916 / 1,561
915.【ハル視点】それぞれの得意技
アキトが一番得意な魔法といえば、やはり土魔法だろう。
隣でそう考えながらも黙っていたが、どうやらアキト本人も同じ意見だったらしい。
アキトが土魔法についてあれこれと詳しく説明を始めれば、ケンさんもレイさんもとても興味深そうに聞いている。
レイさんもあまり魔力が多くはないが、生まれつき身体強化の魔法だけは使えるそうだ。
本当に便利そうだよな、身体強化の魔法は。
魔法馬鹿のファリーマいわく、あれは遺伝する魔法らしいからいくら羨ましいと思っても今さら身に着けられるわけじゃないんだが。
レイさんもケンさんも、そもそも身近な人の中に魔法が得意だという人はいなかったらしい。だからあまり魔法に馴染みがないんだと言いながら、楽し気にアキトの説明を聞いている。
「土魔法かーすごいな」
「あの…そのつぶては、その辺りの石や砂を使うんですか?発動できない条件などはありますか?」
レイさんからの質問に、アキトはゆるりと首を傾げた。
「えっと…どうだろう?」
助けを求めるような顔でこちらを向いてくれたアキトに、俺は満面の笑みで答えた。
「ああ、近くに素材になるものがあれば、意識して魔法を発動すればその素材を使えるんだ。だが近くに素材が無い場合は魔力で補って発動できるよ」
そう説明すれば、アキトも一緒になって感心している。
「へぇーそうなんだ」
「なんでアキトがそんな反応なんだよ」
「いやー俺魔法の理論とか詳しくないから」
アキトはあっさりとそう答えてから、説明してくれるハルがいつも一緒にいるから良いんだと楽し気に続けた。
あーもう。可愛いなぁ、アキトは。
「俺は感覚派だから仕方ないの」
「うん、そうだね」
これからも説明は俺がするから、アキトは気にしなくて良いよ。
魔法についての話が一段落した所で、アキトはそっと切り出した。
「ね、もしケンが作った木彫りの作品を見たいなって俺が言いだしたら…困るかな?」
「え?」
「あ、無理だったらはっきり無理って言って欲しい!……でももし大丈夫なら、見せて欲しいなって思ったんだ」
断られるかもしれないけどと控え目にお願いを口にしたアキトに、ケンさんはむしろ大喜びでスクッとすぐさま立ち上がった。
「え、俺の作品見てくれんの?わ、じゃあこっち来て、こっち!」
躊躇のかけらも無いその様子からして、ケンさんはむしろ見て欲しいと思っていそうな反応だ。
「あ、ケンさん、もし良ければ俺も見せてもらっても良いか?」
アキトの横から慌ててそう声をかけた俺に、ケンさんは更に笑みを深くした。
「うん、もちろんだよ!ほらこっち!」
弾むように歩き出したケンさんが目指しているのは、どうやら廊下の隅にある布の前みたいだ。
ケンさんの背中を眺めながら追いかける俺達に、レイさんが申し訳なさそうに声をかけてきた。
「あー…あそこの布の奥が店に繋がってるんです。説明もせずにすみません」
自分の作品を見たいって言われたのが、よっぽど嬉しかったみたいですとレイさんはこそりと教えてくれた。
「レイさんが代わりに説明してくれたんだから、問題は無いさ」
「うん、見たいって言ったのは俺達だし」
「ありがとうございます」
こそこそと俺達がそんな事を話している間に布の前に辿り着いたケンさんは、パッとこちらを振り返った。
「こっちこっち」
ニコニコ笑顔で手招きされた俺たちは、慌ててケンさんに近づいていく。
「じゃじゃーん」
そんな声と共にケンさんはさっと布を引いてくれたが、店の中は薄暗くて残念ながら何も見えなかった。
店の中が暗い上につい先ほどまで明るい部屋にいたから、俺達の目が慣れていないせいだろう。反応のない俺たちに一瞬だけ不思議そうな顔をしたケンさんは、ちらりと店の中へと視線を向けた。
「あーそっか。ちょっとだけここで待っててねー」
ケンさんはそう言うと、スタスタと慣れた様子で迷いなく真っ暗な部屋の中へと入って行く。
ほどなくして部屋中に魔道具の明かりがともった。外から店をみた時の印象と同じ赤と黒基調のテーブルや棚の上には、ずらりと細かな彫刻の施された木彫りが並んでいる。
「うわぁーすごい量!これ全部ケンが?」
「うん、そうだよ。全部俺が作ったやつ」
自慢げな声を聞きながら、アキトと俺はまじまじと木彫りをみつめた。
隣でそう考えながらも黙っていたが、どうやらアキト本人も同じ意見だったらしい。
アキトが土魔法についてあれこれと詳しく説明を始めれば、ケンさんもレイさんもとても興味深そうに聞いている。
レイさんもあまり魔力が多くはないが、生まれつき身体強化の魔法だけは使えるそうだ。
本当に便利そうだよな、身体強化の魔法は。
魔法馬鹿のファリーマいわく、あれは遺伝する魔法らしいからいくら羨ましいと思っても今さら身に着けられるわけじゃないんだが。
レイさんもケンさんも、そもそも身近な人の中に魔法が得意だという人はいなかったらしい。だからあまり魔法に馴染みがないんだと言いながら、楽し気にアキトの説明を聞いている。
「土魔法かーすごいな」
「あの…そのつぶては、その辺りの石や砂を使うんですか?発動できない条件などはありますか?」
レイさんからの質問に、アキトはゆるりと首を傾げた。
「えっと…どうだろう?」
助けを求めるような顔でこちらを向いてくれたアキトに、俺は満面の笑みで答えた。
「ああ、近くに素材になるものがあれば、意識して魔法を発動すればその素材を使えるんだ。だが近くに素材が無い場合は魔力で補って発動できるよ」
そう説明すれば、アキトも一緒になって感心している。
「へぇーそうなんだ」
「なんでアキトがそんな反応なんだよ」
「いやー俺魔法の理論とか詳しくないから」
アキトはあっさりとそう答えてから、説明してくれるハルがいつも一緒にいるから良いんだと楽し気に続けた。
あーもう。可愛いなぁ、アキトは。
「俺は感覚派だから仕方ないの」
「うん、そうだね」
これからも説明は俺がするから、アキトは気にしなくて良いよ。
魔法についての話が一段落した所で、アキトはそっと切り出した。
「ね、もしケンが作った木彫りの作品を見たいなって俺が言いだしたら…困るかな?」
「え?」
「あ、無理だったらはっきり無理って言って欲しい!……でももし大丈夫なら、見せて欲しいなって思ったんだ」
断られるかもしれないけどと控え目にお願いを口にしたアキトに、ケンさんはむしろ大喜びでスクッとすぐさま立ち上がった。
「え、俺の作品見てくれんの?わ、じゃあこっち来て、こっち!」
躊躇のかけらも無いその様子からして、ケンさんはむしろ見て欲しいと思っていそうな反応だ。
「あ、ケンさん、もし良ければ俺も見せてもらっても良いか?」
アキトの横から慌ててそう声をかけた俺に、ケンさんは更に笑みを深くした。
「うん、もちろんだよ!ほらこっち!」
弾むように歩き出したケンさんが目指しているのは、どうやら廊下の隅にある布の前みたいだ。
ケンさんの背中を眺めながら追いかける俺達に、レイさんが申し訳なさそうに声をかけてきた。
「あー…あそこの布の奥が店に繋がってるんです。説明もせずにすみません」
自分の作品を見たいって言われたのが、よっぽど嬉しかったみたいですとレイさんはこそりと教えてくれた。
「レイさんが代わりに説明してくれたんだから、問題は無いさ」
「うん、見たいって言ったのは俺達だし」
「ありがとうございます」
こそこそと俺達がそんな事を話している間に布の前に辿り着いたケンさんは、パッとこちらを振り返った。
「こっちこっち」
ニコニコ笑顔で手招きされた俺たちは、慌ててケンさんに近づいていく。
「じゃじゃーん」
そんな声と共にケンさんはさっと布を引いてくれたが、店の中は薄暗くて残念ながら何も見えなかった。
店の中が暗い上につい先ほどまで明るい部屋にいたから、俺達の目が慣れていないせいだろう。反応のない俺たちに一瞬だけ不思議そうな顔をしたケンさんは、ちらりと店の中へと視線を向けた。
「あーそっか。ちょっとだけここで待っててねー」
ケンさんはそう言うと、スタスタと慣れた様子で迷いなく真っ暗な部屋の中へと入って行く。
ほどなくして部屋中に魔道具の明かりがともった。外から店をみた時の印象と同じ赤と黒基調のテーブルや棚の上には、ずらりと細かな彫刻の施された木彫りが並んでいる。
「うわぁーすごい量!これ全部ケンが?」
「うん、そうだよ。全部俺が作ったやつ」
自慢げな声を聞きながら、アキトと俺はまじまじと木彫りをみつめた。
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
過労死転生、辺境で農業スローライフのはずが、不愛想な元騎士団長を餌付けして溺愛されてます
水凪しおん
BL
「もう、あくせく働くのは絶対に嫌だ!」
ブラック企業で過労死した俺、ユキナリが神様から授かったのは、どんな作物も育てられ、どんな道具にもなるチートスキル【万能農具】。念願のスローライフを送るため、辺境の荒れ地でのんびり農業を始めたはずが……出会ってしまったのは、心を閉ざした無愛想な元騎士団長・レオンハルト。俺の作るあったか料理に胃袋を掴まれ、凍てついた心が徐々に溶けていく彼。もふもふの番犬(黒狼)も加わって、穏やかな日々は加速していく。――収穫祭の夜、酔った勢いのキスをきっかけに、彼の独占欲に火をつけてしまった!?
「お前は、俺だけのものだ」
不器用で、でもどこまでも優しい彼の激しい愛情に、身も心も蕩かされていく。
辺境の地でのんびり農業をしていただけなのに、いつの間にか不愛想な元騎士団長の胃袋と心を射止めて、国まで動かすことになっちゃいました!? 甘々で時々ほろ苦い、異世界農業スローライフBL、ここに開幕!
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。