生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
968 / 1,561

967. 訓練の場所は

「私とメイド長が厳選したオススメの見学場所はこちらです。お二人に気に入って頂けると良いのですが…」

 口では謙遜してそう言ってはいるけど、にっこり笑顔からしてどうやらかなり自信がありそうだ。

 ジルさんと俺の顔を順番に見つめてから、ボルトさんは取り出した大きな鍵束の鍵を使って部屋の扉を開いた。

「どうぞ」

 ここまで来る途中、それはもうたくさんの廊下や部屋を通り抜けてきた。でもそのなかに鍵がかかってる部屋なんて、一つもなかった。

 誰か個人の部屋とかは通らなかったから、さすがにそこには鍵がついてるとは思うけどね。

 でもここは明らかに誰かの部屋じゃない。ドアがすごく大きいんだよね。

 鍵がかけられている理由はなんだろうと不思議に思いつつ、前を行くジルさんの背中を追う。

 辿り着いたそこは、まるで音楽室のような部屋だった。

 譜面台らしきものがいくつもあるし、壁にはバイオリンのような楽器がずらりと並んでいる。

 そんなに楽器に詳しくないから、バイオリンみたいな楽器としか言えないんだけど。

 あ、でもちょっとだけ、俺の世界のバイオリンよりサイズが大きいような気がする。あとバイオリンの弦って何本だったっけ?

 そんな事をぐるぐると考えながらじっと見つめていると、ジルさんがあれはクーリオという珍しい異国の楽器なんですよと教えてくれた。

 へー、あの楽器はクーリオって言うんだ。

 ちなみにクーリオの演奏はかなり難しいそうで、みんな挑戦したけど音が出ずに挫折。家族の中でクーリオを演奏出来るのは、なんとマチルダさんだけらしい。

「よく趣味として演奏していらっしゃいますから、もし興味があれば頼んでみれば良いですよ」
「はい、今度マチルダさんに弾いてもらえるか聞いてみますね」

 そう答えながらなにげなく後ろを振り返った俺は、美しい森にたくさんの小鳥がいる景色が描かれた大きな絵画に気がついた。

「わー、ここの扉は絵なんですね。すごく綺麗だ…」
「扉を作ってから、画家の方に絵を描いて欲しいと依頼したと聞いたことがありますが…?」

 そこで言葉を切ったジルさんがちらりと視線を向ければ、ボルトさんはすかさずええと頷いた。

「扉の裏だとは最後までお伝えしませんでしたが、本当に素晴らしい絵を描いてくださいました」

 ここに森と小鳥を描いて欲しいと頼んだのは、ファーガスさんなんだって。理由は家族で唯一、クーリオを弾けるマチルダさんが、鳥好きだかららしいよ。

 ファーガスさんは、きちんと依頼する時点で動物を描くのがうまい人を選んだらしい。

「ここの小鳥は眠ってますね」

 ジルさんの言葉によくよく見てみると、たしかに小鳥にもいろんな子がいる。

「あ、この子はお花をくわえてますよ」
「可愛らしいですね」

 喧嘩してる小鳥がいたと思えば、それを仲裁しようとしてる小鳥がいたり、大きな果物を美味しそうに啄んでいる集団がいたりもするんだ。

 ついつい夢中になって鑑賞してしまった。

 一通り見て満足したころ、会話が途切れるのを待ってくれていたボルトさんが、すこし離れた所から俺達を手招いた。

「ボルトさん、お待たせしてすみません」
「すみませんでした。私もここにはあまり来ないので…ついつい見てしまいました」

 二人して目的を忘れていた事を謝罪すれば、ボルトさんはいえいえと首を振った

「久しぶりにじっくり観てくれる方たちが来て、絵描きもそれにこの絵もきっと本望でしょう」

 優しく笑ったボルトさんは、こちらですと部屋の奥へと歩き出した。

 ボルトさんが手のひらで指し示したのは、普通の窓よりもかなり高い位置にある風通しのためだという窓だった。

 なんでもクーリオは繊細だから日光に当たると音が変わっちゃうんだって。だからこの部屋は風通しのための高い位置の窓しか作られていないらしい。

「ここの窓なら、あちらからはそうそう気付かれないと思われます」

 訓練の合間に各自休憩をする時は、みんな何気なく建物の方を向くらしい。その視線から隠れるためには、普通に考えてのぞけない高さの窓を使えば良いって事らしい。

「たくさん考えてくださったんですね、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「恐れ入ります」

 でもこれ結構高い位置だけど、どうやって覗くんだろう?

「こちらを、お使いください」

 ボルトさんが魔道収納鞄から取り出したのは、頑丈そうなはしごの階段に椅子がくっついたものだった。

 なんだかプールの監視員さんが座るやつみたいな形だけど、椅子の部分は座り心地の良さそうなソファだ。

「これは」
「今日のために昨日から用意しました」

 さらりと言われた言葉に、俺とジルさんは驚いてしまった。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。