920 / 1,561
919.読書会
ウェルマール領主城に滞在してから五日目には、ジルさんとキースくん、それにハルと一緒に読書会を開催する事になった。
俺も本を読むのは好きだって言いきれるけど、読書会なんてした事がないんだよね。
具体的には一体何をするんだろう?
楽しめるかなと始まる前は少しだけ心配だったんだけど、いざ始まってしまえばとっても楽しい時間だった。
ハルの家族のいう読書会というのは、まずそれぞれが好きな本を何冊かずつ持ち寄って部屋の棚に置くところから始まる。
誰が持ってきた本かは、その時点では秘密なんだよね。受け取って棚に置いてくれるのはメイドさん達だから、本当に誰の本かは分からないんだ。
棚を見て回ってもし気になるものがあったら、とりあえず最初の数ページだけ読んでみるんだ。
それでもしもっとちゃんと読みたいと思った本があったら、持ち主と交渉して貸し借りするんだって。
この世界では本が高価だから、辺境領ではこうやってたくさんの本に触れられるようにしてるらしい。
正直貴族かつ領主一家の人なら、本ぐらいはポンポン買えるだろうけどね。でもこうやって貸し借りするのを楽しんでいるみたいだ。
「アキトさん、気になる本はありましたか?」
ある程度の時間が過ぎた所で、俺にそう声をかけてくれたのはジルさんだ。
「あ、俺はこれがちゃんと読みたいなと思いました」
手あたり次第に何冊か読んでみたんだけど、特に俺が気に入ったのは薬草採取を趣味としているすこし変わった商人さんが主人公のお話だ。
「ああ、シオーヌの薬草探索ですね。私の本です」
これ、ジルさんの本なのか。
ちょっと目を通した序盤だけでも、知ってる薬草の名前がいくつか出てきたんだよね。しかもハルに聞いた葉の形とか、採取の仕方まできっちり合ってる。
もしかして、これって実在してる薬草をきちんと調べて書いてるのかな?
「あの…薬草の説明がすっごく細かいんですけど…これってもしかして全部実在の薬草なんですか?」
「ええ、実在している薬草しか登場しないように、こだわって書かれている作品なんですよ」
じゃあ読むだけで薬草の勉強にもなるって事か。
主人公の商人シオーヌさんは特に戦闘が得意なわけでもないのに、珍しい薬草があると聞けばどんな危険な場所にも飛び込んで行ってしまう。凄腕の護衛の兄弟からは、いつももっと自分の身の安全を考えろと怒られている。
でもごめんごめんと謝りながら、また繰り返すんだけどね。
ずっと笑顔を浮かべていて楽しそうに薬草について語る姿が、不思議と憎めない魅力的なキャラだ。
「この本って、薬草の勉強にもなりそうですね」
「なると思いますよ。実際私も勉強になりましたから」
ふふと笑ったジルさんは、ぜひ読んでみてくださいねと笑顔で本を貸し出してくれた。
ハルが選んだ本は、どうやらキースくんの秘蔵の魔物図鑑だったみたいだ。
「これは特に寒い地域の魔物について書かれてるんだ」
この辺りでは滅多に出てこない魔物も多いんだけど、知っておくのは良い事でしょう?と笑ったキースくんの頭を、ハルの手が優しく撫でている。
「借りて良いのか?」
「うんっ!読んでみて!もし見た事のある魔物がいたら僕に教えてね」
「ああ、もちろんだ」
俺の持ってきたセスミアの旅行手記の続編は、前作が大好きだというキースくんが大興奮で貸してくださいと言ってくれた。
ちなみにジルさんは、ハルの持ってきていた入手困難な素材が載った本を嬉々として借りてたよ。自分の隊で手に入れた素材を、上手く売りさばけそうだと笑ってた。
それから、ジルさんが用意してくれていた読みやすい短編を全員で読んで、感想を言い合ったりもしたよ。
ラスさんが腕を振るった飲み物やお菓子、軽食まで用意されていたから、まるでお茶会みたいなのんびりとした時間だった。
それにしてもジルさんの頭が良いのは知ってたけど、キースくんも驚くほど頭の回転が早いんだな。こどもだって事をつい忘れてしまいそうなぐらい、しっかりとした感想だった。
うん、さすがハルの兄弟だな。
会が終わりかけの頃にはウィリアムさんも来てくれた。
「ジル、俺間に合った?」
「…もうそろそろ終わりにする時間ですよ」
「もうそろそろって事はつまり…ぎりぎりで間に合ったんだな!」
パッと笑顔になったウィリアムさんに、まったくとジルさんは苦笑してた。
でも皆であれこれと本の話をするのは、本当に楽しかった。
俺も本を読むのは好きだって言いきれるけど、読書会なんてした事がないんだよね。
具体的には一体何をするんだろう?
楽しめるかなと始まる前は少しだけ心配だったんだけど、いざ始まってしまえばとっても楽しい時間だった。
ハルの家族のいう読書会というのは、まずそれぞれが好きな本を何冊かずつ持ち寄って部屋の棚に置くところから始まる。
誰が持ってきた本かは、その時点では秘密なんだよね。受け取って棚に置いてくれるのはメイドさん達だから、本当に誰の本かは分からないんだ。
棚を見て回ってもし気になるものがあったら、とりあえず最初の数ページだけ読んでみるんだ。
それでもしもっとちゃんと読みたいと思った本があったら、持ち主と交渉して貸し借りするんだって。
この世界では本が高価だから、辺境領ではこうやってたくさんの本に触れられるようにしてるらしい。
正直貴族かつ領主一家の人なら、本ぐらいはポンポン買えるだろうけどね。でもこうやって貸し借りするのを楽しんでいるみたいだ。
「アキトさん、気になる本はありましたか?」
ある程度の時間が過ぎた所で、俺にそう声をかけてくれたのはジルさんだ。
「あ、俺はこれがちゃんと読みたいなと思いました」
手あたり次第に何冊か読んでみたんだけど、特に俺が気に入ったのは薬草採取を趣味としているすこし変わった商人さんが主人公のお話だ。
「ああ、シオーヌの薬草探索ですね。私の本です」
これ、ジルさんの本なのか。
ちょっと目を通した序盤だけでも、知ってる薬草の名前がいくつか出てきたんだよね。しかもハルに聞いた葉の形とか、採取の仕方まできっちり合ってる。
もしかして、これって実在してる薬草をきちんと調べて書いてるのかな?
「あの…薬草の説明がすっごく細かいんですけど…これってもしかして全部実在の薬草なんですか?」
「ええ、実在している薬草しか登場しないように、こだわって書かれている作品なんですよ」
じゃあ読むだけで薬草の勉強にもなるって事か。
主人公の商人シオーヌさんは特に戦闘が得意なわけでもないのに、珍しい薬草があると聞けばどんな危険な場所にも飛び込んで行ってしまう。凄腕の護衛の兄弟からは、いつももっと自分の身の安全を考えろと怒られている。
でもごめんごめんと謝りながら、また繰り返すんだけどね。
ずっと笑顔を浮かべていて楽しそうに薬草について語る姿が、不思議と憎めない魅力的なキャラだ。
「この本って、薬草の勉強にもなりそうですね」
「なると思いますよ。実際私も勉強になりましたから」
ふふと笑ったジルさんは、ぜひ読んでみてくださいねと笑顔で本を貸し出してくれた。
ハルが選んだ本は、どうやらキースくんの秘蔵の魔物図鑑だったみたいだ。
「これは特に寒い地域の魔物について書かれてるんだ」
この辺りでは滅多に出てこない魔物も多いんだけど、知っておくのは良い事でしょう?と笑ったキースくんの頭を、ハルの手が優しく撫でている。
「借りて良いのか?」
「うんっ!読んでみて!もし見た事のある魔物がいたら僕に教えてね」
「ああ、もちろんだ」
俺の持ってきたセスミアの旅行手記の続編は、前作が大好きだというキースくんが大興奮で貸してくださいと言ってくれた。
ちなみにジルさんは、ハルの持ってきていた入手困難な素材が載った本を嬉々として借りてたよ。自分の隊で手に入れた素材を、上手く売りさばけそうだと笑ってた。
それから、ジルさんが用意してくれていた読みやすい短編を全員で読んで、感想を言い合ったりもしたよ。
ラスさんが腕を振るった飲み物やお菓子、軽食まで用意されていたから、まるでお茶会みたいなのんびりとした時間だった。
それにしてもジルさんの頭が良いのは知ってたけど、キースくんも驚くほど頭の回転が早いんだな。こどもだって事をつい忘れてしまいそうなぐらい、しっかりとした感想だった。
うん、さすがハルの兄弟だな。
会が終わりかけの頃にはウィリアムさんも来てくれた。
「ジル、俺間に合った?」
「…もうそろそろ終わりにする時間ですよ」
「もうそろそろって事はつまり…ぎりぎりで間に合ったんだな!」
パッと笑顔になったウィリアムさんに、まったくとジルさんは苦笑してた。
でも皆であれこれと本の話をするのは、本当に楽しかった。
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。