生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
927 / 1,561

926.初めてのダンジョン

 周りの人達のたくましさに圧倒されているうちにあっさりと辿り着いたオ・アレシュのダンジョンへの入口は、まるで普通の洞窟のような見た目をしていた。

 もし門番のように武器を持って警戒している衛兵さん達が立っていなかったら、もし入口の横に詰所のような小さな建物がなかったら、もしかしたら気づかなかったかもしれない。

 そう思ってしまうぐらいには、目立たない入口だった。

「ここがダンジョンの入口…?」
「ああ、そうだよ」

 さっと周りを見てみれば、これからダンジョンに入るのか荷物を整えている冒険者の集団や、今まさに洞窟から外へと出てきたらしい冒険者達の姿が目に入った。

 衛兵さん達は出てきた人達にダンジョンの中の様子を尋ねたり、入って行く人達に気をつけろよと声をかけたりと忙しそうだ。

「アキト、それじゃあ行こうか」
「うん!行こう!」

 今回は初のダンジョンだから、今日の俺の目標はひとつだけ。

 ハルに迷惑をかけないように、しっかりと気をつけながら進むこと!

 いくら危険が少ないって言われてる場所でも、油断はしちゃいけない。

 ちゃんと警戒をし続けないとなと気合を入れ直してダンジョンに足を踏み入れたんだけど、浅い階層は湧いてくる魔物よりもむしろ冒険者の方が多いような状態だった。

 湧いた瞬間にささっと近くにいた冒険者によって倒されてしまうから、どんな魔物がいたのかもよく見えない。

「なんか、想像と違う…」

 思わずそう訴えれば、ハルは苦笑しながら答えてくれた。

「ここは魔物がそれほど強くないから、むしろダンジョンの外よりも安全かもしれないんだ」

 だから駆け出しの冒険者や他の土地から流れてきた冒険者の、腕慣らしの場所として人気があるダンジョンらしい。

「そうなんだ」

 そう言われて周りをよくよく観察してみれば、確かにまだ初々しい冒険者が多い気がする。

 中には俺でも分かるぐらい明らかに強そうな人も何人かいるんだけど、そういう人は手は一切出さずに静かに周りを見て危険が無いか観察しているみたいだ。

 もしかしたらあの人達は、衛兵さんとか騎士さんとかなのかもしれないな。

 そんな事を考えながら、俺は周りの様子をぐるりと見回してみた。

「うーん…」
「どうしたの?」
「これってさ、ハルの家族のみんなと来てたら、本当に過剰戦力だったんだね…」

 思わずぼそりとそう呟いてしまった俺に、ハルはブハッと思いっきり噴き出した。

 だってこんな初心者の腕慣らしの場所に、英雄と騎士団長二人って。しかもハルも一緒にいるんだよ?絶対に過剰戦力だったよ。

 グレースさんがいないのに魔法披露は駄目じゃないって理由だったけど、もしかしたら断って良かったのかもしれない。

「10階層まではこういう状態だから、どんどん進もうか」

 まだ少し笑っているハルに促されて、俺は発見したばかりの階段へと足を進めた。

 最初に階段を発見した時は、ここは本当にダンジョンなんだってワクワクしたよ。ゲームで出てくるダンジョンそのままだー!ってテンションが上がったんだ。

 まるで森の中にいるかのような階層でも、ごつごつとした鉱山のような階層でも、階段は普通に石で作られてるのがちょっとだけ不思議だ。

 まあダンジョンだからそういうものだと言われたら、それまでなんだけど。



 魔物への警戒は一応は続けてるけど、相変わらず冒険者が多いから差し迫った危険は無さそうだ。となるとダンジョンの事、もっと知りたくなってくるよね。

「ね、ハル。ここ以外のダンジョンってどんな場所なの?」

 好奇心に負けて尋ねてみれば、ハルはそうだなと考えながら口を開いた。

「ここは20階層までなんだが、もう一つは120階層まであるんだ」 
「え、一気に6倍の深さになるの?」

 驚いてハルを見返せば、しかも魔物もぐんっと強くなるよと教えてくれた。

「ちなみに、もっと深いダンジョンもあるよ」

 悪戯っぽく笑ったハルに、俺はどきどきしながらそこはいったい何階層まであるのと尋ねてみた。

「現時点で212階層までは踏破されているんだが、底はどこまであるかまだ分かっていないんだ」
「212階層!?」

 それはもう、俺には想像することもできないぐらいの深さだね。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。