生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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867.【ハル視点】父と母

 背後でゆっくりとドアが閉まるのを待って、俺は両親に視線を向けた。

「アキトくんは?」
「さすがに疲れたみたいで、まだ眠ってるよ」
「なんだ、一人で置いてきたのか?」

 俺の行動を咎めるというよりは、よく一人で置いてここまで来れたなと言いたげな父さんの言葉に、思わず笑ってしまった。

「メイドに伝言でも頼もうかと思ったんだが…プーカを配置してくれていたからね」

 騎士にしなかったのはアキトへの配慮だろうと感謝の言葉を述べたが、二人ともきょとんと驚いた様子で顔を見合わせた。

「騎士じゃなくて侍従の中でも一番腕が立つプーカか…手配をしたのはグレースかい?」
「いいや、私じゃないな。私でもケイリーでも無いなら…おそらくボルトだろうな」

 なるほど、礼を言う相手はボルトか。

「プーカがいるなら任せる気持ちも分かる」
「そうだな」

 人柄、忠誠心、そして強さ。全てが信頼できると笑い合っている両親に、俺は既に答えの分かっている質問を投げかけた。

「父さんと母さんの会いたがっていた伴侶候補を連れてきたわけだけど…どうだった?」
「いやぁ、まさかあそこまで良い子だとは思っていなかったな。私を見ても全く怯えないし」

 あんなに尊敬の目で見られては照れくさいぐらいだと、父は嬉しそうに笑っている。

「私は腕試しに対して反撃をしようとした時点で、もう気に入っちゃったからなぁ」

 母さんはそう言うと、カラカラと笑った。

「アキトは本当に明るくて優しい良い子だ…ただ…」
「ただ…?」

 母はどこからどうみてもアキトを気に入っている。だから何の心配もなく、俺は穏やかな気持ちで続きを言ってくれと促す事ができた。

「出身地の話を聞いて、もっと大事にしたいと思ったよ」
「ああ、そうだ。その話なんだが…ハル?」

 そう言ってすっと姿勢を正した父は、まっすぐに俺を見つめて口を開いた。これは真剣な話だなと、俺もすっと背筋を伸ばして見返した。

「はい」
「私は私の剣と愛するグレースの名に誓って、アキトくんの秘密を守りその知識を悪用しないとここで誓うよ」
「そうだな。私も私の剣とケイリーの名に誓う」

 父さんはともかく、母さんにまでそんな事を言われるとは思っていなかったな。言わなくても分かるだろうと考える人なのに、わざわざ口にしてくれるとは。

「本来ならアキトくんに直接言うべきなんだとは思うんだが――もしアキトくんに言うと重荷に思うかもしれないと思ってな」
「そうそう、ハルが代わりに受け取っておいてくれよ」
「はい、ありがとうございます」

 心からの感謝を込めた言葉に、二人は微笑ましそうに笑ってくれた。

「そうだ、この後1時間ほどしたら朝食を食べる予定なんだが、もしよければアキトくんと一緒にどうだ?」
「ウィルとジルも昨日はこっちに泊ってるから、今朝は全員が揃うぞ」

 ああ、昨日は別邸には戻らなかったのか。全員参加の朝食会か。昨日の反応からして、きっとアキトは参加したいと言うだろうな。

「アキトが起きてくれば…だな」
「もちろん無理に起こしたりしなくて良いさ。ああ、それともしアキトくんが時間までに起きてこなかったら、この話は伝えなくて良いからな」

 父が優しく笑いながらそう言えば、隣から母も口を開いた。

「あ、もうひとつ追加で。もし起きてきても、体調が悪そうだったら伝えないでくれるか?」

 誘われたって知ったら、アキトは無理して来ようとするだろう?と笑う母さんは、アキトの事をよく分かっているみたいだ。

「分かった。アキトが起きたら様子を見て、もし参加するようならプーカに伝言を頼むよ」
「ああ、それで良い」
「もう戻っても良いぞ?」

 いくらプーカに任せてきたと言っても、気になるんだろうと笑う両親に礼を言って俺は執務室を後にした。



 部屋の外に控えていたボルトにプーカの配置に対しての礼を言えば、どういたしましてと笑顔が返ってきた。やっぱり手配してくれたのはボルトだったみたいだな。

「アキト様の護衛をしたいと、騎士も侍従もたくさん名乗り出ましたよ」

 珍しくもクスクスと笑いながら、ボルトはそう教えてくれた。

「なんだ、そうなのか?」
「ええ、最終的には騎士はどうしても威圧感があるので、初日は侍従が良いだろうと――メイド長の意見で決まりましたね」

 そして護衛を兼ねるなら一番強い私が行くと主張したプーカが、その任を勝ち取ったらしい。

「メイド長にも礼を言っておいてくれるか?」
「かしこまりました」

 アキトはまだ眠っているだろうか。早く部屋に戻ろうと、俺は廊下を早歩きで歩き出した。
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