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906.【ハル視点】アキトの短剣
「まずいくつか聞きたいんだが…そっちの兄ちゃんは前衛か後衛どっちだ?」
慎重にそう尋ねた店員の男性に、アキトは分かりやすく目を輝かせて俺は後衛ですと笑顔で答えた。体格からして後衛だろうと思われるのが嫌みたいだから、よほど嬉しかったんだろうな。
辺境領ではかつて触れれば折れそうな程の細身の身体で前衛を務めた女戦士や、巨漢で筋肉質だが魔法に長けた魔法使いなんてのもいたから、この辺りでは見た目では決めつけないんだが。
「そうか、後衛か…ちなみに武器については…聞いても良いのか?」
店員はそこでアキトではなく、俺を見つめてそう尋ねた。アキトの様子を見て、辺境領には不慣れだと判断したんだろうな。
不思議そうに俺を見上げてくるアキトに笑みを返してから、俺は男性に向けて答えた。
「ああ、気づかってくれてありがとう。アキト、言って大丈夫だよ」
「えっと…魔法使い…です?」
なぜ攻撃手段を聞くだけで、そんなに慎重に確認されたんだろう?
そう思っていそうな困惑顔のアキトに、俺はそっと声をかける。
「辺境ではね、どんな武器を使うかを隠そうとする人もいるんだ」
「えっ…武器を隠すの?なんで?」
アキトはでも装備してるものを見たら分かるよね?と言いたげにうろうろと周囲を歩く人達に視線を彷徨わせた。
「武器の類は全て魔導収納鞄にしまい込む冒険者もいるし、分からないようにわざといくつかの種類を装備してる冒険者も多いよ」
腰には剣、足には短剣、背中には弓のようにいくつかの武器を装備している人たちの姿を見つめて、アキトは小さな声であ、本当だねと呟いた。
「他の地域にはあまりないんだけど、辺境では見知らぬ人から一緒に依頼を受けないかと勧誘される事があるんだ。特に特殊な魔物の討伐依頼とかなんだけど」
「へぇ、そうなんだ」
「他の地域では基本的に知り合いとチームを組むとか、もしくは冒険者ギルドが間に立つよね?それを全く知らない人に直接声をかけられてチームを組む事になるんだけど…どう思う?」
全てを教えずにそう尋ねれば、真剣な顔で少しだけ考えこんでからアキトはぽつりと答えた。
「どんな人達か分からない人と組むのはちょっと怖いね」
ブレイズ達みたいに知ってる人たちなら良いんだけどなーと続ける。うん、きちんと知らない人を警戒する意識があるみたいで、ちょっと安心した。
「そうだよね。だから勧誘されないようにと、わざと分からないように誤魔化してる人が多いんだ」
「説明は終わったかい?」
店員は、俺の説明が終わるまで何も言わずに静かに待っていてくれた。
「あ、待たせてごめんなさい」
「いや、気にしないでくれ。それで…こんなに人が多い場所で言っちゃって良かったのかい?」
周りを移動していた冒険者たちが後衛の魔法使いなのかと言いたげな視線で見ているから、この男性が心配するのも無理は無いか。
アキトを便利に利用しようなんて、そんな事を俺が許すわけが無いんだが。俺はあえてにっこりと笑って答えた。
「ああ、大丈夫だよ。もしアキトに依頼をしたい人がいたなら、俺がきちんと色々と調べてからしか依頼は受けないからね」
伝手もあるし全力を出すぞと一瞬だけ威圧をしながら、俺は周りをぐるりと見渡した。目があった何人かの冒険者達はさっと慌てて目を反らした。たまたま近くを通過中だったらしい騎士までさっと目を反らしたのは何故だろうな。
アキトはん?と不思議そうに周りを見回したけれど、その頃にはこちらを向いている人の姿はなかった。
「あー…伴侶候補の兄さんがそうまで言うなら、まあ良いか。それで?後衛の魔法使いって事は普段は魔法で、いざと言う時のための武器って事だよな?」
「ああ、そうだね。一応投げナイフと剣は持ってるけど…ここまで軽いならアキトに良いかなと思って」
「それなら良いかもしれない。兄ちゃんちょっとそれ持ってみな?」
店員の許可を受けて、俺はアキトの手にそっと短剣を渡した。
両手で鞘に入ったままの短剣を受け取ったアキトは、そのあまりの軽さに驚いた様子で大きく目を見開いた。何度も握りなおしてみているのは、柄についている指型の凹みに指が合うかを確かめているんだろう。
「こんなに軽いの?!え、すごい」
「鞘はつけたままで、ちょっと構えてみな?」
店員の言葉に従って、アキトはさっと少しだけ腰を落とした姿勢になって短剣を構えた。幽霊の頃の俺が教えこんだ、一番基本の姿勢。攻撃にも防御にも動きやすい体勢だ。
「兄ちゃん、後衛にしてはかなり筋が良いな」
「あの、これ欲しいです」
控え目に、でも一生懸命主張するアキトは、売って貰えなかったらどうしようとか考えているんだろうな。この目利きもできる鍛冶職人の青年が、アキトに売らないという事なんて無いだろうに。
「その短剣は兄ちゃんにぴったりだからな、文句なんて無いよ」
明るく笑って答えた店員に、アキトは嬉しそうに声をあげた。
「やった!」
「良かったね、アキト」
うんと頷いては手の上の短剣を嬉しそうに眺める姿に、店員の青年も嬉しそうだ。
ここは武器も防具も質が良いものばかりだったし、武器集めが趣味なファーガス兄さんに教えてやろう。俺はそんな事を考えながら、はしゃぐアキトの様子を見守っていた。
慎重にそう尋ねた店員の男性に、アキトは分かりやすく目を輝かせて俺は後衛ですと笑顔で答えた。体格からして後衛だろうと思われるのが嫌みたいだから、よほど嬉しかったんだろうな。
辺境領ではかつて触れれば折れそうな程の細身の身体で前衛を務めた女戦士や、巨漢で筋肉質だが魔法に長けた魔法使いなんてのもいたから、この辺りでは見た目では決めつけないんだが。
「そうか、後衛か…ちなみに武器については…聞いても良いのか?」
店員はそこでアキトではなく、俺を見つめてそう尋ねた。アキトの様子を見て、辺境領には不慣れだと判断したんだろうな。
不思議そうに俺を見上げてくるアキトに笑みを返してから、俺は男性に向けて答えた。
「ああ、気づかってくれてありがとう。アキト、言って大丈夫だよ」
「えっと…魔法使い…です?」
なぜ攻撃手段を聞くだけで、そんなに慎重に確認されたんだろう?
そう思っていそうな困惑顔のアキトに、俺はそっと声をかける。
「辺境ではね、どんな武器を使うかを隠そうとする人もいるんだ」
「えっ…武器を隠すの?なんで?」
アキトはでも装備してるものを見たら分かるよね?と言いたげにうろうろと周囲を歩く人達に視線を彷徨わせた。
「武器の類は全て魔導収納鞄にしまい込む冒険者もいるし、分からないようにわざといくつかの種類を装備してる冒険者も多いよ」
腰には剣、足には短剣、背中には弓のようにいくつかの武器を装備している人たちの姿を見つめて、アキトは小さな声であ、本当だねと呟いた。
「他の地域にはあまりないんだけど、辺境では見知らぬ人から一緒に依頼を受けないかと勧誘される事があるんだ。特に特殊な魔物の討伐依頼とかなんだけど」
「へぇ、そうなんだ」
「他の地域では基本的に知り合いとチームを組むとか、もしくは冒険者ギルドが間に立つよね?それを全く知らない人に直接声をかけられてチームを組む事になるんだけど…どう思う?」
全てを教えずにそう尋ねれば、真剣な顔で少しだけ考えこんでからアキトはぽつりと答えた。
「どんな人達か分からない人と組むのはちょっと怖いね」
ブレイズ達みたいに知ってる人たちなら良いんだけどなーと続ける。うん、きちんと知らない人を警戒する意識があるみたいで、ちょっと安心した。
「そうだよね。だから勧誘されないようにと、わざと分からないように誤魔化してる人が多いんだ」
「説明は終わったかい?」
店員は、俺の説明が終わるまで何も言わずに静かに待っていてくれた。
「あ、待たせてごめんなさい」
「いや、気にしないでくれ。それで…こんなに人が多い場所で言っちゃって良かったのかい?」
周りを移動していた冒険者たちが後衛の魔法使いなのかと言いたげな視線で見ているから、この男性が心配するのも無理は無いか。
アキトを便利に利用しようなんて、そんな事を俺が許すわけが無いんだが。俺はあえてにっこりと笑って答えた。
「ああ、大丈夫だよ。もしアキトに依頼をしたい人がいたなら、俺がきちんと色々と調べてからしか依頼は受けないからね」
伝手もあるし全力を出すぞと一瞬だけ威圧をしながら、俺は周りをぐるりと見渡した。目があった何人かの冒険者達はさっと慌てて目を反らした。たまたま近くを通過中だったらしい騎士までさっと目を反らしたのは何故だろうな。
アキトはん?と不思議そうに周りを見回したけれど、その頃にはこちらを向いている人の姿はなかった。
「あー…伴侶候補の兄さんがそうまで言うなら、まあ良いか。それで?後衛の魔法使いって事は普段は魔法で、いざと言う時のための武器って事だよな?」
「ああ、そうだね。一応投げナイフと剣は持ってるけど…ここまで軽いならアキトに良いかなと思って」
「それなら良いかもしれない。兄ちゃんちょっとそれ持ってみな?」
店員の許可を受けて、俺はアキトの手にそっと短剣を渡した。
両手で鞘に入ったままの短剣を受け取ったアキトは、そのあまりの軽さに驚いた様子で大きく目を見開いた。何度も握りなおしてみているのは、柄についている指型の凹みに指が合うかを確かめているんだろう。
「こんなに軽いの?!え、すごい」
「鞘はつけたままで、ちょっと構えてみな?」
店員の言葉に従って、アキトはさっと少しだけ腰を落とした姿勢になって短剣を構えた。幽霊の頃の俺が教えこんだ、一番基本の姿勢。攻撃にも防御にも動きやすい体勢だ。
「兄ちゃん、後衛にしてはかなり筋が良いな」
「あの、これ欲しいです」
控え目に、でも一生懸命主張するアキトは、売って貰えなかったらどうしようとか考えているんだろうな。この目利きもできる鍛冶職人の青年が、アキトに売らないという事なんて無いだろうに。
「その短剣は兄ちゃんにぴったりだからな、文句なんて無いよ」
明るく笑って答えた店員に、アキトは嬉しそうに声をあげた。
「やった!」
「良かったね、アキト」
うんと頷いては手の上の短剣を嬉しそうに眺める姿に、店員の青年も嬉しそうだ。
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