生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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848.困る質問

「あの…でも俺は別に料理に詳しいってわけじゃないんですけど…」

 期待してくれてるのに申し訳ないけど、俺に言えるのなんてこっちの方が好きとかこっちは酸味があって好きとかそういうレベルの感想なんだよね。情けない気分で思わずそう呟けば、ラスさんはいいやと首を振った。

「味覚が鋭くて素直な感想を教えてくれるのが一番だ」

 ラスさんによれば、むしろ料理の仕方とか味付けにあれこれと口出しされるのは、料理人の誇りに関わるらしい。

「だから安心して、バカ息子共の飯を楽しんでやってくれ」

 ふわりと笑いながらそう言ってくれたラスさんの柔らかい笑顔は、レーブンさんとローガンさんにそっくりだった。笑うと一気に温かい雰囲気になる所も一緒なんだね。

 そんな事を考えながらハルと笑い合っていると、不意にラスさんがハッと息を飲んだ。

「そうか…レーブンが息子扱いをしてるなら、俺の孫みたいなものじゃないか?」
「あー…ローガンと同じ理論だな…」

 呆れ顔のハルを綺麗に無視して、ラスさんは俺を見つめて尋ねた。

「もちろんアキトくんが迷惑だと言うなら、孫扱いはやめておくが…どうだろう?俺の孫は嫌かい?」

 もし断れずにいるだけで本当は嫌なら、レーブンとローガンにも俺から注意するぞ。そう続けたラスさんは、今は真剣な表情をしている。

 たまにハルがする、俺の表情の変化を見逃さないようにしてる時みたいな顔だ。

 迷惑なわけがないし、嫌なんてとんでもない。レーブンさんとローガンさんに俺がどれだけ慰められたか。二人の事が俺は大好きです。

 何から言うべきか悩んだ結果、口から出たのはあまりに普通の言葉だった。

「いえ、あの…嬉しいです。祖父母は幼い頃に亡くなりましたし、両親とは…もう会えないかもしれないので……」

 そこで思わず言葉に詰まってしまった。

 普段は口にしないように気をつけているけど、両親に会いたいと思う気持ちはもちろん今でもあるんだ。この世界に来てハルと出逢えて良かったとは思ってるけど、それでもやっぱりたまに会いたいとは思う。だって大事な俺の両親だからね。

「あー…アキトくん、ご両親は…その…」

 ハッと顔をあげれば、食後のお茶を飲んでいたみんながまっすぐに俺の事を見つめていた。代表して声をかけてきたケイリーさんは、悲しそうな表情を浮かべている。

「あ、いえ、両親は生きてます!」

 誤解させてしまったと声をあげれば、みんなホッと息を吐いた。

「生きてるのに会えないのか?」

 グレースさんの質問に、俺はこくりと頷いた。

「はい、えっと…故郷には、気軽に戻れないので」

 説明ってこれで大丈夫なんだろうかと考えながら、しどろもどろに何とか続ければケイリーさんとファーガスさんが顔を見合わせた。

「こう見えて私は知り合いや友人はかなり多いんだ。伝手を使えば、たとえ異国であっても移動する事は可能だよ?」

 あーはい、あの英雄ケイリー・ウェルマールさんなら、確かに顔は広いでしょうね。

「アキトくん、俺の管轄にはダンジョンの管理も含まれているんだ。つまりダンジョンから出た珍しい魔道具もたくさん保管している」

 中には簡易の転移魔法陣のような機能があるものもあるよと、ファーガスさんは続けた。

「えっと…でも…」
「もうすぐ私たちとも家族になるんだ。遠慮はしなくて良いからね」
「そうだぞ、どんどん頼ってくれ」

 グレースさんまで一緒になって俺を説得しようとしてるんだけど、一体これはどうすれば良いんだろう。

 俺が故郷に帰れないって言ったから、何とかしてあげようとしてくれてるのは分かる。でも多分その魔道具では、俺の世界には帰れないと思うんだ。

 戻る方法を探してあげると言ってくれたハルが、その可能性を考えてないわけがない。

「待ってください、皆さん落ち着いて。アキトさんが戸惑っていますから」

 ジルさんの穏やかなのに説得力のある声に、みんながぴたりと口を閉ざした。

「そうそう。みんなジルの言う通り落ち着いてー」

 ウィリアムさんはニコニコ笑顔で周りを見回している。俺の伴侶は最高と今にも言い出しそうな自慢げな表情だ。

「もっとはっきりさせるべき事があるだろう?」

 艶やかに笑ったマティさんは、俺の方をちらりと流し見た。

「アキトさんって…どこの出身なんですか?」

 キースくんの素直な質問に、俺はぎくりと固まった。
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