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863.食前の言葉
運ばれてきた二枚のお皿の上には、俺が選んだ料理が美しく盛り付けられていた。あんなに短時間で取り分けたのに、この出来栄えってすごすぎない?
大皿に乗った状態でも美味しそうだとは思ったけど、今は更に美味しそうに見える。
メイドさんってこんな事もできるの?
びっくりして思わず料理をまじまじと見つめていると、向かい側からふふと笑い声が聞こえた。ぱっと視線を上げれば、ぱちりと目が合ったハルは悪戯っぽい笑みを浮かべながら口を開いた。
「今のアキトの気持ち、当ててみせようか?」
「うん、言ってみて?」
「こんな一瞬で、こんなに綺麗に盛り付けてくれてすごい!」
俺っぽい言い方まで真似したハルは、続けてどう?あってる?とゆるりと首を傾げた。
「うん、あってる!ハルすごいね。何で分かったの?」
「んー、盛りつけられた料理をみてびっくりして、それからまじまじと観察してたからね。感動したか感心したかどっちかだろうなと思って」
たしかにそんな反応はしてたかもしれないけど、それだけの事で感情まで読みとれるってすごいよね。
ハル相手に隠し事はできなさそうだな。まあする予定は無いから良いんだけど。
「用意は良さそうかな?」
全員の前に料理が並んだ事を確認してから、ケイリーさんは笑顔で続けた。
「それじゃあ食べようか」
ニコニコと笑みを浮かべる皆と一緒に、こうして朝食を食べられるっていうのは嬉しいな。そんな事を考えながら俺は自然と口を開いた。
「「いただきます」」
あ、ちょうどハルも同じタイミングだったな。そう思ってパッとハルを見れば、蕩けるような甘い目で俺を見つめていた。
あー…ハル、その目はちょっと朝食の場には相応しくないんじゃないかな?俺の事を大好きだって伝えてくれてるようなものだから、嬉しいんだけどね?嬉しいけど、さすがにご家族の前でそんな目をされても困る。
今日もハルは格好良いんだから、自分の格好良さを自覚して欲しい。
「いただき、ます…?」
ハルの甘い視線に勝手に慌てていた俺は、たどたどしく繰り返されたケイリーさんの言葉にふと周りを見た。
もう食べ始めても良いはずなのに、誰も動いていない。いや、それどころか、その場にいるハルの家族全員が、不思議そうに俺たちを見つめている。
「なあ、さっきのいただきますって何だ?」
率直にそう尋ねてくれたのは、グレースさんだ。どこから説明すれば良いんだろうと考えてる所だったから、話題を振ってくれるのはすごく助かる。
「あ、えっといただきますっていうのは…俺の故郷での食前の挨拶なんです」
室内にはまだメイドさんや侍従さんもたくさんいるから、異世界とは言わずに故郷と表現してみた。
別にここの人達を信じてないってわけじゃないんだけどね。でも、ハルから常に用心はしておいた方が良いって、何度も言われてるからね。
ちなみに俺にそう教え込んだハルは、きちんと用心できていて偉いねと言いたげに視線だけで褒めてくれた。
ああ、そういえば俺もハルの視線とか仕草だけでも、何が言いたいのか分かるようになってきたな。
「あーそういえばなんか聞いたことあるなー」
ウィリアムさんはそう言うと、ふわりと俺に向かって笑みを浮かべた。
これって本当に聞いたことがあるのかな。それとも周りの人たちに不信感を与えないために、わざとそう言ってくれたんだろうか。うん、その可能性もありそうだな。
どちらが正解なのかは分からないけど、俺はウィリアムさんに目礼を送った。ありがとうの気持ちを込めた目礼に、どういたしましてと言いたげなウィンクが返ってきた。
「さっきハルも言っていたよな?」
「ああ、うん。俺もアキトと一緒にいるうちにすっかり癖になっちゃってね」
隣り合わせに座っているファーガスさんとハルが、こそこそと話している声が聞こえてくる。
「なるほど…」
じっと俺とハルを順番に見比べていたグレースさんは、ケイリーさんをまっすぐ見つめて尋ねた。
「なあ、そういえばうちには食前の挨拶って習慣が無いよな?」
「ああ、確かに無いな」
先代の頃から無かったからなとあっさりと頷いたケイリーさんに、グレースさんはパッと笑顔になった。悪戯っ子のような笑顔が、ハルにそっくりだ。さすがお母さん。
「無いなら、アキトの故郷の挨拶を取り入れたら良いんじゃないか?」
え、さすがにそれはちょっと急展開すぎない?気持ちは嬉しいけど無理はしなくて良いのでと慌てる俺の隣で、グレースさんはどう思う?と皆に尋ねた。
「ああ、それは良いな」
「食べようと声をかけるより良いかもしれませんね」
「俺も賛成ー」
「僕も言ってみたい!」
「私も賛成しよう」
どんどん出てくる賛成の声に、俺は慌ててハルに視線を向けた。
「アキト、ごめんね。こうなったら、多分止めても無駄だから」
無意識でいただきますって言っただけなのに、まさかの辺境領のルールに追加されてしまったよ。これって、本当に良いんだろうか。
大皿に乗った状態でも美味しそうだとは思ったけど、今は更に美味しそうに見える。
メイドさんってこんな事もできるの?
びっくりして思わず料理をまじまじと見つめていると、向かい側からふふと笑い声が聞こえた。ぱっと視線を上げれば、ぱちりと目が合ったハルは悪戯っぽい笑みを浮かべながら口を開いた。
「今のアキトの気持ち、当ててみせようか?」
「うん、言ってみて?」
「こんな一瞬で、こんなに綺麗に盛り付けてくれてすごい!」
俺っぽい言い方まで真似したハルは、続けてどう?あってる?とゆるりと首を傾げた。
「うん、あってる!ハルすごいね。何で分かったの?」
「んー、盛りつけられた料理をみてびっくりして、それからまじまじと観察してたからね。感動したか感心したかどっちかだろうなと思って」
たしかにそんな反応はしてたかもしれないけど、それだけの事で感情まで読みとれるってすごいよね。
ハル相手に隠し事はできなさそうだな。まあする予定は無いから良いんだけど。
「用意は良さそうかな?」
全員の前に料理が並んだ事を確認してから、ケイリーさんは笑顔で続けた。
「それじゃあ食べようか」
ニコニコと笑みを浮かべる皆と一緒に、こうして朝食を食べられるっていうのは嬉しいな。そんな事を考えながら俺は自然と口を開いた。
「「いただきます」」
あ、ちょうどハルも同じタイミングだったな。そう思ってパッとハルを見れば、蕩けるような甘い目で俺を見つめていた。
あー…ハル、その目はちょっと朝食の場には相応しくないんじゃないかな?俺の事を大好きだって伝えてくれてるようなものだから、嬉しいんだけどね?嬉しいけど、さすがにご家族の前でそんな目をされても困る。
今日もハルは格好良いんだから、自分の格好良さを自覚して欲しい。
「いただき、ます…?」
ハルの甘い視線に勝手に慌てていた俺は、たどたどしく繰り返されたケイリーさんの言葉にふと周りを見た。
もう食べ始めても良いはずなのに、誰も動いていない。いや、それどころか、その場にいるハルの家族全員が、不思議そうに俺たちを見つめている。
「なあ、さっきのいただきますって何だ?」
率直にそう尋ねてくれたのは、グレースさんだ。どこから説明すれば良いんだろうと考えてる所だったから、話題を振ってくれるのはすごく助かる。
「あ、えっといただきますっていうのは…俺の故郷での食前の挨拶なんです」
室内にはまだメイドさんや侍従さんもたくさんいるから、異世界とは言わずに故郷と表現してみた。
別にここの人達を信じてないってわけじゃないんだけどね。でも、ハルから常に用心はしておいた方が良いって、何度も言われてるからね。
ちなみに俺にそう教え込んだハルは、きちんと用心できていて偉いねと言いたげに視線だけで褒めてくれた。
ああ、そういえば俺もハルの視線とか仕草だけでも、何が言いたいのか分かるようになってきたな。
「あーそういえばなんか聞いたことあるなー」
ウィリアムさんはそう言うと、ふわりと俺に向かって笑みを浮かべた。
これって本当に聞いたことがあるのかな。それとも周りの人たちに不信感を与えないために、わざとそう言ってくれたんだろうか。うん、その可能性もありそうだな。
どちらが正解なのかは分からないけど、俺はウィリアムさんに目礼を送った。ありがとうの気持ちを込めた目礼に、どういたしましてと言いたげなウィンクが返ってきた。
「さっきハルも言っていたよな?」
「ああ、うん。俺もアキトと一緒にいるうちにすっかり癖になっちゃってね」
隣り合わせに座っているファーガスさんとハルが、こそこそと話している声が聞こえてくる。
「なるほど…」
じっと俺とハルを順番に見比べていたグレースさんは、ケイリーさんをまっすぐ見つめて尋ねた。
「なあ、そういえばうちには食前の挨拶って習慣が無いよな?」
「ああ、確かに無いな」
先代の頃から無かったからなとあっさりと頷いたケイリーさんに、グレースさんはパッと笑顔になった。悪戯っ子のような笑顔が、ハルにそっくりだ。さすがお母さん。
「無いなら、アキトの故郷の挨拶を取り入れたら良いんじゃないか?」
え、さすがにそれはちょっと急展開すぎない?気持ちは嬉しいけど無理はしなくて良いのでと慌てる俺の隣で、グレースさんはどう思う?と皆に尋ねた。
「ああ、それは良いな」
「食べようと声をかけるより良いかもしれませんね」
「俺も賛成ー」
「僕も言ってみたい!」
「私も賛成しよう」
どんどん出てくる賛成の声に、俺は慌ててハルに視線を向けた。
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