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853.【ハル視点】頼もしい味方
「アキトくんは、チーラが気に入ったのかい?」
「はい、シャキッとしてるのにみずみずしくて、すごく美味しいです」
幸せそうに満面の笑みでそう答えたアキトに、父さんは嬉しそうに笑っている。領内で採れた特産の野菜を褒められれば、笑顔にもなるか。
「あ、アキトくん、そっちのソースをつけて食べても美味しいよー」
俺はソースありの方が好きなぐらいと、ウィル兄さんはニコニコ笑顔でアキトに教えている。その隣ではジルさんもコクコクと頷いているから、どうやらジルさんもソース付きがお勧めらしい。
素直なアキトは、言われるがままにソースをつけてチーラを口に運んだ。
「どう?どう?」
「んっ!ソースをつけたのも確かに美味しいです!」
うん、確かにこのソースをつけて食べるのも美味しいな。俺はどちらかというとソースありの方が好きかもしれない。
料理長であるラスの作った料理を食べるのは久しぶりだが、どうやらまた腕をあげているみたいだ。
「良い反応だ、口には合ったようだね」
ファーガス兄さんはそう言うと、部屋の隅に控えていた侍従にそっと目くばせを送った。ぺこりと一礼して部屋から出ていった侍従を、アキトはすこし不思議そうに見つめている。
「彼は料理長に伝えに行ったんだよ」
そうアキトの耳元でこっそりと説明すれば、アキトはえっと驚いた様子を見せた。
「こういう時は、客の反応を見て少しずつ味を変えたりするものなんだ。普段はもっと目立たないようにこっそりと出ていくんだよ」
ファーガス兄さんは、今日はわざと分かりやすく目くばせをしただけだ。アキトがもし出ていく人に気づいても不審に思わないように、そして俺がこの話をアキトに説明できるようにだろう。
こういう時に、ファーガス兄さんには敵わないなと思うんだよな。
「それにしても、今日の食事にこの形式の料理が出てくるとは思わなかったよ」
すこしだけ苦笑しながら、俺は父さんに向かってそう尋ねた。
俺の予想では、今日はもっと気軽な料理を出してくると思っていたからな。少なくともアキトがもうすこしこの領に慣れてから、今回の形式の料理を出すだろうと予想していたんだ。
「まあなーこの形式にしなくても良いんじゃないかって、私は言ったんだぞ?」
俺の質問に答えたのは、父さんではなく母さんだった。
「味は確かに美味いけど、どうしても堅苦しい雰囲気になるし、慣れてないと疲れるだろう?」
「ああ、きっと母さんならそういうだろうと思ってたからね…」
だから予想外だったんだと視線を向ければ、父さんは少し申し訳なさそうに答えた。
「それは駄目だと、私がグレースに断ったんだ」
「そうなのか?それはまたどういう理由で?何か理由が無いと父さんが母さんの提案を拒否なんかしないだろう?」
こう見えて父はかなり母に弱いからな。そう思って尋ねれば、父は苦笑しながら答えた。
「まあすごく単純な理由だよ。アキトくんとの初対面の食事でそれをしてしまうと、もしかしたら辺境領は彼を歓迎していないという意味に取られるかもしれないだろう?」
「ああ、なるほど」
我が王国ではそんな慣習はないとはいえ、実際にそういう慣習がある国も存在している。歓迎している時は今回のような料理の形式で、歓迎していない時はそれ以外の料理を出すらしい。
何人かの厄介な他国の貴族の顔が浮かんでは消えていく。
「もちろん、私たちがアキトくんを歓迎している気持ちは本物だが――」
父さんはそこで言葉を切ると、じっとアキトと俺を見つめた。
「もしそう考えた誰かから文句をつけられたりしたら、ハルとアキトくんが困るだろうと思ってな…?」
これは私の考えすぎかもしれないが、邪魔が入らないようにと考えたんだ。父さんは、苦笑しながらも、そう説明してくれた。
そうか。わざわざこの形式での食事にしてくれたのも、アキトと俺のためだったのか。
「そう言う事か。父さんの配慮に、心から感謝します」
目礼しながら告げた俺の横で、アキトも一緒になって目礼をしてくれた。
「俺からもありがとうございます」
「どういたしまして」
ニコッと笑った父さんの横から、またしても顔を出した母さんは楽し気に笑いながら続けた。
「まあ、もしここまでしてそれでも変なやつに絡まれたりしたら、ハルか…せめて私達の誰かには教えてくれ」
そこはきっちり私が話を通すからなと呟いた声は、聞き取り難いぐらいに低かった。
こう見えて母は戦闘だけじゃなく、話術も交渉術もうまい。敵に回せば厄介な相手だが、味方にするならこれほど頼もしい相手もいないだろう。
母は全力を出してアキトを守るつもりのようだから、きっと問題は起きないだろう。
ありがとうと視線だけで伝えれば、母はまかせろと頼もしい笑みを見せた。
「はい、シャキッとしてるのにみずみずしくて、すごく美味しいです」
幸せそうに満面の笑みでそう答えたアキトに、父さんは嬉しそうに笑っている。領内で採れた特産の野菜を褒められれば、笑顔にもなるか。
「あ、アキトくん、そっちのソースをつけて食べても美味しいよー」
俺はソースありの方が好きなぐらいと、ウィル兄さんはニコニコ笑顔でアキトに教えている。その隣ではジルさんもコクコクと頷いているから、どうやらジルさんもソース付きがお勧めらしい。
素直なアキトは、言われるがままにソースをつけてチーラを口に運んだ。
「どう?どう?」
「んっ!ソースをつけたのも確かに美味しいです!」
うん、確かにこのソースをつけて食べるのも美味しいな。俺はどちらかというとソースありの方が好きかもしれない。
料理長であるラスの作った料理を食べるのは久しぶりだが、どうやらまた腕をあげているみたいだ。
「良い反応だ、口には合ったようだね」
ファーガス兄さんはそう言うと、部屋の隅に控えていた侍従にそっと目くばせを送った。ぺこりと一礼して部屋から出ていった侍従を、アキトはすこし不思議そうに見つめている。
「彼は料理長に伝えに行ったんだよ」
そうアキトの耳元でこっそりと説明すれば、アキトはえっと驚いた様子を見せた。
「こういう時は、客の反応を見て少しずつ味を変えたりするものなんだ。普段はもっと目立たないようにこっそりと出ていくんだよ」
ファーガス兄さんは、今日はわざと分かりやすく目くばせをしただけだ。アキトがもし出ていく人に気づいても不審に思わないように、そして俺がこの話をアキトに説明できるようにだろう。
こういう時に、ファーガス兄さんには敵わないなと思うんだよな。
「それにしても、今日の食事にこの形式の料理が出てくるとは思わなかったよ」
すこしだけ苦笑しながら、俺は父さんに向かってそう尋ねた。
俺の予想では、今日はもっと気軽な料理を出してくると思っていたからな。少なくともアキトがもうすこしこの領に慣れてから、今回の形式の料理を出すだろうと予想していたんだ。
「まあなーこの形式にしなくても良いんじゃないかって、私は言ったんだぞ?」
俺の質問に答えたのは、父さんではなく母さんだった。
「味は確かに美味いけど、どうしても堅苦しい雰囲気になるし、慣れてないと疲れるだろう?」
「ああ、きっと母さんならそういうだろうと思ってたからね…」
だから予想外だったんだと視線を向ければ、父さんは少し申し訳なさそうに答えた。
「それは駄目だと、私がグレースに断ったんだ」
「そうなのか?それはまたどういう理由で?何か理由が無いと父さんが母さんの提案を拒否なんかしないだろう?」
こう見えて父はかなり母に弱いからな。そう思って尋ねれば、父は苦笑しながら答えた。
「まあすごく単純な理由だよ。アキトくんとの初対面の食事でそれをしてしまうと、もしかしたら辺境領は彼を歓迎していないという意味に取られるかもしれないだろう?」
「ああ、なるほど」
我が王国ではそんな慣習はないとはいえ、実際にそういう慣習がある国も存在している。歓迎している時は今回のような料理の形式で、歓迎していない時はそれ以外の料理を出すらしい。
何人かの厄介な他国の貴族の顔が浮かんでは消えていく。
「もちろん、私たちがアキトくんを歓迎している気持ちは本物だが――」
父さんはそこで言葉を切ると、じっとアキトと俺を見つめた。
「もしそう考えた誰かから文句をつけられたりしたら、ハルとアキトくんが困るだろうと思ってな…?」
これは私の考えすぎかもしれないが、邪魔が入らないようにと考えたんだ。父さんは、苦笑しながらも、そう説明してくれた。
そうか。わざわざこの形式での食事にしてくれたのも、アキトと俺のためだったのか。
「そう言う事か。父さんの配慮に、心から感謝します」
目礼しながら告げた俺の横で、アキトも一緒になって目礼をしてくれた。
「俺からもありがとうございます」
「どういたしまして」
ニコッと笑った父さんの横から、またしても顔を出した母さんは楽し気に笑いながら続けた。
「まあ、もしここまでしてそれでも変なやつに絡まれたりしたら、ハルか…せめて私達の誰かには教えてくれ」
そこはきっちり私が話を通すからなと呟いた声は、聞き取り難いぐらいに低かった。
こう見えて母は戦闘だけじゃなく、話術も交渉術もうまい。敵に回せば厄介な相手だが、味方にするならこれほど頼もしい相手もいないだろう。
母は全力を出してアキトを守るつもりのようだから、きっと問題は起きないだろう。
ありがとうと視線だけで伝えれば、母はまかせろと頼もしい笑みを見せた。
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