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895.話したいけど
俺がこの世界に来てから、異世界人――つまり俺のいた世界の影響っていうのは、色々な所で目にしてきた。
お菓子屋さんや料理店だったり、ちょっとした行事、たまにある言葉の共通点とかね。ギルドカードなんかもそうかな。
ああ、売ってる服のデザインで何かこの世界の服っぽくないななんて思う事もあったけど、もしかしたらあれもそうなのかもしれない。
でも、目の前に同郷出身からもしれない人がいるという状況は、初めてだ。
「うわーまさかこんな所で会えるとは!」
「俺も驚いてます!」
「色々話したいな」
「そうですね!」
ニコニコと笑顔で答えてくれる目の前の男性は、会話のテンポが良くて話しやすい人だ。
俺と同い年か…ちょっと上ぐらいかな?なんて考えながら見つめていると、不意にハルが口を開いた。
「アキト…ちょっと落ち着いて?」
話したい気持ちは分かるけどここでは駄目だと言いたげな視線に、俺は慌てて口をつぐんだ。
「本当に…こいつと同郷なのか…?」
そう言って俺を見つめてくるさっきまでお兄さんと話していた連れの人は、明らかに疑いの目で俺を見つめている。
「お前、そんな目で見るなよ」
慌てた様子のお兄さんがそう声をかけても、隣に立っているハルがじろりと睨みつけても、連れの人の視線は変わらない。
うん、まあそうだよねと、俺は逆に納得してしまった。
このお兄さんが俺と同じ異世界人だというなら、急に近づいてくる人を警戒するのは当然だ。本当なら、俺ももっと警戒するべきだったのかもしれないな。すこしだけ反省。
「ごめんな」
「いえ、気にしないでください」
「俺はケンタって言うんだ。ケンって呼んでくれ。あと敬語はなしにしてくれないか?」
堅苦しいのは苦手でなと笑ったケンさんに、俺もすぐに答えた。
「俺はアキト。好きに呼んで」
「じゃあ俺はアキトって呼ばせてもらおうかな…伴侶候補さんもそれで大丈夫?」
ちらりとハルの方を見てそう尋ねたケンに、ハルは少しだけ驚いた様子を見せたけれどすぐに頷いた。
「アキトの伴侶候補のハルだ」
「ああ、ご丁寧にどうも。ハルさんね。ちなみにこいつは俺の伴侶候補のレイだよ」
そう言うなりケンは隣に立っていた連れの人の手を持ち上げて、お揃いの腕輪を見せてくれた。
わ、ケンの伴侶候補さんだったのか。そんな関係なら、余計に俺を警戒するよね。
「ケンさん、レイさん。もしよければ、これも一種の縁だろう。俺達と一緒にどこかの店にでも入らないか?」
これ以上ここで故郷の話はできない。こんな人混みだとどこで誰が聞いてるか分からないからね。
そう視線だけで告げたハルは、自然な流れでそう提案してくれた。
誘い方がスマートな所も格好良いな。
「あー…そうだな。もう昼飯食っちゃったんだよなぁ」
「あ、俺達ももう食べたよ」
それなら軽い物だけを出してる店かと呟いたケンは、ちらりとレイさんを見てから口を開いた。
「あのさ、もしアキトとハルさんさえ良ければ…俺たちの店に来ない?」
「二人で店をやってるのか?」
「うん、大通りにある木彫りの店だよ。まあ今日は定休日なんだけどな」
「…そうか。分かった」
ふうと息を吐いたハルの肩の力が、少しだけ解けたのが分かった。
多分ハルの反応からして、辺境領でも大通りの店にはきちんと審査があるんだろうな。そこに店を持っていると言う事は、ある程度の身元の保証がされた事になる。だから、すこしだけ警戒を緩めたんだと思う。
「俺もお店見てみたい!」
木彫りのお店を同郷の人がやってると聞いたら、そんなの行ってみたいに決まってる。
「よし、それじゃあついてきてくれー」
軽くそう言ったケンは、レイさんの腕をぐいっと引っ張ると俺たちが歩いて来た方、市場の入口の方に向かって歩き出した。
そっか大通りに戻るって事は市場散策はここで終わりか。ちょっとだけ残念に思っていると、不意に耳元にハルが顔を寄せてきた。
「ここから先は、また今度来ようね」
「うん、そうだね」
また来れば良いんだよねと笑みを返せば、ハルは嬉しそうに笑いながらそっと俺の頭を撫でてくれた。
お菓子屋さんや料理店だったり、ちょっとした行事、たまにある言葉の共通点とかね。ギルドカードなんかもそうかな。
ああ、売ってる服のデザインで何かこの世界の服っぽくないななんて思う事もあったけど、もしかしたらあれもそうなのかもしれない。
でも、目の前に同郷出身からもしれない人がいるという状況は、初めてだ。
「うわーまさかこんな所で会えるとは!」
「俺も驚いてます!」
「色々話したいな」
「そうですね!」
ニコニコと笑顔で答えてくれる目の前の男性は、会話のテンポが良くて話しやすい人だ。
俺と同い年か…ちょっと上ぐらいかな?なんて考えながら見つめていると、不意にハルが口を開いた。
「アキト…ちょっと落ち着いて?」
話したい気持ちは分かるけどここでは駄目だと言いたげな視線に、俺は慌てて口をつぐんだ。
「本当に…こいつと同郷なのか…?」
そう言って俺を見つめてくるさっきまでお兄さんと話していた連れの人は、明らかに疑いの目で俺を見つめている。
「お前、そんな目で見るなよ」
慌てた様子のお兄さんがそう声をかけても、隣に立っているハルがじろりと睨みつけても、連れの人の視線は変わらない。
うん、まあそうだよねと、俺は逆に納得してしまった。
このお兄さんが俺と同じ異世界人だというなら、急に近づいてくる人を警戒するのは当然だ。本当なら、俺ももっと警戒するべきだったのかもしれないな。すこしだけ反省。
「ごめんな」
「いえ、気にしないでください」
「俺はケンタって言うんだ。ケンって呼んでくれ。あと敬語はなしにしてくれないか?」
堅苦しいのは苦手でなと笑ったケンさんに、俺もすぐに答えた。
「俺はアキト。好きに呼んで」
「じゃあ俺はアキトって呼ばせてもらおうかな…伴侶候補さんもそれで大丈夫?」
ちらりとハルの方を見てそう尋ねたケンに、ハルは少しだけ驚いた様子を見せたけれどすぐに頷いた。
「アキトの伴侶候補のハルだ」
「ああ、ご丁寧にどうも。ハルさんね。ちなみにこいつは俺の伴侶候補のレイだよ」
そう言うなりケンは隣に立っていた連れの人の手を持ち上げて、お揃いの腕輪を見せてくれた。
わ、ケンの伴侶候補さんだったのか。そんな関係なら、余計に俺を警戒するよね。
「ケンさん、レイさん。もしよければ、これも一種の縁だろう。俺達と一緒にどこかの店にでも入らないか?」
これ以上ここで故郷の話はできない。こんな人混みだとどこで誰が聞いてるか分からないからね。
そう視線だけで告げたハルは、自然な流れでそう提案してくれた。
誘い方がスマートな所も格好良いな。
「あー…そうだな。もう昼飯食っちゃったんだよなぁ」
「あ、俺達ももう食べたよ」
それなら軽い物だけを出してる店かと呟いたケンは、ちらりとレイさんを見てから口を開いた。
「あのさ、もしアキトとハルさんさえ良ければ…俺たちの店に来ない?」
「二人で店をやってるのか?」
「うん、大通りにある木彫りの店だよ。まあ今日は定休日なんだけどな」
「…そうか。分かった」
ふうと息を吐いたハルの肩の力が、少しだけ解けたのが分かった。
多分ハルの反応からして、辺境領でも大通りの店にはきちんと審査があるんだろうな。そこに店を持っていると言う事は、ある程度の身元の保証がされた事になる。だから、すこしだけ警戒を緩めたんだと思う。
「俺もお店見てみたい!」
木彫りのお店を同郷の人がやってると聞いたら、そんなの行ってみたいに決まってる。
「よし、それじゃあついてきてくれー」
軽くそう言ったケンは、レイさんの腕をぐいっと引っ張ると俺たちが歩いて来た方、市場の入口の方に向かって歩き出した。
そっか大通りに戻るって事は市場散策はここで終わりか。ちょっとだけ残念に思っていると、不意に耳元にハルが顔を寄せてきた。
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