生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
902 / 1,561

901.俺の過去

 レイさんが入れてくれたお茶も飲み終わり話がひと段落した所で、今度は俺達が今日買ったばかりの果実水の瓶を取り出した。

 急におしかけてもてなされるだけってのもなと思ってハルにこっそり聞いてみたら、客側が何か飲み物や食べ物を渡すのはこの世界では普通の事だって言われたからね。

 それならここは試飲して美味しかった、スーラさんのあの果実水にしようと思ったんだ。

「あ、スーラさんの所のやつだ!」

 瓶につけられているタグを見ただけで、ケンは嬉しそうに笑みを浮かべた。スーラさんのお店を知っているみたいだ。

「ああ、これ美味いよな」

 レイさんもふわりと笑みを浮かべて嬉しそうな表情だ。良かった。どうやらレイさんも甘い物は嫌いじゃないみたいだ。

「良かった、皆で飲も!」

 さくらんぼらしき風味のほんのり甘いさっぱり果実水を飲んで一息ついていると、不意にケンが俺に向かって尋ねてきた。

「なあ、さっき俺の話にかなり怒ってくれてたけどさ…アキトは隣国で召喚されたってわけじゃないのか?」

 一年前だったらもう隣国の召喚は終わってる頃だよなと聞かれた俺は、コクリとすぐに頷いた。

「俺はねーバイト帰りに自販機に寄って、ふと気づいたら森の中に立ってたんだ」
「うわ、自販機懐かしい」

 久しぶりに聞いたわと笑うケンの後ろで、レイさんはん?と首を傾げた。

「森の中って…どこの森だ?」

 それによって話は変わってくるよなと冷静に続けたレイさんに、俺は笑顔で答えた。

「ナルクアの森だよ」

 そう答えた瞬間、レイさんは一気に顔色を変えた。血の気が引いた顔ってこういうのを言うんだろうなと思う変わりっぷりだった。

「はっ!?ナルクアの森!?」
「わ、びっくりした!レイ、どうしたの急に?」
「あー悪い。ナルクアの森ってのは…今の俺でも一人では入りたくないなと思うぐらいの、すごく危険な場所なんだよ」
「え、そうなの?」

 知らなかったんだけどと慌てた様子のケンの質問に、俺はそうらしいねと苦笑しながら答えた。だっていきなりあそこにいたから、あの場所がどれぐらい危険かもあの時は知らなかったし。

「俺はそこでハルに会ったんだ」

 ハルが幽霊だった事は…今はまだ言わなくて良いかな。ケンとレイさんを信じてないってわけじゃないけど、これを言うと説明が無駄に長くなりそうだしね。

「はーなるほど…それはハロルド様にそこで会えて幸運だったな」

 ナルクアの森にハルがいたって事には、詳しそうなレイさんでも動揺しないんだな。なるほど。次に誰かに説明する時のためにも、ちゃんと覚えておこう。

「うん、ナルクアの森にハルがいてくれてすっごく幸運だったと思ってるよ」
「もちろん俺もな。おかげでアキトに会えたんだ」

 ふふと笑ったハルの眩い笑顔に、ケンとレイさんはちらりと顔を見合わせた。なんだろ、ハルの笑顔の破壊力にびっくりしたのかな。気持ちは分かるけど。

「そっか、じゃあアキトは何かのきっかけで、たまたまこっちに来ちゃったって感じなのかな?」
「うーん、少なくとも足元に魔法陣は無かったよ」

 まあ詳しい事は分からないけどとしか言えないんだけどね。だって自分がどうやってこっちの世界に来たのかなんて、全く分かってないし。

「それでアキトはこっちの世界では何をしてるんだ?」
「いや、服装見たら分かるだろ」

 だいぶ落ち着いてきたみたいで、レイさんとケンは市場でみたような自然なやりとりを繰り広げている。仲良しみたいで何より。

「え、服装…ファンタジー映画風っていうかゲームのキャラ風っていうか?」

 あーうん、俺も最初に冒険者装備見た時はそう思ったな。

「いやいや、これは冒険者の装備だろ…ですよね?」

 俺とハルを見てそう尋ねてくるレイさんに、俺とハルはコクリと頷いた。

「え、アキトって、冒険者なの!?」
「うん、後衛の魔法使いだよ」
「うっわ、しかも魔法使いなの?魔法使えるってすごいな!憧れの魔法!!」

 一気にテンションの上がったケンは、残念ながら魔力がかなりすくない方らしい。だから魔法に憧れがあるけど、攻撃魔法は使えないんだって。頑張って生活魔法がちょっと使えるぐらいらしい。

「へへ、ありがとう。俺も魔法使えるってなった時はテンション上がったよ」
「そりゃあ上がるよな!な、どんな魔法が得意とかあるのか!?」
「えっとねー」
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。