925 / 1,561
924.オ・アレシュのダンジョン
オ・アレシュのダンジョンは、この街の壁を出てしばらく街道沿いを歩くだけで着くぐらいの距離に存在しているらしい。
なんか想像以上に街から近い距離にあるんだね。もっと山の奥とか森の奥とかに行かないと、入口は無いと勝手に思い込んでたよ。
ああ、だから魔物の氾濫が起きた時が危ないのか。
ハルによると途中で魔物に遭遇する可能性はあるらしいけど、街道沿いの魔物は優先的に倒されているからそれほど危険な道というわけでもないらしい。
むしろ街道から反れて森に入るよりは安全だからと、冒険者になりたてのうちはオ・アレシュのダンジョンで鍛えるというのがこの辺りの普通らしい。
「ダンジョン…!」
「せっかくだし、アキトが気になるなら、これからすぐに向かおうか?」
そうニコニコ笑顔で優しく提案してくれたハルに、俺はすぐさま頷いた。
わーい、初のダンジョンだーとワクワクしながら立ち上がろうとした所で、不意にウィリアムさんがはーいと元気に手をあげた。
「ねえ、そのダンジョン探索、俺も一緒に行きたいなー?」
今日は仕事が休みなんだけど、残念ながらジルは仕事だから退屈なんだよねーと、本当につまらなさそうな顔で続けた。
「ふむ…それなら、私も急ぎの書類仕事は既に終わったから、同行したいな」
楽しそうだなと呟いたファーガスさんも、私も一緒に行きたいと主張し始める。もう急ぎの書類仕事が終わってるとか…仕事が早いな。
「それは良いな」
後ろから聞こえてきた声に、え?と振り返れば、そこではケイリーさんが笑顔を浮かべていた。
え、ケイリーさんも来るの?あの本の主人公が?一緒にダンジョンに?
「久しぶりにダンジョンに行くのも楽しそうだ」
「まさか全員で来るつもりですか?」
呆れ顔のハルは、でも来るなとは言わなかった。
うーん、ケイリーさんと、ファーガスさん、それにウィリアムさんも一緒に、オ・アレシュのダンジョン探索か。
あの本の中でたくさん読み込んだケイリーさんの戦い方は、できれば近くで見てみたいと思う。ファン心理ってやつだよね。
それにファーガスさんとウィリアムさんも、絶対に二人とも強いもんな。
一緒に行ったらきっと楽しいだろうし勉強にもなるんだろうなーとは思うんだけど、心配な事がひとつだけあるんだよね。
「あー…あの…一緒にダンジョンに入ったら、もちろん途中で魔物と戦う事になりますよね?」
「ああ、そうだね」
「大丈夫だ。オ・アレシュのダンジョンの中には、そこまで強い魔物は出ない」
「そうそう。ハルがいれば20階層まで余裕で潜れるのに、俺達も行くなら過剰戦力なぐらいだよ」
トライプール周辺に出る魔物とそう変わらないからと優しく教えてくれるウィリアムさんに、俺はそうじゃないんですとゆるりと首を振った。
「皆さんと一緒にダンジョンに行くのは楽しそうですが…俺が魔法を使うのを見てしまったら、それは魔法披露にはあたらないんでしょうか?」
既に俺の魔法を知ってるハルはさすがに例外だと思うんですけどとそう付け加えれば、全員揃ってぐっと黙り込んだ。
もしただの俺の考えすぎなら良いんだけど、一緒にダンジョン探索するのも魔法披露だってグレースさんが受け止めたら、約束を破った事になっちゃうからね。
「…はぁ…うん、そうだな」
しばらく経ってから、ぽつりとそう呟いたのはケイリーさんだ。
「ああ、母ならきっと、それは魔法披露だと言うだろうな」
ファーガスさんは、いや、きっとじゃなくて確実に言うなと疲れた様子で続けた。
「アキトくん、教えてくれてありがとう!危ない所だったよー」
ウィリアムさんは、助かったとしきりにお礼を言ってくる。
うん、やっぱり一緒にダンジョンに行くのは、グレースさん的には駄目な感じか。念のためぐらいの気持ちだったけど、確認してみて良かった。
「アキト、母との約束を気にかけてくれてありがとう」
多分母は怒るよりも拗ねると思うから気づいてくれて良かったと、ハルは優しく笑みを浮かべて俺の頭を撫でてくれた。グレースさん、拗ねるんだ。
「いや、拗ねたグレースもそれはもう可愛いんだぞ?普段と違ってすこしこどもっぽくなってたまらない可愛さがあるんだ」
さらりとそう惚気てみせたケイリーさんは、だがと言葉を続けた。
「許してもらえるまでが非常ーに長いんだ…本当にありがとう、アキトくん」
「い、いえ…」
俺の言葉のおかげで助かった助かったと言い合う皆に、俺は苦笑しながら頷く事しかできなかった。
なんか想像以上に街から近い距離にあるんだね。もっと山の奥とか森の奥とかに行かないと、入口は無いと勝手に思い込んでたよ。
ああ、だから魔物の氾濫が起きた時が危ないのか。
ハルによると途中で魔物に遭遇する可能性はあるらしいけど、街道沿いの魔物は優先的に倒されているからそれほど危険な道というわけでもないらしい。
むしろ街道から反れて森に入るよりは安全だからと、冒険者になりたてのうちはオ・アレシュのダンジョンで鍛えるというのがこの辺りの普通らしい。
「ダンジョン…!」
「せっかくだし、アキトが気になるなら、これからすぐに向かおうか?」
そうニコニコ笑顔で優しく提案してくれたハルに、俺はすぐさま頷いた。
わーい、初のダンジョンだーとワクワクしながら立ち上がろうとした所で、不意にウィリアムさんがはーいと元気に手をあげた。
「ねえ、そのダンジョン探索、俺も一緒に行きたいなー?」
今日は仕事が休みなんだけど、残念ながらジルは仕事だから退屈なんだよねーと、本当につまらなさそうな顔で続けた。
「ふむ…それなら、私も急ぎの書類仕事は既に終わったから、同行したいな」
楽しそうだなと呟いたファーガスさんも、私も一緒に行きたいと主張し始める。もう急ぎの書類仕事が終わってるとか…仕事が早いな。
「それは良いな」
後ろから聞こえてきた声に、え?と振り返れば、そこではケイリーさんが笑顔を浮かべていた。
え、ケイリーさんも来るの?あの本の主人公が?一緒にダンジョンに?
「久しぶりにダンジョンに行くのも楽しそうだ」
「まさか全員で来るつもりですか?」
呆れ顔のハルは、でも来るなとは言わなかった。
うーん、ケイリーさんと、ファーガスさん、それにウィリアムさんも一緒に、オ・アレシュのダンジョン探索か。
あの本の中でたくさん読み込んだケイリーさんの戦い方は、できれば近くで見てみたいと思う。ファン心理ってやつだよね。
それにファーガスさんとウィリアムさんも、絶対に二人とも強いもんな。
一緒に行ったらきっと楽しいだろうし勉強にもなるんだろうなーとは思うんだけど、心配な事がひとつだけあるんだよね。
「あー…あの…一緒にダンジョンに入ったら、もちろん途中で魔物と戦う事になりますよね?」
「ああ、そうだね」
「大丈夫だ。オ・アレシュのダンジョンの中には、そこまで強い魔物は出ない」
「そうそう。ハルがいれば20階層まで余裕で潜れるのに、俺達も行くなら過剰戦力なぐらいだよ」
トライプール周辺に出る魔物とそう変わらないからと優しく教えてくれるウィリアムさんに、俺はそうじゃないんですとゆるりと首を振った。
「皆さんと一緒にダンジョンに行くのは楽しそうですが…俺が魔法を使うのを見てしまったら、それは魔法披露にはあたらないんでしょうか?」
既に俺の魔法を知ってるハルはさすがに例外だと思うんですけどとそう付け加えれば、全員揃ってぐっと黙り込んだ。
もしただの俺の考えすぎなら良いんだけど、一緒にダンジョン探索するのも魔法披露だってグレースさんが受け止めたら、約束を破った事になっちゃうからね。
「…はぁ…うん、そうだな」
しばらく経ってから、ぽつりとそう呟いたのはケイリーさんだ。
「ああ、母ならきっと、それは魔法披露だと言うだろうな」
ファーガスさんは、いや、きっとじゃなくて確実に言うなと疲れた様子で続けた。
「アキトくん、教えてくれてありがとう!危ない所だったよー」
ウィリアムさんは、助かったとしきりにお礼を言ってくる。
うん、やっぱり一緒にダンジョンに行くのは、グレースさん的には駄目な感じか。念のためぐらいの気持ちだったけど、確認してみて良かった。
「アキト、母との約束を気にかけてくれてありがとう」
多分母は怒るよりも拗ねると思うから気づいてくれて良かったと、ハルは優しく笑みを浮かべて俺の頭を撫でてくれた。グレースさん、拗ねるんだ。
「いや、拗ねたグレースもそれはもう可愛いんだぞ?普段と違ってすこしこどもっぽくなってたまらない可愛さがあるんだ」
さらりとそう惚気てみせたケイリーさんは、だがと言葉を続けた。
「許してもらえるまでが非常ーに長いんだ…本当にありがとう、アキトくん」
「い、いえ…」
俺の言葉のおかげで助かった助かったと言い合う皆に、俺は苦笑しながら頷く事しかできなかった。
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。