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893.軽い短剣
「まずいくつか聞きたいんだが…そっちの兄ちゃんは前衛か後衛どっちだ?」
そう尋ねてくれたお兄さんに、俺は後衛ですと笑顔で答えた。グレースさんもそうだったけど、体格的に後衛だろうと決めつけずに聞いてくれるのって嬉しいものだな。
辺境領以外ではだいたい後衛だろ?って聞かれてたんだけどさ。
「そうか、後衛か…ちなみに武器については…聞いても良いのか?」
何故かお兄さんはそこで俺じゃなく、ハルを見つめてそう尋ねた。なんで?と思わずハルを見つめてしまったんだけど、ハルはふわりと笑って頷いた。
「ああ、気づかってくれてありがとう。アキト、言って大丈夫だよ」
「えっと…魔法使い…です?」
今まで普通に後衛の魔法使いですって自己紹介してきた。それなのに急に今になってそう聞かれた理由が分からなくて、答えがちょっと疑問形になってしまった。
明らかに困惑している俺の答えに、ハルはすぐに理由を教えてくれた。
「辺境ではね、どんな武器を使うかを隠そうとする人もいるんだ」
「えっ…武器を隠すの?なんで?」
でも装備してるものを見たら分かるよねと思ったけど、武器の類は全て魔導収納鞄にしまい込んでいる冒険者とか、分からないようにわざといくつかの種類を装備してる冒険者も多いんだって。
そう言われて周りを見てみれば、確かに腰には剣、足には短剣、背中には弓みたいにいくつかの武器を装備している人も結構いるな。逆に防具の類は全部装備してるのに、武器は持ってないって人も結構いる。
「他の地域にはあまりないんだけど、辺境では見知らぬ人から一緒に依頼を受けないかと勧誘される事があるんだ。特に特殊な魔物の討伐依頼とかなんだけど」
「へぇ、そうなんだ」
「他の地域では基本的に知り合いとチームを組むとか、もしくは冒険者ギルドが間に立つよね?それを全く知らない人に直接声をかけられてチームを組む事になるんだけど…どう思う?」
ああ、そっかブレイズ達と一緒に行ったああいう特殊な依頼に、知らない人と組んで行くって事か。それは…ちょっと怖いかもしれない。
「どんな人達か分からない人と組むのはちょっと怖いね」
信用して良いかも分からないし、きちんと連携ができるかも分からない。そんな依頼仲間は嫌だ。
「そうだよね。だから勧誘されないようにと、わざと分からないように誤魔化してる人が多いんだ」
「説明は終わったかい?」
店員のお兄さんは、ハルの説明が終わるまで静かに待っていてくれた。
「あ、待たせてごめんなさい」
「いや、気にしないでくれ。それで…こんなに人が多い場所で言っちゃって良かったのかい?」
すこし心配そうなお兄さんに、ハルはにっこりと笑って答えた。
「ああ、大丈夫だよ。もしアキトに依頼をしたい人がいたなら、俺がきちんと色々と調べてからしか依頼は受けないからね」
そう言ってハルは周りをぐるりと見渡した。ん?と思って一緒になって周りを見てみたけど、別に気になる人はいなかった。なんだったんだろう。
「伴侶候補の兄さんがそうまで言うなら、まあ良いか。それで?後衛の魔法使いって事は普段は魔法で、いざと言う時のための武器って事だよな?」
お兄さんは何故か苦笑しながらそう続けた。
「ああ、そうだね。一応投げナイフと剣は持ってるけど…ここまで軽いならアキトに良いかなと思って」
「それなら良いかもしれない。兄ちゃんちょっとそれ持ってみな?」
店員さんの言葉を受けて、ハルは俺の手にそっと短剣を渡してくれた。
両手で鞘に入ったままの短剣を受け取った俺は、そのあまりの軽さに驚いてしまった。もしかしたら、俺が持ってる投げナイフよりも軽いかもしれないぐらいの重さしかない。
しかもただ軽いだけじゃない。柄の部分には指の形に合うように凹凸があって、不思議と手に馴染む。
「こんなに軽いの?!え、すごい」
「鞘はつけたままで、ちょっと構えてみな?」
店員さんの言葉に従って、俺は少しだけ腰を落として短剣を構えた。ハルに教えてもらった、一番基本の姿勢。攻撃にも防御にも動きやすい体勢だ。
「兄ちゃん、後衛にしてはかなり筋が良いな」
構えを取っただけなのに褒められてしまった。教えてくれたハルのおかげだけどね。
「あの、これ欲しいです」
売らないって言われたらどうしようと思いながらも店員さんに主張すれば、お兄さんは楽し気に笑って答えた。
「その短剣は兄ちゃんにぴったりだからな、文句なんて無いよ」
「やった!」
「良かったね、アキト」
何か形として残るものも買いたいなと思ってたんだけど、まさかこんなに軽い短剣だとは思ってなかったな。
きちんと手入れをして使えば武器は長い間使えるってハルも言ってたし、大事に大事に使おう。
そう尋ねてくれたお兄さんに、俺は後衛ですと笑顔で答えた。グレースさんもそうだったけど、体格的に後衛だろうと決めつけずに聞いてくれるのって嬉しいものだな。
辺境領以外ではだいたい後衛だろ?って聞かれてたんだけどさ。
「そうか、後衛か…ちなみに武器については…聞いても良いのか?」
何故かお兄さんはそこで俺じゃなく、ハルを見つめてそう尋ねた。なんで?と思わずハルを見つめてしまったんだけど、ハルはふわりと笑って頷いた。
「ああ、気づかってくれてありがとう。アキト、言って大丈夫だよ」
「えっと…魔法使い…です?」
今まで普通に後衛の魔法使いですって自己紹介してきた。それなのに急に今になってそう聞かれた理由が分からなくて、答えがちょっと疑問形になってしまった。
明らかに困惑している俺の答えに、ハルはすぐに理由を教えてくれた。
「辺境ではね、どんな武器を使うかを隠そうとする人もいるんだ」
「えっ…武器を隠すの?なんで?」
でも装備してるものを見たら分かるよねと思ったけど、武器の類は全て魔導収納鞄にしまい込んでいる冒険者とか、分からないようにわざといくつかの種類を装備してる冒険者も多いんだって。
そう言われて周りを見てみれば、確かに腰には剣、足には短剣、背中には弓みたいにいくつかの武器を装備している人も結構いるな。逆に防具の類は全部装備してるのに、武器は持ってないって人も結構いる。
「他の地域にはあまりないんだけど、辺境では見知らぬ人から一緒に依頼を受けないかと勧誘される事があるんだ。特に特殊な魔物の討伐依頼とかなんだけど」
「へぇ、そうなんだ」
「他の地域では基本的に知り合いとチームを組むとか、もしくは冒険者ギルドが間に立つよね?それを全く知らない人に直接声をかけられてチームを組む事になるんだけど…どう思う?」
ああ、そっかブレイズ達と一緒に行ったああいう特殊な依頼に、知らない人と組んで行くって事か。それは…ちょっと怖いかもしれない。
「どんな人達か分からない人と組むのはちょっと怖いね」
信用して良いかも分からないし、きちんと連携ができるかも分からない。そんな依頼仲間は嫌だ。
「そうだよね。だから勧誘されないようにと、わざと分からないように誤魔化してる人が多いんだ」
「説明は終わったかい?」
店員のお兄さんは、ハルの説明が終わるまで静かに待っていてくれた。
「あ、待たせてごめんなさい」
「いや、気にしないでくれ。それで…こんなに人が多い場所で言っちゃって良かったのかい?」
すこし心配そうなお兄さんに、ハルはにっこりと笑って答えた。
「ああ、大丈夫だよ。もしアキトに依頼をしたい人がいたなら、俺がきちんと色々と調べてからしか依頼は受けないからね」
そう言ってハルは周りをぐるりと見渡した。ん?と思って一緒になって周りを見てみたけど、別に気になる人はいなかった。なんだったんだろう。
「伴侶候補の兄さんがそうまで言うなら、まあ良いか。それで?後衛の魔法使いって事は普段は魔法で、いざと言う時のための武器って事だよな?」
お兄さんは何故か苦笑しながらそう続けた。
「ああ、そうだね。一応投げナイフと剣は持ってるけど…ここまで軽いならアキトに良いかなと思って」
「それなら良いかもしれない。兄ちゃんちょっとそれ持ってみな?」
店員さんの言葉を受けて、ハルは俺の手にそっと短剣を渡してくれた。
両手で鞘に入ったままの短剣を受け取った俺は、そのあまりの軽さに驚いてしまった。もしかしたら、俺が持ってる投げナイフよりも軽いかもしれないぐらいの重さしかない。
しかもただ軽いだけじゃない。柄の部分には指の形に合うように凹凸があって、不思議と手に馴染む。
「こんなに軽いの?!え、すごい」
「鞘はつけたままで、ちょっと構えてみな?」
店員さんの言葉に従って、俺は少しだけ腰を落として短剣を構えた。ハルに教えてもらった、一番基本の姿勢。攻撃にも防御にも動きやすい体勢だ。
「兄ちゃん、後衛にしてはかなり筋が良いな」
構えを取っただけなのに褒められてしまった。教えてくれたハルのおかげだけどね。
「あの、これ欲しいです」
売らないって言われたらどうしようと思いながらも店員さんに主張すれば、お兄さんは楽し気に笑って答えた。
「その短剣は兄ちゃんにぴったりだからな、文句なんて無いよ」
「やった!」
「良かったね、アキト」
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