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959. 【ハル視点】ルダリオン戦
「ああいう大型の空を飛ぶ魔物は、基本的に翼の付け根のあたりに魔力を集める場所があるんだ」
視線はルダリオンに向けたまま、落ち着いた声を意識して俺は説明を始めた。すこしでもアキトの役に立てる情報を伝えたい。
「羽の力だけで飛んでるわけじゃなくて、あの巨体を魔力を使って浮かせているって言えば分かりやすいかな。羽ばたいた瞬間に、一瞬だけ光ってるんだけど…分かる?」
じーっとルダリオンを観察していたアキトは、不意にはっとした様子で口を開いた。
「うん、あの左側の羽の付け根の淡く光ってる場所で合ってる?」
「ああ、そこだ。魔力を集める場所に攻撃を与えられれば、あの巨体を浮かせ続ける事はできなくなるんだ」
ちなみにルダリオンなら、アキトの得意な土魔法が一番相性が良いよ。あえて笑顔でそう伝えれば、アキトはすぐに頷いてくれた。
「分かった、ありがとう」
「ああ、頼むよアキト」
「うん」
A級の魔物を前にしているのに俺とアキトがこうしてのんびりと会話を交わせたのは、サイクさんのおかげだ。その場からは一歩も動いていないが、威圧したり殺気を飛ばしたりと器用にルダリオンの気を引き続けてくれた。
ルダリオンはこちらを攻撃すらしようとせず、ただその場で飛び続けているだけだったのは、おそらくサイクさんを警戒しての事だろう。
何の相談も無くそれをしてくれるんだから、本当に頼りになる人だ。
そんなサイクさんはアキトがちらりと視線を向ければ、無言ですっと斧を構えた。いつでも攻撃できる体勢は、今日出会ったばかりの俺たちを信じてこの場をまかせてくれるという意思表示だ。
アキトも何も言わず、真剣な表情で空を舞うルダリオンを見た。
俺はというと、アキトなら出来ると知っているから、ルダリオンが相手でも特に不安は感じていない。アキトが落としてくれたら、次は俺とサイクさんで攻撃だな。
構えた剣の柄をぎゅっと強く握り直す。ただそれだけのわずかな時間で、アキトは見事な土のつぶてを作り上げてみせた。
感心した様子のサイクさんの視線にも気づかずに、アキトは作りだしたつぶてをさらに改良し続けている。恐ろしいほどの集中力だ。
ぐんぐんと形を変えていたつぶては、細く尖った形状になってぴたりと動きを止めた。
この形は初めて見たな。今回は一点を狙うためにあえて細く尖るように作り上げたのか。さすがアキトだと褒めちぎりたい所だが、ここで集中を切らせたくは無い。
「羽ばたきなおした瞬間、一瞬だけ動きが止まる。そこを狙って」
必要な事だけを剣を構えながら告げれば、こくりと頷いたアキトはすーっと息を吸いながら狙いを定めた。
アキトの魔力で作り上げられたつぶてを危険だと判断したのか、ルダリオンは一気に高度をあげたが、アキトは構わずにつぶてを放った。
シュッと音を立てて放たれたつぶては、ルダリオンの左の翼の付け根淡く光る部位に寸分たがわず突き刺さった。途端に上がる恐ろしい鳴き声に、サイクさんは怯むでもなくニヤリと笑った。
「アキト、良い腕だな」
「ありがとうございます!」
叫び返しながら、アキトはもう一度魔力を練り始める。もしものために備えられるアキトを誇らしく思いながら、俺はルダリオンを睨んだ。
「ハル、爪の牽制を頼んで良いか?」
さすがにルダリオンを相手に、俺の持つ剣で致命傷は与えられない。それは分かっているから、サイクさんの提案に文句は無かった。
「ああ、とどめは頼む」
不規則に羽ばたきながら下りてきたルダリオンは、地面に落ちてからも戦意を失わなかった。器用に片脚で立ち上がり、もう片足の爪をかざして襲い掛かってくる。
それだけなら別に意外でもないんだが、前衛である俺とサイクさんを無視してアキトを狙おうとするとは思わなかった。
「アキトを狙うとは…」
ルダリオンの進む先に飛び込み、剣と爪をぶつけるようにして切り結ぶ。ルダリオンからすれば不意をつかれた形になった筈だが、一瞬にして対応し攻撃に転じてきた。
爪ごと叩ききるぐらいのつもりで攻撃しているのに、少しもダメージが入っていかない。俺の力ではやはり無理か。
それならと突進してこようとした相手の勢いを使って、ゴロリと地面に転がした。
サイクさんはその一瞬の隙を見逃さずに一気に距離を詰めると、そのまま巨大な斧を頭上にまで振り上げた。
首を狙った必殺の攻撃に、ギュワァァッと一鳴きしたルダリオンはそのまま動かなくなった。
「さすがだな」
まさか一撃で倒してしまうとは、さすがに思っていなかった。感嘆の声をあげた俺に、サイクさんはあっさりと首を振った、。
「いや、アキトがいなかったらそもそも攻撃が届いてねぇし、ハルがいなけりゃここまで楽にとどめはさせてねぇ」
だからすごいってのはこっちの台詞だと、サイクさんは楽し気に笑みを浮かべた。そんな事は無いと答えようとした所で、勢いよくこちらへと向かってくる気配に気が付いた。
「…待ってくれ、何か来る…魔物ではなさそうだが…」
気配からして人だとは思うが、それはあえて口にはしなかった。もしかしたら魔物を倒して油断した瞬間を狙う、厄介な盗賊の可能性もある。警戒しながら声を上げれば、アキトとサイクさんも驚きつつも警戒態勢に戻ってくれた。
「うわぁぁぁぁ!」
姿が見えるよりも先に、遠くから叫び声が聞こえてきた。徐々に近づいてくるその声に耳を澄ませる。
「頼むから誰も死んでませんように!あと街に飛び込んでませんように!!被害がでていませんようにー!!!」
あー、うん。まず間違いなく盗賊ではないな。不意を突くならともかく、こんなに賑やかに近づいてくる盗賊なんていない。
おそらく、こいつが警告のための笛を慣らした奴なんだろう。
視線はルダリオンに向けたまま、落ち着いた声を意識して俺は説明を始めた。すこしでもアキトの役に立てる情報を伝えたい。
「羽の力だけで飛んでるわけじゃなくて、あの巨体を魔力を使って浮かせているって言えば分かりやすいかな。羽ばたいた瞬間に、一瞬だけ光ってるんだけど…分かる?」
じーっとルダリオンを観察していたアキトは、不意にはっとした様子で口を開いた。
「うん、あの左側の羽の付け根の淡く光ってる場所で合ってる?」
「ああ、そこだ。魔力を集める場所に攻撃を与えられれば、あの巨体を浮かせ続ける事はできなくなるんだ」
ちなみにルダリオンなら、アキトの得意な土魔法が一番相性が良いよ。あえて笑顔でそう伝えれば、アキトはすぐに頷いてくれた。
「分かった、ありがとう」
「ああ、頼むよアキト」
「うん」
A級の魔物を前にしているのに俺とアキトがこうしてのんびりと会話を交わせたのは、サイクさんのおかげだ。その場からは一歩も動いていないが、威圧したり殺気を飛ばしたりと器用にルダリオンの気を引き続けてくれた。
ルダリオンはこちらを攻撃すらしようとせず、ただその場で飛び続けているだけだったのは、おそらくサイクさんを警戒しての事だろう。
何の相談も無くそれをしてくれるんだから、本当に頼りになる人だ。
そんなサイクさんはアキトがちらりと視線を向ければ、無言ですっと斧を構えた。いつでも攻撃できる体勢は、今日出会ったばかりの俺たちを信じてこの場をまかせてくれるという意思表示だ。
アキトも何も言わず、真剣な表情で空を舞うルダリオンを見た。
俺はというと、アキトなら出来ると知っているから、ルダリオンが相手でも特に不安は感じていない。アキトが落としてくれたら、次は俺とサイクさんで攻撃だな。
構えた剣の柄をぎゅっと強く握り直す。ただそれだけのわずかな時間で、アキトは見事な土のつぶてを作り上げてみせた。
感心した様子のサイクさんの視線にも気づかずに、アキトは作りだしたつぶてをさらに改良し続けている。恐ろしいほどの集中力だ。
ぐんぐんと形を変えていたつぶては、細く尖った形状になってぴたりと動きを止めた。
この形は初めて見たな。今回は一点を狙うためにあえて細く尖るように作り上げたのか。さすがアキトだと褒めちぎりたい所だが、ここで集中を切らせたくは無い。
「羽ばたきなおした瞬間、一瞬だけ動きが止まる。そこを狙って」
必要な事だけを剣を構えながら告げれば、こくりと頷いたアキトはすーっと息を吸いながら狙いを定めた。
アキトの魔力で作り上げられたつぶてを危険だと判断したのか、ルダリオンは一気に高度をあげたが、アキトは構わずにつぶてを放った。
シュッと音を立てて放たれたつぶては、ルダリオンの左の翼の付け根淡く光る部位に寸分たがわず突き刺さった。途端に上がる恐ろしい鳴き声に、サイクさんは怯むでもなくニヤリと笑った。
「アキト、良い腕だな」
「ありがとうございます!」
叫び返しながら、アキトはもう一度魔力を練り始める。もしものために備えられるアキトを誇らしく思いながら、俺はルダリオンを睨んだ。
「ハル、爪の牽制を頼んで良いか?」
さすがにルダリオンを相手に、俺の持つ剣で致命傷は与えられない。それは分かっているから、サイクさんの提案に文句は無かった。
「ああ、とどめは頼む」
不規則に羽ばたきながら下りてきたルダリオンは、地面に落ちてからも戦意を失わなかった。器用に片脚で立ち上がり、もう片足の爪をかざして襲い掛かってくる。
それだけなら別に意外でもないんだが、前衛である俺とサイクさんを無視してアキトを狙おうとするとは思わなかった。
「アキトを狙うとは…」
ルダリオンの進む先に飛び込み、剣と爪をぶつけるようにして切り結ぶ。ルダリオンからすれば不意をつかれた形になった筈だが、一瞬にして対応し攻撃に転じてきた。
爪ごと叩ききるぐらいのつもりで攻撃しているのに、少しもダメージが入っていかない。俺の力ではやはり無理か。
それならと突進してこようとした相手の勢いを使って、ゴロリと地面に転がした。
サイクさんはその一瞬の隙を見逃さずに一気に距離を詰めると、そのまま巨大な斧を頭上にまで振り上げた。
首を狙った必殺の攻撃に、ギュワァァッと一鳴きしたルダリオンはそのまま動かなくなった。
「さすがだな」
まさか一撃で倒してしまうとは、さすがに思っていなかった。感嘆の声をあげた俺に、サイクさんはあっさりと首を振った、。
「いや、アキトがいなかったらそもそも攻撃が届いてねぇし、ハルがいなけりゃここまで楽にとどめはさせてねぇ」
だからすごいってのはこっちの台詞だと、サイクさんは楽し気に笑みを浮かべた。そんな事は無いと答えようとした所で、勢いよくこちらへと向かってくる気配に気が付いた。
「…待ってくれ、何か来る…魔物ではなさそうだが…」
気配からして人だとは思うが、それはあえて口にはしなかった。もしかしたら魔物を倒して油断した瞬間を狙う、厄介な盗賊の可能性もある。警戒しながら声を上げれば、アキトとサイクさんも驚きつつも警戒態勢に戻ってくれた。
「うわぁぁぁぁ!」
姿が見えるよりも先に、遠くから叫び声が聞こえてきた。徐々に近づいてくるその声に耳を澄ませる。
「頼むから誰も死んでませんように!あと街に飛び込んでませんように!!被害がでていませんようにー!!!」
あー、うん。まず間違いなく盗賊ではないな。不意を突くならともかく、こんなに賑やかに近づいてくる盗賊なんていない。
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