874 / 1,561
873.【ハル視点】今後の予定
食事も終わりメイド達によって皿や料理が全て片づけられても、部屋から出て行こうとする人は誰もいなかった。
両親とファーガス兄さん、それにウィル兄は、今日は昼から仕事の予定らしい。万が一何か問題が起きたらこの部屋まで呼びに来てくれるようになっているそうだ。
ジルさんとマティさんは数日間は休みを取っているそうだし、はっきりとした予定がある人はいないようだ。
それならとそのままのんびりと会話を楽しんでいると、話題が途切れた所で父さんが俺達に視線を向けて口を開いた。
「ところで、アキトくんとハルのこれからの予定は、もう決まっているのかい?」
俺はすぐに首を振って答えた。
「いや、まだ細かい予定については全く決まってないな」
ね?と視線を向ければ、アキトはこくこくと頷いてくれた。
辺境領で食べたい物や、行きたい場所、買いたい物についてはたくさん話した。だが日程や順番などの細かいところについては、まだ全く相談できていない。
ここに来るのが急に決まったから、時間が無かったというのも理由の一つだ。
「でも、魔法陣で移動してきたって事は、しばらくは滞在するんだよな?」
ワクワクした様子を隠さず嬉しそうに笑いながらそう確認する母さんに、アキトもふわりと笑顔になった。
「はい!滞在させてもらいます!」
嬉しそうに笑いながらそう答えたアキトに、母さんどころかこちらを見ていたみんなも一気に笑顔になった。さっきのアキトのこどものような笑顔を見たら、そんな反応になるのも仕方ないか。
「それは嬉しいなー!アキト、一緒に色々しような!」
領主城前の森で採取してまわったり、気配の消し方と探り方の実地訓練もしようかと、母さんは指を折りながらニコニコ笑顔で提案した。
伴侶候補の母親とでかける先としては、普通に考えればあり得ないものばかりだ。先輩冒険者から後輩冒険者への教えと言った方が納得できるようなものしかない。
そんな提案に、アキトはキラキラと目を輝かせて答えた。
「はい、ぜひ!」
即答に嬉しそうに笑う母と、楽しそうに目を輝かせるアキト。そんな二人のやりとりに、俺はそっと口を挟んだ。
「…ねぇ、アキト、俺との時間も作ってね…?」
すこし寂しそうな言い方になってしまったのは、決して狙ったわけでは無い。ただアキトとの時間を全て母に奪われないようにと、必死だった。
どうみても情けない顔をしているだろう俺を見て、アキトは不意にほわりと頬を赤く染めた。言葉にはならなかったが、口がかわいいと動いたのは見えた。
こんな情けない反応をした厳つい男を捕まえて可愛いとは。正直に言えば驚きはしたが、アキトにそう言われるのは嫌いじゃない。
「もちろん!辺境領でも二人でいろいろしよーね!」
「ああ、ありがとう」
優しいアキトの言葉に浸っていると、不意に声が聞こえてきた。
「こんなハルは珍しすぎて、気を抜くとうっかり笑いそうになるな」
そうぽつりと呟いたのは、ファーガス兄さんだ。口にした途端、駄目だろうと言いたそうなマティさんにぐいっと手を引かれているが、嬉しそうにわらっている。まあそうなるよな。
「えー、俺はむしろこういうハルはじっくり観察したくなるけど?」
ニヤニヤ笑顔で答えたウィル兄さんも、ジルさんに揶揄わないと叱られている。こちらも嬉しそうだから逆効果だろうな。
「キースはどう思う?」
叱られながらも悪戯っぽくキースに尋ねたせいで、ウィル兄さんの説教時間はどうやら伸びるみたいだ。まあキースだけ仲間外れというのも良くないから、話を振ったこと事態は別に文句は無いんだが。
「え、僕は仲良しだなーって思います」
うん、キースはやっぱり天使だな。
「兄さんたち、別に恥ずかしくないからなんとでも言ってくれ」
キースはありがとうなと続ければ、ニコニコ笑顔が返ってきた。
「実地訓練も採取も、別にアキトだけとは言ってないだろう?もし良ければハルも来たら良いさ」
母さんは、俺に向かって笑いながらそう告げた。そうか。俺も一緒に参加すれば良いのか。
「ああ、ぜひ参加させてもらうよ」
「どれぐらい腕が上達したか見せてくれ」
「もちろん、全力を出すよ」
不敵に笑ってみせれば、母さんもニヤリと笑みを返してくる。これは良い訓練になりそうだ。
「それで、今日はどうするんだい?」
二人で決めたら良いと判断を委ねられた俺たちは、ぱちりと視線を合わせた。
「アキトはどうしたい?」
「んー、俺は…辺境領のことをもっと知りたいな」
「そうか。それじゃあとりあえず、今日は街に遊びに行こうか?」
気になる物があれば買い物をしても良いし、のんびり街中を見て回るだけでも良いしと俺は優しく続けた。
「うん、楽しそう!」
「決まったね」
「ハル、もし万が一街中で何かがあれば衛兵か騎士に伝えてくれ」
「ああ、分かった」
予定が決まったなら行っておいでとみんなに見送られ、アキトと俺は部屋を後にした。
辺境領巡り、アキトに楽しんでもらいたいな。
両親とファーガス兄さん、それにウィル兄は、今日は昼から仕事の予定らしい。万が一何か問題が起きたらこの部屋まで呼びに来てくれるようになっているそうだ。
ジルさんとマティさんは数日間は休みを取っているそうだし、はっきりとした予定がある人はいないようだ。
それならとそのままのんびりと会話を楽しんでいると、話題が途切れた所で父さんが俺達に視線を向けて口を開いた。
「ところで、アキトくんとハルのこれからの予定は、もう決まっているのかい?」
俺はすぐに首を振って答えた。
「いや、まだ細かい予定については全く決まってないな」
ね?と視線を向ければ、アキトはこくこくと頷いてくれた。
辺境領で食べたい物や、行きたい場所、買いたい物についてはたくさん話した。だが日程や順番などの細かいところについては、まだ全く相談できていない。
ここに来るのが急に決まったから、時間が無かったというのも理由の一つだ。
「でも、魔法陣で移動してきたって事は、しばらくは滞在するんだよな?」
ワクワクした様子を隠さず嬉しそうに笑いながらそう確認する母さんに、アキトもふわりと笑顔になった。
「はい!滞在させてもらいます!」
嬉しそうに笑いながらそう答えたアキトに、母さんどころかこちらを見ていたみんなも一気に笑顔になった。さっきのアキトのこどものような笑顔を見たら、そんな反応になるのも仕方ないか。
「それは嬉しいなー!アキト、一緒に色々しような!」
領主城前の森で採取してまわったり、気配の消し方と探り方の実地訓練もしようかと、母さんは指を折りながらニコニコ笑顔で提案した。
伴侶候補の母親とでかける先としては、普通に考えればあり得ないものばかりだ。先輩冒険者から後輩冒険者への教えと言った方が納得できるようなものしかない。
そんな提案に、アキトはキラキラと目を輝かせて答えた。
「はい、ぜひ!」
即答に嬉しそうに笑う母と、楽しそうに目を輝かせるアキト。そんな二人のやりとりに、俺はそっと口を挟んだ。
「…ねぇ、アキト、俺との時間も作ってね…?」
すこし寂しそうな言い方になってしまったのは、決して狙ったわけでは無い。ただアキトとの時間を全て母に奪われないようにと、必死だった。
どうみても情けない顔をしているだろう俺を見て、アキトは不意にほわりと頬を赤く染めた。言葉にはならなかったが、口がかわいいと動いたのは見えた。
こんな情けない反応をした厳つい男を捕まえて可愛いとは。正直に言えば驚きはしたが、アキトにそう言われるのは嫌いじゃない。
「もちろん!辺境領でも二人でいろいろしよーね!」
「ああ、ありがとう」
優しいアキトの言葉に浸っていると、不意に声が聞こえてきた。
「こんなハルは珍しすぎて、気を抜くとうっかり笑いそうになるな」
そうぽつりと呟いたのは、ファーガス兄さんだ。口にした途端、駄目だろうと言いたそうなマティさんにぐいっと手を引かれているが、嬉しそうにわらっている。まあそうなるよな。
「えー、俺はむしろこういうハルはじっくり観察したくなるけど?」
ニヤニヤ笑顔で答えたウィル兄さんも、ジルさんに揶揄わないと叱られている。こちらも嬉しそうだから逆効果だろうな。
「キースはどう思う?」
叱られながらも悪戯っぽくキースに尋ねたせいで、ウィル兄さんの説教時間はどうやら伸びるみたいだ。まあキースだけ仲間外れというのも良くないから、話を振ったこと事態は別に文句は無いんだが。
「え、僕は仲良しだなーって思います」
うん、キースはやっぱり天使だな。
「兄さんたち、別に恥ずかしくないからなんとでも言ってくれ」
キースはありがとうなと続ければ、ニコニコ笑顔が返ってきた。
「実地訓練も採取も、別にアキトだけとは言ってないだろう?もし良ければハルも来たら良いさ」
母さんは、俺に向かって笑いながらそう告げた。そうか。俺も一緒に参加すれば良いのか。
「ああ、ぜひ参加させてもらうよ」
「どれぐらい腕が上達したか見せてくれ」
「もちろん、全力を出すよ」
不敵に笑ってみせれば、母さんもニヤリと笑みを返してくる。これは良い訓練になりそうだ。
「それで、今日はどうするんだい?」
二人で決めたら良いと判断を委ねられた俺たちは、ぱちりと視線を合わせた。
「アキトはどうしたい?」
「んー、俺は…辺境領のことをもっと知りたいな」
「そうか。それじゃあとりあえず、今日は街に遊びに行こうか?」
気になる物があれば買い物をしても良いし、のんびり街中を見て回るだけでも良いしと俺は優しく続けた。
「うん、楽しそう!」
「決まったね」
「ハル、もし万が一街中で何かがあれば衛兵か騎士に伝えてくれ」
「ああ、分かった」
予定が決まったなら行っておいでとみんなに見送られ、アキトと俺は部屋を後にした。
辺境領巡り、アキトに楽しんでもらいたいな。
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。