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941.サイクさんの魔法
ハルの言葉に反論できなかったのか、サイクさんは苦笑しながらも魚串を受け取ってくれた。
「分けてもらって悪いな。ありがとよ」
「いえ、こちらこそ。教えてくれて、捌いてくれてありがとうございます」
「そうだな、礼を言いたいのはこちらの方だ。ありがとう」
三人でお礼を言い合ってから、俺達はひとまず目の前にある美味しそうな魚串にかぶりつく事にした。
冷めてしまっても嫌だし、何より抗えない香りがずっとしてるんだよね。
「「いただきます」」
声を揃えた俺達をサイクさんはちらりと見たけど、ああ食前の挨拶かと納得した様子で視線を反らした。
サイクさんはそのまま、そっと片手をあげまるで拝むように顔の前に持ってくる。こういう動きははじめてみたけど、多分それがサイクさんの出身地の食前の挨拶なんだろうな。
三人で目を合わせてタイミングをはかり、揃って口を開く。がぶりと思いっきり頬張れは、脂の乗った身の旨味がぶわりと口内に広がった。
「んー!すっごく美味しい!」
これはあれだ、脂の乗った鯖っぽい味だ。
「ああ、まさかここまで美味いとは…」
「俺も久しぶりに食うんだが…これは本当に美味いな。ここまでちゃんと脂の乗ったやつは珍しいぞ?」
魚釣りが趣味だと言いきったサイクさんですら驚くほどの美味しさなのか。さすがハルと思わず目を輝かせて見つめたら、ハルは照れくさそうにくしゃりと笑みを浮かべた。
あっという間に一本を食べきって、どうせなら良い焼き加減のうちにともう一本にも手を伸ばす。俺だけじゃなくてハルとサイクさんも同じ動きをしてたから、この美味しさには誰も抗えないのかもしれない。
「はー…美味しかった…」
「美味かったな」
「本当にな」
あっという間に無くなってしまったな。ちょっと残念に思ってしまうぐらいの美味しさだった。
「あ、そうだ、次はこっちのパースのパン屋のしょくパン食べてみねぇか?」
「あ、食べてみたいです!」
「そうだな、そうさせてもらおうか」
サイクさんはパンを配ろうとして、あ、と呟くとちょっと待ってくれと声をあげた。
一体どうしたんだろうと俺とハルが思っている間に、サイクさんはパッと一瞬で魔力を練り上げると口内でブツブツと何かを唱えた。
魔法を使おうとしていると思った時には、俺とハル、そしてサイクさんの持っている皿の上が綺麗になっていた。
「これでよし。さすがに魚の香りがついた皿にパンは嫌だろ?」
さらりとそう言うと、サイクさんは俺とハルの綺麗になったお皿の上に食パンを乗せてくれた。
「…斧使いなら前衛だと思っていたんだが、魔法も使えるんだな?」
ハルは手渡された美味しそうなパンよりも、ついさっきのサイクさんの素早い魔法の発動の方に興味を引かれているみたいだ。
「ハルだって使えるだろう?ただの生活魔法だぞ?」
「確かに使うことはできるが、あれほどの早さで魔力を練って発動して、しかも対象が離れた場所にある三枚の皿っていうのは…俺には無理だな」
そう言われると確かにすごいな。
「まあ、お前らなら良いか。どうせ話すつもりだったしな。さっき言ってたムレングのダンジョンの話なんだがな」
小声になったサイクさんは、やれる事が多い方が生き残れる場所なんだと教えてくれた。
「俺はまあ斧での前衛と、少しの生活魔法、後は何種類かの攻撃魔法ぐらいだがな。うちの他のメンバーはすごいんだぞ?」
得意げに笑ったサイクさんは、パーティーメンバーの事を心から信頼してるんだな。いやまあ、信頼してない相手とそんな危険なダンジョンの探索なんて出来る筈がないか。
「うちのパーティーの弓使いは、弓を射ながら攻撃魔法だってバンバン使うんだよ」
「同時にですか?」
「ああ、弓で狙いながら魔力を練るんだと、器用だよな」
ちなみに前衛の軸である盾使いさんはその弓使いさんに弟子入りしていて、最近では盾の隙間から弓を使って狙ったりしているらしい。
でも一番驚いたのは、リーダーである後衛の魔法使いさんが、最近では盾を使えるように鍛えているっていう話だ。
「はー魔法使いなのに…盾…。俺絶対盾使いながら魔法発動できないと思う」
「アキトは魔法使いなのか?」
「ええ、魔法使いです」
すごいな憧れると呟いた俺に、サイクさんは少しだけ眉をひそめた。
「あのな、ああいうのは必要に応じて仕方なく覚えてるだけなんだよ」
だからアキトが無理して覚えようとするってのは違うぞと、真剣な表情で忠告してくれる。
「忠告ありがとうございます。あの…絶対に無理だから憧れるってだけで、自分ができるとは思ってません。そっちのダンジョンに潜る予定もありませんし」
「そうか、なら良かった」
「分けてもらって悪いな。ありがとよ」
「いえ、こちらこそ。教えてくれて、捌いてくれてありがとうございます」
「そうだな、礼を言いたいのはこちらの方だ。ありがとう」
三人でお礼を言い合ってから、俺達はひとまず目の前にある美味しそうな魚串にかぶりつく事にした。
冷めてしまっても嫌だし、何より抗えない香りがずっとしてるんだよね。
「「いただきます」」
声を揃えた俺達をサイクさんはちらりと見たけど、ああ食前の挨拶かと納得した様子で視線を反らした。
サイクさんはそのまま、そっと片手をあげまるで拝むように顔の前に持ってくる。こういう動きははじめてみたけど、多分それがサイクさんの出身地の食前の挨拶なんだろうな。
三人で目を合わせてタイミングをはかり、揃って口を開く。がぶりと思いっきり頬張れは、脂の乗った身の旨味がぶわりと口内に広がった。
「んー!すっごく美味しい!」
これはあれだ、脂の乗った鯖っぽい味だ。
「ああ、まさかここまで美味いとは…」
「俺も久しぶりに食うんだが…これは本当に美味いな。ここまでちゃんと脂の乗ったやつは珍しいぞ?」
魚釣りが趣味だと言いきったサイクさんですら驚くほどの美味しさなのか。さすがハルと思わず目を輝かせて見つめたら、ハルは照れくさそうにくしゃりと笑みを浮かべた。
あっという間に一本を食べきって、どうせなら良い焼き加減のうちにともう一本にも手を伸ばす。俺だけじゃなくてハルとサイクさんも同じ動きをしてたから、この美味しさには誰も抗えないのかもしれない。
「はー…美味しかった…」
「美味かったな」
「本当にな」
あっという間に無くなってしまったな。ちょっと残念に思ってしまうぐらいの美味しさだった。
「あ、そうだ、次はこっちのパースのパン屋のしょくパン食べてみねぇか?」
「あ、食べてみたいです!」
「そうだな、そうさせてもらおうか」
サイクさんはパンを配ろうとして、あ、と呟くとちょっと待ってくれと声をあげた。
一体どうしたんだろうと俺とハルが思っている間に、サイクさんはパッと一瞬で魔力を練り上げると口内でブツブツと何かを唱えた。
魔法を使おうとしていると思った時には、俺とハル、そしてサイクさんの持っている皿の上が綺麗になっていた。
「これでよし。さすがに魚の香りがついた皿にパンは嫌だろ?」
さらりとそう言うと、サイクさんは俺とハルの綺麗になったお皿の上に食パンを乗せてくれた。
「…斧使いなら前衛だと思っていたんだが、魔法も使えるんだな?」
ハルは手渡された美味しそうなパンよりも、ついさっきのサイクさんの素早い魔法の発動の方に興味を引かれているみたいだ。
「ハルだって使えるだろう?ただの生活魔法だぞ?」
「確かに使うことはできるが、あれほどの早さで魔力を練って発動して、しかも対象が離れた場所にある三枚の皿っていうのは…俺には無理だな」
そう言われると確かにすごいな。
「まあ、お前らなら良いか。どうせ話すつもりだったしな。さっき言ってたムレングのダンジョンの話なんだがな」
小声になったサイクさんは、やれる事が多い方が生き残れる場所なんだと教えてくれた。
「俺はまあ斧での前衛と、少しの生活魔法、後は何種類かの攻撃魔法ぐらいだがな。うちの他のメンバーはすごいんだぞ?」
得意げに笑ったサイクさんは、パーティーメンバーの事を心から信頼してるんだな。いやまあ、信頼してない相手とそんな危険なダンジョンの探索なんて出来る筈がないか。
「うちのパーティーの弓使いは、弓を射ながら攻撃魔法だってバンバン使うんだよ」
「同時にですか?」
「ああ、弓で狙いながら魔力を練るんだと、器用だよな」
ちなみに前衛の軸である盾使いさんはその弓使いさんに弟子入りしていて、最近では盾の隙間から弓を使って狙ったりしているらしい。
でも一番驚いたのは、リーダーである後衛の魔法使いさんが、最近では盾を使えるように鍛えているっていう話だ。
「はー魔法使いなのに…盾…。俺絶対盾使いながら魔法発動できないと思う」
「アキトは魔法使いなのか?」
「ええ、魔法使いです」
すごいな憧れると呟いた俺に、サイクさんは少しだけ眉をひそめた。
「あのな、ああいうのは必要に応じて仕方なく覚えてるだけなんだよ」
だからアキトが無理して覚えようとするってのは違うぞと、真剣な表情で忠告してくれる。
「忠告ありがとうございます。あの…絶対に無理だから憧れるってだけで、自分ができるとは思ってません。そっちのダンジョンに潜る予定もありませんし」
「そうか、なら良かった」
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