もし断れずにいるだけで本当は嫌なら、レーブンとローガンにも俺から注意するぞ。そう続けたラスさんは、今は真剣な表情をしている。
たまにハルがする、俺の表情の変化を見逃さないようにしてる時みたいな顔だ。
迷惑なわけがないし、嫌なんてとんでもない。レーブンさんとローガンさんに俺がどれだけ慰められたか。二人の事が俺は大好きです。
何から言うべきか悩んだ結果、口から出たのはあまりに普通の言葉だった。
「いえ、あの…嬉しいです。祖父母は幼い頃に亡くなりましたし、両親とは…もう会えないかもしれないので……」
そこで思わず言葉に詰まってしまった。
普段は口にしないように気をつけているけど、両親に会いたいと思う気持ちはもちろん今でもあるんだ。この世界に来てハルと出逢えて良かったとは思ってるけど、それでもやっぱりたまに会いたいとは思う。だって大事な俺の両親だからね。
「あー…アキトくん、ご両親は…その…」
ハッと顔をあげれば、食後のお茶を飲んでいたみんながまっすぐに俺の事を見つめていた。代表して声をかけてきたケイリーさんは、悲しそうな表情を浮かべている。
「あ、いえ、両親は生きてます!」
誤解させてしまったと声をあげれば、みんなホッと息を吐いた。
「生きてるのに会えないのか?」
グレースさんの質問に、俺はこくりと頷いた。
「はい、えっと…故郷には、気軽に戻れないので」
説明ってこれで大丈夫なんだろうかと考えながら、しどろもどろに何とか続ければケイリーさんとファーガスさんが顔を見合わせた。
「こう見えて私は知り合いや友人はかなり多いんだ。伝手を使えば、たとえ異国であっても移動する事は可能だよ?」
あーはい、あの英雄ケイリー・ウェルマールさんなら、確かに顔は広いでしょうね。
「アキトくん、俺の管轄にはダンジョンの管理も含まれているんだ。つまりダンジョンから出た珍しい魔道具もたくさん保管している」
中には簡易の転移魔法陣のような機能があるものもあるよと、ファーガスさんは続けた。
「えっと…でも…」
「もうすぐ私たちとも家族になるんだ。遠慮はしなくて良いからね」
「そうだぞ、どんどん頼ってくれ」
グレースさんまで一緒になって俺を説得しようとしてるんだけど、一体これはどうすれば良いんだろう。
俺が故郷に帰れないって言ったから、何とかしてあげようとしてくれてるのは分かる。でも多分その魔道具では、俺の世界には帰れないと思うんだ。
戻る方法を探してあげると言ってくれたハルが、その可能性を考えてないわけがない。
「待ってください、皆さん落ち着いて。アキトさんが戸惑っていますから」
ジルさんの穏やかなのに説得力のある声に、みんながぴたりと口を閉ざした。
「そうそう。みんなジルの言う通り落ち着いてー」
ウィリアムさんはニコニコ笑顔で周りを見回している。俺の伴侶は最高と今にも言い出しそうな自慢げな表情だ。
「もっとはっきりさせるべき事があるだろう?」
艶やかに笑ったマティさんは、俺の方をちらりと流し見た。
「アキトさんって…どこの出身なんですか?」
キースくんの素直な質問に、俺はぎくりと固まった。
期待してくれてるのに申し訳ないけど、俺に言えるのなんてこっちの方が好きとかこっちは酸味があって好きとかそういうレベルの感想なんだよね。情けない気分で思わずそう呟けば、ラスさんはいいやと首を振った。
「味覚が鋭くて素直な感想を教えてくれるのが一番だ」
ラスさんによれば、むしろ料理の仕方とか味付けにあれこれと口出しされるのは、料理人の誇りに関わるらしい。
「だから安心して、バカ息子共の飯を楽しんでやってくれ」
ふわりと笑いながらそう言ってくれたラスさんの柔らかい笑顔は、レーブンさんとローガンさんにそっくりだった。笑うと一気に温かい雰囲気になる所も一緒なんだね。
そんな事を考えながらハルと笑い合っていると、不意にラスさんがハッと息を飲んだ。
「そうか…レーブンが息子扱いをしてるなら、俺の孫みたいなものじゃないか?」
「あー…ローガンと同じ理論だな…」
呆れ顔のハルを綺麗に無視して、ラスさんは俺を見つめて尋ねた。
「もちろんアキトくんが迷惑だと言うなら、孫扱いはやめておくが…どうだろう?俺の孫は嫌かい?」
もし断れずにいるだけで本当は嫌なら、レーブンとローガンにも俺から注意するぞ。そう続けたラスさんは、今は真剣な表情をしている。
たまにハルがする、俺の表情の変化を見逃さないようにしてる時みたいな顔だ。
迷惑なわけがないし、嫌なんてとんでもない。レーブンさんとローガンさんに俺がどれだけ慰められたか。二人の事が俺は大好きです。
何から言うべきか悩んだ結果、口から出たのはあまりに普通の言葉だった。
「いえ、あの…嬉しいです。祖父母は幼い頃に亡くなりましたし、両親とは…もう会えないかもしれないので……」
そこで思わず言葉に詰まってしまった。
普段は口にしないように気をつけているけど、両親に会いたいと思う気持ちはもちろん今でもあるんだ。この世界に来てハルと出逢えて良かったとは思ってるけど、それでもやっぱりたまに会いたいとは思う。だって大事な俺の両親だからね。
「あー…アキトくん、ご両親は…その…」
ハッと顔をあげれば、食後のお茶を飲んでいたみんながまっすぐに俺の事を見つめていた。代表して声をかけてきたケイリーさんは、悲しそうな表情を浮かべている。
「あ、いえ、両親は生きてます!」
誤解させてしまったと声をあげれば、みんなホッと息を吐いた。
「生きてるのに会えないのか?」
グレースさんの質問に、俺はこくりと頷いた。
「はい、えっと…故郷には、気軽に戻れないので」
説明ってこれで大丈夫なんだろうかと考えながら、しどろもどろに何とか続ければケイリーさんとファーガスさんが顔を見合わせた。
「こう見えて私は知り合いや友人はかなり多いんだ。伝手を使えば、たとえ異国であっても移動する事は可能だよ?」
あーはい、あの英雄ケイリー・ウェルマールさんなら、確かに顔は広いでしょうね。
「アキトくん、俺の管轄にはダンジョンの管理も含まれているんだ。つまりダンジョンから出た珍しい魔道具もたくさん保管している」
中には簡易の転移魔法陣のような機能があるものもあるよと、ファーガスさんは続けた。
「えっと…でも…」
「もうすぐ私たちとも家族になるんだ。遠慮はしなくて良いからね」
「そうだぞ、どんどん頼ってくれ」
グレースさんまで一緒になって俺を説得しようとしてるんだけど、一体これはどうすれば良いんだろう。
俺が故郷に帰れないって言ったから、何とかしてあげようとしてくれてるのは分かる。でも多分その魔道具では、俺の世界には帰れないと思うんだ。
戻る方法を探してあげると言ってくれたハルが、その可能性を考えてないわけがない。
「待ってください、皆さん落ち着いて。アキトさんが戸惑っていますから」
ジルさんの穏やかなのに説得力のある声に、みんながぴたりと口を閉ざした。
「そうそう。みんなジルの言う通り落ち着いてー」
ウィリアムさんはニコニコ笑顔で周りを見回している。俺の伴侶は最高と今にも言い出しそうな自慢げな表情だ。
「もっとはっきりさせるべき事があるだろう?」
艶やかに笑ったマティさんは、俺の方をちらりと流し見た。
「アキトさんって…どこの出身なんですか?」
キースくんの素直な質問に、俺はぎくりと固まった。
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。