880 / 1,561
879.果実水
「お二人のご希望が果実水なのでしたら、こちらへどうぞ」
スーラさんはそう言うと、俺とハルを店の奥にあるL字型のカウンター前へと案内してくれた。
店に入った時にはスーラさんの様子が気になって全く見てなかったけど、このカウンターはすごいな。
壁に沿うような形で配置されているL字のカウンターの上には、注ぎ口のついた巨大な瓶がずらりと並んでいる。それぞれの瓶の中には、色とりどりの果実水がたっぷりと満たされていて見た目も華やかだ。
「うわぁ…」
「すごいな」
思わず俺とハルもそう呟いてしまうぐらい、圧倒的な存在感のあるカウンターだ。
「ここにあるのが、私のお店で取り扱っている全ての果実水です」
どこか誇らし気にスーラさんがそう教えてくれた。
「こんなに色々な種類があるのか」
「すごい種類ですね…」
うーん、こうやって並べられると、まず見た目の迫力がすごいな。そもそも果実水ってこんなに色々な種類があるんだ。
今まで立ち寄ったお店は多くても4~5種類、少ないお店なら1種類だけなんて所もあったんだけど、ここはざっと数えただけでも30種類以上あるよね。
「喜んでいただければ嬉しいです」
スーラさんはそう言ってニコリと笑ってくれたけど、俺とハルは思わず顔を見合わせた。種類がたくさんあるのはもちろん嬉しい。嬉しいけどこれだけの種類があると、選ぶのもかなり大変だ。
ワクワクしながらもどれにしようかと真剣に悩みだした俺とハルに、スーラさんは笑顔で話しかけてくれた。
「ハル様、アキト様、当店はかなり果実水の種類が多いので、色々な種類の果実水の飲み比べも行っていますよ」
「飲み比べ…?」
さすがにこれだけの種類の果実水をたくさん飲むのは無理じゃないかな、主にすぐにトイレに行きたくなりそうでって意味で、なんだけど。
不思議に思って首を傾げた俺に、スーラさんはどこから取り出したのか小さなグラスを見せてくれた。透き通る美しいそのグラスは、俺の世界で言うところのショットグラスよりもまだすこし小さめだ。
「こちらのグラス10個に色々な種類の果実水を注いでずらりと並べ、一番好きなものを注文するという方式です」
この場合の注文と言うのは、この場ですぐに飲むためにコップ一杯分を頼むのでも良いし、持ち帰るために瓶で頼むのでも良いらしい。
「それは面白いな」
「そんなにたくさん試して良いんですか?」
「ええ、もちろんです」
驚いたのはこれが俺とハルへの特別待遇ってわけじゃなくて、希望のお客さんには誰でも行っているサービスなんだって。
「うちの果実水は美味しいですから、だいたい皆様、数種類はお買い上げくださいますから」
損は無いですと言いきったスーラさんは、優しそうなお姉さんだと思っていたけどこう見えてかなり商売上手な人みたいだ。
「それなら頼もうか」
「うん、この量なら試してみたい」
「お二人が気になるものだけで選ばれても良いですし、好みを言って頂ければお勧めもしていますよ」
「それはぜひお願いしたいです」
「俺も頼みたい」
「それでは、お二人のお好きな味を、それぞれ教えていただけますか」
そうして好みの味を相談してスーラさんに選んでもらった物と、俺とハルが選んだ気になった物を合わせての試し飲みはとってもとっても楽しい時間だった。
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしています」
丁寧にドアの前まで見送りに来てくれたスーラさんにお礼を言って、俺とハルはまた市場の人混みの中へと足を踏み入れた。
「アキト、本当に買うのは四種類だけで良かったの?」
「うん、どれも美味しかったけど、俺はあの四種類が良いと思ったから」
もっと買って良かったのにと言ってくれてるのは分かってるけど、きちんと選んで納得して選んだやつだよ。
「ハルこそ、二種類しか選んでなかったよね?」
「ああ、でもあれが美味しかったからな―――あれ、そういえば、両方スーラが選んでくれた味だったな…」
「あー、俺の買ったのも三つはスーラさんが選んでくれた奴だ…」
二人して顔を見合わせた俺達は、スーラさんの商売上手っぷりに感心してしまった。
スーラさんはそう言うと、俺とハルを店の奥にあるL字型のカウンター前へと案内してくれた。
店に入った時にはスーラさんの様子が気になって全く見てなかったけど、このカウンターはすごいな。
壁に沿うような形で配置されているL字のカウンターの上には、注ぎ口のついた巨大な瓶がずらりと並んでいる。それぞれの瓶の中には、色とりどりの果実水がたっぷりと満たされていて見た目も華やかだ。
「うわぁ…」
「すごいな」
思わず俺とハルもそう呟いてしまうぐらい、圧倒的な存在感のあるカウンターだ。
「ここにあるのが、私のお店で取り扱っている全ての果実水です」
どこか誇らし気にスーラさんがそう教えてくれた。
「こんなに色々な種類があるのか」
「すごい種類ですね…」
うーん、こうやって並べられると、まず見た目の迫力がすごいな。そもそも果実水ってこんなに色々な種類があるんだ。
今まで立ち寄ったお店は多くても4~5種類、少ないお店なら1種類だけなんて所もあったんだけど、ここはざっと数えただけでも30種類以上あるよね。
「喜んでいただければ嬉しいです」
スーラさんはそう言ってニコリと笑ってくれたけど、俺とハルは思わず顔を見合わせた。種類がたくさんあるのはもちろん嬉しい。嬉しいけどこれだけの種類があると、選ぶのもかなり大変だ。
ワクワクしながらもどれにしようかと真剣に悩みだした俺とハルに、スーラさんは笑顔で話しかけてくれた。
「ハル様、アキト様、当店はかなり果実水の種類が多いので、色々な種類の果実水の飲み比べも行っていますよ」
「飲み比べ…?」
さすがにこれだけの種類の果実水をたくさん飲むのは無理じゃないかな、主にすぐにトイレに行きたくなりそうでって意味で、なんだけど。
不思議に思って首を傾げた俺に、スーラさんはどこから取り出したのか小さなグラスを見せてくれた。透き通る美しいそのグラスは、俺の世界で言うところのショットグラスよりもまだすこし小さめだ。
「こちらのグラス10個に色々な種類の果実水を注いでずらりと並べ、一番好きなものを注文するという方式です」
この場合の注文と言うのは、この場ですぐに飲むためにコップ一杯分を頼むのでも良いし、持ち帰るために瓶で頼むのでも良いらしい。
「それは面白いな」
「そんなにたくさん試して良いんですか?」
「ええ、もちろんです」
驚いたのはこれが俺とハルへの特別待遇ってわけじゃなくて、希望のお客さんには誰でも行っているサービスなんだって。
「うちの果実水は美味しいですから、だいたい皆様、数種類はお買い上げくださいますから」
損は無いですと言いきったスーラさんは、優しそうなお姉さんだと思っていたけどこう見えてかなり商売上手な人みたいだ。
「それなら頼もうか」
「うん、この量なら試してみたい」
「お二人が気になるものだけで選ばれても良いですし、好みを言って頂ければお勧めもしていますよ」
「それはぜひお願いしたいです」
「俺も頼みたい」
「それでは、お二人のお好きな味を、それぞれ教えていただけますか」
そうして好みの味を相談してスーラさんに選んでもらった物と、俺とハルが選んだ気になった物を合わせての試し飲みはとってもとっても楽しい時間だった。
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしています」
丁寧にドアの前まで見送りに来てくれたスーラさんにお礼を言って、俺とハルはまた市場の人混みの中へと足を踏み入れた。
「アキト、本当に買うのは四種類だけで良かったの?」
「うん、どれも美味しかったけど、俺はあの四種類が良いと思ったから」
もっと買って良かったのにと言ってくれてるのは分かってるけど、きちんと選んで納得して選んだやつだよ。
「ハルこそ、二種類しか選んでなかったよね?」
「ああ、でもあれが美味しかったからな―――あれ、そういえば、両方スーラが選んでくれた味だったな…」
「あー、俺の買ったのも三つはスーラさんが選んでくれた奴だ…」
二人して顔を見合わせた俺達は、スーラさんの商売上手っぷりに感心してしまった。
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。