生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
924 / 1,561

923.今日の予定は

 グレースさんが帰ってきたら、精一杯魔法の披露を頑張ろう。

 俺がそう決意したのが、ちょうど一週間前。

 すぐに帰ってくるからと宣言してでかけていったグレースさんは、一週間が過ぎた今もまだ残念ながら帰って来てない。

「うーん…思っていたよりも…かなり帰りが遅いな」

 重々しく響いたケイリーさんの言葉に、すぐにファーガスさんがこくりと頷いた。

「本当に緊急で対処が必要な事態ならうちにも連絡が入るから、魔物の出現や襲撃を受けたなどでは無いんだろうが…」
「うん、今の所どちらの情報も入ってきてないね。何があって呼び出されたのかも気になってるけど…」

 さすがに王家の情報は入り難いんだよなーとウィリアムさんは、さらりとそう続けた。王家の情報も入り難いだけで入手できないわけじゃなのか…。

「そうだよな…ううん…心配だな」

 ケイリーさんは眉間にぎゅっとしわを寄せて、ぽつりとそう呟いた。大事な伴侶であるグレースさんだもんね、そりゃあ心配にもなるよね。

「ああ、確かに心配だな…」
「うん、心配だー」
「しんぱいです」
「ああ、そうだな。心配だ」

 ファーガスさんとウィリアムさんの言葉に、キースくんとハルも一緒になって同意している。

 いやもちろん俺も心配はしてるんだけどさ、グレースさんならどんな事態でも何とかできそうって思ってしまうのは何でだろうな。

 そんな事をぼんやりと考えていると、ケイリーさんと四兄弟が声を重ねて呟いた。――王都で暴れないか心配だと。

 あ、あれ?俺の思っている心配の方向性と違うね?

「えっと…グレースさんが心配なんじゃないんですか?」
「グレースなら、王都で何が起きていたとしても必ず生きてここに帰ってくるからな」

 そう言いきったケイリーさんの言葉には、グレースさんへの深い信頼と愛情があった。

「ここで遠い王都の事を心配していても、仕方ないか」
「ああ、どうせなるようにしかならないしねー」
「うん、きっと大丈夫だよ!」

 気持ちを切り替えたのかそう言って笑うハルの兄弟たちは、やっぱりハルに似てるなーと思う。すごく前向きな所とかがね。



「アキトくん、今日の予定はどうなってるんだい?」

 話が一段落した所でに投げかけられたケイリーさんの質問に、俺は思わずハルに視線を向けた。

「えっと…まだ何も決まってない…よね?」
「ああ、辺境でしたいなって言ってた事は、だいたい出来たからな…」
「うん」

 それじゃあ何をしたい?って聞かれても、咄嗟にこれだという予定は出てこない。そろそろギルドの依頼を受けて街の外にも出てみたいって言ったら、危険だって怒られるだろうか。

 そんな事を考えていた俺に、ケイリーさんは笑顔で続けた。

「予定が決まっていないなら、ダンジョンに行くのはどうだろう?」
「ダンジョン…」

 領都ウェルマールの近くには、いくつかのダンジョンが存在している。

 だからこそ魔物が溢れて行き着く暇もなく襲い掛かってくる、魔物の暴走スタンピードが起きやすい場所だったんだよね。

 それは辺境領に来る前にハルに聞いてちゃんと勉強したから、俺も知ってる。

 でも、ダンジョンって、こんなに気軽にお勧めされるような場所だったっけ?一人や二人で入る場所じゃないとか、危険と隣り合わせの場所だとか色々怖い話を聞いたんだけど。

「…父さんが言ってるのは、どこのダンジョンの事だ?」

 ダンジョンは危険だからと断るのかと思っていたハルも、すぐに拒否するわけでもなくそう尋ねた。

「そうだな…最初はオ・アレシュのダンジョンが良いと思うんだが」
「ああ、あの湖を見せたいのか」

 ハルはオ・アレシュのダンジョンなら良いかもなと何故か乗り気だ。

「えっと…?」
「ああ、ごめん、アキト。ダンジョンの危険性を覚えて欲しくて、つい怖がらせるような話ばかりしたかもしれない」

 ハルの説明によると、オ・アレシュのダンジョンは20階層までしかない小規模なものらしい。14階層目には湖があって、景色も良いし魚が取れる場所なんだって。

 以前ラスさんが作ってくれた料理に使われていた魚も、オ・アレシュのダンジョン産らしい。

「それはぜひ行ってみたい!」

 魚も大好きな俺が、食いつかないわけが無いよね。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。