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900.ケンの過去話
ケンはちょうど十年ほど前、当時異世界召喚を頻繁に行っていた噂の隣国で召喚されたらしい。
「いやーあの時はびっくりしたよ。電車で通勤中にうたたねしちゃってさー寝て起きたら複雑な魔法陣の上だったんだから」
スーツ姿で召喚されたのは、神殿みたいな雰囲気の豪華な部屋の中だったらしい。ここはどこだと慌てるケンに、召喚を行ったらしい数人の男達は冷たい声で尋ねたらしい。
お前には一体何ができるのか、今すぐに答えろと。
「なんだそれは…あまりにもひどいな…」
自分の事のように辛そうにボソリと呟いたハルに、ねーかなりひどいよねとケンは笑って答えた。
「一方的に勝手にこっちの世界に連れてきておいて、説明も無しにお前には何ができるーだよ?」
まあ俺はゲームとか漫画とか小説とか色々好きなもののあるオタクだったから、すぐに異世界召喚だって察したけどさーとさらりと続ける。
ケンもゲームとか本とか好きなのか。
「召喚されて戸惑ってるのに、急にそんな事言われても…困るよね…」
俺がもしこっちの世界に来るなりそんな質問をされてたら、何もできませんって答えるしかなかっただろうな。
「あれはかなり困ったねー俺は別に何かができる腕の立つ職人だとか美味しい料理が作れる一流の料理人だとかじゃなかったから。だからこう分かりやすい、できる事って特になかったんだよ」
ちなみに当時の仕事はパソコンを使ってのデータ整理や書類作成が主だったから、そもそもパソコンが無いと役立たねぇのよとケンは続けた。
「ああー確かにパソコンが無いと、それは無理だね」
「だからパソコンがあれば色々できるけど、ここにパソコンはあるのか?って答えたんだよ。ちなみにそれに対する答えは、この役立たずとか外れを引いたとかだったなー」
ケンは普通の声色でさらりとそう続けたけど、レイさんはつらそうに眉間にぎゅっとしわを寄せた。
うん、伴侶候補への過去の暴言とか、聞きたい筈が無いよね。知り会ったばかりの俺でも苛立ってしまう暴言だ。
「それで…どうなったんだ?」
心なしかハルの声も普段よりもすこし低くなってる気がする。これはたぶん、隣国への怒りをぐっと堪えてるところなんだろうな。
「それがさー俺は結構運が良かったみたいで、召喚されて一週間しないぐらいで何人か一緒に逃がされたんだ」
「逃がされた?」
「そうそう、召喚に頼るのを良しとしてなかった隣国の貴族の人に連れられて、この領に来たってわけ」
ああ、ケンもハルのご両親が言ってた、この領で保護された異世界人達の中の一人なのか。
「そうなんだ」
「あの時、俺達の保護を約束してくれた人って、多分ハルさんのお祖父さんだと思うんだけどね」
「え、どんな人だった!?」
ハルのお祖父さんって言葉に反射的にそう聞いてしまったけど、ケンは嫌な顔一つしなかった。すぐに俺の目を見て答えてくれる。
「ハルさんに似てたよ。あ、でももっと体格は良かったかな。圧倒されるぐらいすっごい強そうな人だったけど、俺達異世界人の頭を撫でてもう安心して良いよって言ってくれたんだ」
もう成人してたのにあの優しくて温かい手にはちょっと泣いたと、照れくさそうに教えてくれた。そっか、ハルのお祖父さんも優しい人なんだね。
「こっちの領で保護された後はね、何か得意な事が無いかって本当に色んな事に挑戦させてもらったんだ」
そうして数年かけて色々と試している間に、元の世界にいた頃には自分でも知らなかった手先の器用さに気が付いたらしい。
「試しにと木彫りの像を作ってみたら、これはすごいってすっごい褒められたんだ」
才能があるかもなんて初めて言われたから嬉しくて、ワクワクしながら彫り続けていたら気づいたらこんな店を持つまでになってたらしい。
「すごいね、ケン」
「そうか?」
「ああ。自分で出来ることを見つけて店まで持ったんだ、自慢して良いだろう」
「…俺もそう思う」
真剣な表情のレイさんにまでそう言われたケンは、照れくさそうに笑いながらもありがとうと呟いた。
ちなみにレイさんとの出逢いは五年前らしい。
異世界人を保護してた建物に迷い込んだまだ少年だったレイさんが、ケンに一目惚れして全力で口説き続けたらしい。その辺をもっと詳しく教えて欲しかったけど、恥ずかしそうに誤魔化されてしまった。
「いやーあの時はびっくりしたよ。電車で通勤中にうたたねしちゃってさー寝て起きたら複雑な魔法陣の上だったんだから」
スーツ姿で召喚されたのは、神殿みたいな雰囲気の豪華な部屋の中だったらしい。ここはどこだと慌てるケンに、召喚を行ったらしい数人の男達は冷たい声で尋ねたらしい。
お前には一体何ができるのか、今すぐに答えろと。
「なんだそれは…あまりにもひどいな…」
自分の事のように辛そうにボソリと呟いたハルに、ねーかなりひどいよねとケンは笑って答えた。
「一方的に勝手にこっちの世界に連れてきておいて、説明も無しにお前には何ができるーだよ?」
まあ俺はゲームとか漫画とか小説とか色々好きなもののあるオタクだったから、すぐに異世界召喚だって察したけどさーとさらりと続ける。
ケンもゲームとか本とか好きなのか。
「召喚されて戸惑ってるのに、急にそんな事言われても…困るよね…」
俺がもしこっちの世界に来るなりそんな質問をされてたら、何もできませんって答えるしかなかっただろうな。
「あれはかなり困ったねー俺は別に何かができる腕の立つ職人だとか美味しい料理が作れる一流の料理人だとかじゃなかったから。だからこう分かりやすい、できる事って特になかったんだよ」
ちなみに当時の仕事はパソコンを使ってのデータ整理や書類作成が主だったから、そもそもパソコンが無いと役立たねぇのよとケンは続けた。
「ああー確かにパソコンが無いと、それは無理だね」
「だからパソコンがあれば色々できるけど、ここにパソコンはあるのか?って答えたんだよ。ちなみにそれに対する答えは、この役立たずとか外れを引いたとかだったなー」
ケンは普通の声色でさらりとそう続けたけど、レイさんはつらそうに眉間にぎゅっとしわを寄せた。
うん、伴侶候補への過去の暴言とか、聞きたい筈が無いよね。知り会ったばかりの俺でも苛立ってしまう暴言だ。
「それで…どうなったんだ?」
心なしかハルの声も普段よりもすこし低くなってる気がする。これはたぶん、隣国への怒りをぐっと堪えてるところなんだろうな。
「それがさー俺は結構運が良かったみたいで、召喚されて一週間しないぐらいで何人か一緒に逃がされたんだ」
「逃がされた?」
「そうそう、召喚に頼るのを良しとしてなかった隣国の貴族の人に連れられて、この領に来たってわけ」
ああ、ケンもハルのご両親が言ってた、この領で保護された異世界人達の中の一人なのか。
「そうなんだ」
「あの時、俺達の保護を約束してくれた人って、多分ハルさんのお祖父さんだと思うんだけどね」
「え、どんな人だった!?」
ハルのお祖父さんって言葉に反射的にそう聞いてしまったけど、ケンは嫌な顔一つしなかった。すぐに俺の目を見て答えてくれる。
「ハルさんに似てたよ。あ、でももっと体格は良かったかな。圧倒されるぐらいすっごい強そうな人だったけど、俺達異世界人の頭を撫でてもう安心して良いよって言ってくれたんだ」
もう成人してたのにあの優しくて温かい手にはちょっと泣いたと、照れくさそうに教えてくれた。そっか、ハルのお祖父さんも優しい人なんだね。
「こっちの領で保護された後はね、何か得意な事が無いかって本当に色んな事に挑戦させてもらったんだ」
そうして数年かけて色々と試している間に、元の世界にいた頃には自分でも知らなかった手先の器用さに気が付いたらしい。
「試しにと木彫りの像を作ってみたら、これはすごいってすっごい褒められたんだ」
才能があるかもなんて初めて言われたから嬉しくて、ワクワクしながら彫り続けていたら気づいたらこんな店を持つまでになってたらしい。
「すごいね、ケン」
「そうか?」
「ああ。自分で出来ることを見つけて店まで持ったんだ、自慢して良いだろう」
「…俺もそう思う」
真剣な表情のレイさんにまでそう言われたケンは、照れくさそうに笑いながらもありがとうと呟いた。
ちなみにレイさんとの出逢いは五年前らしい。
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