894 / 1,491
893.軽い短剣
しおりを挟む
「まずいくつか聞きたいんだが…そっちの兄ちゃんは前衛か後衛どっちだ?」
そう尋ねてくれたお兄さんに、俺は後衛ですと笑顔で答えた。グレースさんもそうだったけど、体格的に後衛だろうと決めつけずに聞いてくれるのって嬉しいものだな。
辺境領以外ではだいたい後衛だろ?って聞かれてたんだけどさ。
「そうか、後衛か…ちなみに武器については…聞いても良いのか?」
何故かお兄さんはそこで俺じゃなく、ハルを見つめてそう尋ねた。なんで?と思わずハルを見つめてしまったんだけど、ハルはふわりと笑って頷いた。
「ああ、気づかってくれてありがとう。アキト、言って大丈夫だよ」
「えっと…魔法使い…です?」
今まで普通に後衛の魔法使いですって自己紹介してきた。それなのに急に今になってそう聞かれた理由が分からなくて、答えがちょっと疑問形になってしまった。
明らかに困惑している俺の答えに、ハルはすぐに理由を教えてくれた。
「辺境ではね、どんな武器を使うかを隠そうとする人もいるんだ」
「えっ…武器を隠すの?なんで?」
でも装備してるものを見たら分かるよねと思ったけど、武器の類は全て魔導収納鞄にしまい込んでいる冒険者とか、分からないようにわざといくつかの種類を装備してる冒険者も多いんだって。
そう言われて周りを見てみれば、確かに腰には剣、足には短剣、背中には弓みたいにいくつかの武器を装備している人も結構いるな。逆に防具の類は全部装備してるのに、武器は持ってないって人も結構いる。
「他の地域にはあまりないんだけど、辺境では見知らぬ人から一緒に依頼を受けないかと勧誘される事があるんだ。特に特殊な魔物の討伐依頼とかなんだけど」
「へぇ、そうなんだ」
「他の地域では基本的に知り合いとチームを組むとか、もしくは冒険者ギルドが間に立つよね?それを全く知らない人に直接声をかけられてチームを組む事になるんだけど…どう思う?」
ああ、そっかブレイズ達と一緒に行ったああいう特殊な依頼に、知らない人と組んで行くって事か。それは…ちょっと怖いかもしれない。
「どんな人達か分からない人と組むのはちょっと怖いね」
信用して良いかも分からないし、きちんと連携ができるかも分からない。そんな依頼仲間は嫌だ。
「そうだよね。だから勧誘されないようにと、わざと分からないように誤魔化してる人が多いんだ」
「説明は終わったかい?」
店員のお兄さんは、ハルの説明が終わるまで静かに待っていてくれた。
「あ、待たせてごめんなさい」
「いや、気にしないでくれ。それで…こんなに人が多い場所で言っちゃって良かったのかい?」
すこし心配そうなお兄さんに、ハルはにっこりと笑って答えた。
「ああ、大丈夫だよ。もしアキトに依頼をしたい人がいたなら、俺がきちんと色々と調べてからしか依頼は受けないからね」
そう言ってハルは周りをぐるりと見渡した。ん?と思って一緒になって周りを見てみたけど、別に気になる人はいなかった。なんだったんだろう。
「伴侶候補の兄さんがそうまで言うなら、まあ良いか。それで?後衛の魔法使いって事は普段は魔法で、いざと言う時のための武器って事だよな?」
お兄さんは何故か苦笑しながらそう続けた。
「ああ、そうだね。一応投げナイフと剣は持ってるけど…ここまで軽いならアキトに良いかなと思って」
「それなら良いかもしれない。兄ちゃんちょっとそれ持ってみな?」
店員さんの言葉を受けて、ハルは俺の手にそっと短剣を渡してくれた。
両手で鞘に入ったままの短剣を受け取った俺は、そのあまりの軽さに驚いてしまった。もしかしたら、俺が持ってる投げナイフよりも軽いかもしれないぐらいの重さしかない。
しかもただ軽いだけじゃない。柄の部分には指の形に合うように凹凸があって、不思議と手に馴染む。
「こんなに軽いの?!え、すごい」
「鞘はつけたままで、ちょっと構えてみな?」
店員さんの言葉に従って、俺は少しだけ腰を落として短剣を構えた。ハルに教えてもらった、一番基本の姿勢。攻撃にも防御にも動きやすい体勢だ。
「兄ちゃん、後衛にしてはかなり筋が良いな」
構えを取っただけなのに褒められてしまった。教えてくれたハルのおかげだけどね。
「あの、これ欲しいです」
売らないって言われたらどうしようと思いながらも店員さんに主張すれば、お兄さんは楽し気に笑って答えた。
「その短剣は兄ちゃんにぴったりだからな、文句なんて無いよ」
「やった!」
「良かったね、アキト」
何か形として残るものも買いたいなと思ってたんだけど、まさかこんなに軽い短剣だとは思ってなかったな。
きちんと手入れをして使えば武器は長い間使えるってハルも言ってたし、大事に大事に使おう。
そう尋ねてくれたお兄さんに、俺は後衛ですと笑顔で答えた。グレースさんもそうだったけど、体格的に後衛だろうと決めつけずに聞いてくれるのって嬉しいものだな。
辺境領以外ではだいたい後衛だろ?って聞かれてたんだけどさ。
「そうか、後衛か…ちなみに武器については…聞いても良いのか?」
何故かお兄さんはそこで俺じゃなく、ハルを見つめてそう尋ねた。なんで?と思わずハルを見つめてしまったんだけど、ハルはふわりと笑って頷いた。
「ああ、気づかってくれてありがとう。アキト、言って大丈夫だよ」
「えっと…魔法使い…です?」
今まで普通に後衛の魔法使いですって自己紹介してきた。それなのに急に今になってそう聞かれた理由が分からなくて、答えがちょっと疑問形になってしまった。
明らかに困惑している俺の答えに、ハルはすぐに理由を教えてくれた。
「辺境ではね、どんな武器を使うかを隠そうとする人もいるんだ」
「えっ…武器を隠すの?なんで?」
でも装備してるものを見たら分かるよねと思ったけど、武器の類は全て魔導収納鞄にしまい込んでいる冒険者とか、分からないようにわざといくつかの種類を装備してる冒険者も多いんだって。
そう言われて周りを見てみれば、確かに腰には剣、足には短剣、背中には弓みたいにいくつかの武器を装備している人も結構いるな。逆に防具の類は全部装備してるのに、武器は持ってないって人も結構いる。
「他の地域にはあまりないんだけど、辺境では見知らぬ人から一緒に依頼を受けないかと勧誘される事があるんだ。特に特殊な魔物の討伐依頼とかなんだけど」
「へぇ、そうなんだ」
「他の地域では基本的に知り合いとチームを組むとか、もしくは冒険者ギルドが間に立つよね?それを全く知らない人に直接声をかけられてチームを組む事になるんだけど…どう思う?」
ああ、そっかブレイズ達と一緒に行ったああいう特殊な依頼に、知らない人と組んで行くって事か。それは…ちょっと怖いかもしれない。
「どんな人達か分からない人と組むのはちょっと怖いね」
信用して良いかも分からないし、きちんと連携ができるかも分からない。そんな依頼仲間は嫌だ。
「そうだよね。だから勧誘されないようにと、わざと分からないように誤魔化してる人が多いんだ」
「説明は終わったかい?」
店員のお兄さんは、ハルの説明が終わるまで静かに待っていてくれた。
「あ、待たせてごめんなさい」
「いや、気にしないでくれ。それで…こんなに人が多い場所で言っちゃって良かったのかい?」
すこし心配そうなお兄さんに、ハルはにっこりと笑って答えた。
「ああ、大丈夫だよ。もしアキトに依頼をしたい人がいたなら、俺がきちんと色々と調べてからしか依頼は受けないからね」
そう言ってハルは周りをぐるりと見渡した。ん?と思って一緒になって周りを見てみたけど、別に気になる人はいなかった。なんだったんだろう。
「伴侶候補の兄さんがそうまで言うなら、まあ良いか。それで?後衛の魔法使いって事は普段は魔法で、いざと言う時のための武器って事だよな?」
お兄さんは何故か苦笑しながらそう続けた。
「ああ、そうだね。一応投げナイフと剣は持ってるけど…ここまで軽いならアキトに良いかなと思って」
「それなら良いかもしれない。兄ちゃんちょっとそれ持ってみな?」
店員さんの言葉を受けて、ハルは俺の手にそっと短剣を渡してくれた。
両手で鞘に入ったままの短剣を受け取った俺は、そのあまりの軽さに驚いてしまった。もしかしたら、俺が持ってる投げナイフよりも軽いかもしれないぐらいの重さしかない。
しかもただ軽いだけじゃない。柄の部分には指の形に合うように凹凸があって、不思議と手に馴染む。
「こんなに軽いの?!え、すごい」
「鞘はつけたままで、ちょっと構えてみな?」
店員さんの言葉に従って、俺は少しだけ腰を落として短剣を構えた。ハルに教えてもらった、一番基本の姿勢。攻撃にも防御にも動きやすい体勢だ。
「兄ちゃん、後衛にしてはかなり筋が良いな」
構えを取っただけなのに褒められてしまった。教えてくれたハルのおかげだけどね。
「あの、これ欲しいです」
売らないって言われたらどうしようと思いながらも店員さんに主張すれば、お兄さんは楽し気に笑って答えた。
「その短剣は兄ちゃんにぴったりだからな、文句なんて無いよ」
「やった!」
「良かったね、アキト」
何か形として残るものも買いたいなと思ってたんだけど、まさかこんなに軽い短剣だとは思ってなかったな。
きちんと手入れをして使えば武器は長い間使えるってハルも言ってたし、大事に大事に使おう。
975
あなたにおすすめの小説
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
婚約破棄されたのでファンシーショップ始めました。 ― 元婚約者が、お人形さんを側室にしようとして大恥をかきました ―
鷹 綾
恋愛
隣国の王子から「政略的にも個人的にも魅力を感じない」と婚約破棄された、ファンタジア王国第三女王タナー。
泣きも怒りもせず、彼女が考えたのは――「いつか王宮の庇護がなくなっても困らない生き方」だった。
まだ八歳。
それでも先を見据え、タナーは王都の片隅で小さなファンシーショップを開くことを決意する。
並ぶのは、かわいい雑貨。
そして、かわいい魔法の雑貨。
お茶を淹れてくれるクマのぬいぐるみ店員《テイデイ・バトラー》、
冷めないティーカップ、
時間になると小鳥が飛び出すアンティーク時計――。
静かに広がる評判の裏で、
かつての元婚約者は「お人形さんを側室にしようとして」赤っ恥をかくことに。
ざまぁは控えめ、日常はやさしく。
かわいいものに囲まれながら、女王は今日も穏やかにお店を開けています。
---
この文面は
✔ アルファポリス向け文字数
✔ 女子読者に刺さるワード配置
✔ ネタバレしすぎない
✔ ほのぼの感キープ
を全部満たしています。
次は
👉 タグ案
👉 ランキング用超短縮あらすじ(100字)
どちらにしますか?
喪女なのに狼さんたちに溺愛されています
和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です!
聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。
ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。
森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ?
ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
婚約破棄をしておけば
あんど もあ
ファンタジー
王太子アントワーヌの婚約者のレアリゼは、アントワーヌに嫌われていた。男を立てぬ女らしくないレアリゼが悪い、と皆に思われて孤立無援なレアリゼ。彼女は報われぬままひたすら国のために働いた……と思われていたが実は……。
姉の代わりに舞踏会に行ったら呪われた第三王子の初恋を奪ってしまった
近井とお
BL
幼少期、ユーリは姉によく似ていることから彼女の代わりに社交の場に出席することが多々あった。ある舞踏会の夜、中庭に姿を眩ませたユーリに誰かがぶつかってくる。その正体は呪われていると噂の第三王子であったが、ぶつかられたことに腹を立てたユーリは強気に接し、ダンスを踊った後、彼を捜している気配を感じてからかいながら立ち去る。
それから数年後、第三王子は初恋の令嬢を探し始めたが、それはユーリに違いなく……。
初恋の相手を捜す第三王子×軽口令息
分厚いメガネ令息の非日常
餅粉
BL
「こいつは俺の女だ。手を出したらどうなるかわかるよな」
「シノ様……素敵!」
おかしい。おかしすぎる!恥ずかしくないのか?高位貴族が平民の女学生に俺の女ってしかもお前は婚約者いるだろうが!!
その女学生の周りにはお慕いしているであろう貴族数名が立っていた。
「ジュリーが一番素敵だよ」
「そうだよ!ジュリーが一番可愛いし美人だし素敵だよ!!」
「……うん。ジュリーの方が…素敵」
ほんと何この状況、怖い!怖いすぎるぞ!あと妙にキモい
「先輩、私もおかしいと思います」
「だよな!」
これは真面目に学生生活を送ろうとする俺の日常のお話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる