生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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969.自由な訓練

 どうやらファーガスさんの話は、かなりあっさりと終わったみたいだ。

 まあここには声は全く聞こえてこないから、集まっていた早朝訓練の参加者さん達が揃って移動をし始めたのを見て、終わったんだって気づいただけなんだけどね。

 それにしても早いなーと思ったけど、確かにファーガスさんの性格からしてこういう場所であまり長々と話しそうじゃないよね。気を付けて訓練に挑めとか、全力を尽くせとか言って終わってくれそう。

 話が短いって、校長先生とかだったらかなり好かれる理由になるよね。

 移動を始めた参加者さん達は、それぞれが思い思いに広い訓練場の各地に散らばっていった。

「あ…ハル見失っちゃいました…」

 話し終わったファーガスさんに意識を向けている間に、さっきまでいた場所にハルがいなくなってたんだ。不覚すぎる。

 しょんぼりと肩を落としながら呟けば、ジルさんも俺と同じように肩を落としながらボソリと呟いた。

「…私も、ウィルを見失いました」

 二人揃って見失うとか、想像もしてなかったな。それだけ参加者が多いって事でもあるんだけどさ。

「俺はファーガスさんに意識を向けてる間に、ハルが移動しちゃったみたいで」
「さっきは自分の隊の隊員がいたので、そちらを見ている間に…同じくウィルも移動したようです」

 俺とジルさんは顔を見合わせた。

「少なくともここにいるのは確実ですよね」
「ええ、参加はしているので、ここにいるのは絶対です」
「探しましょう!ウィルさんを見つけたら言いますね」
「ありがとうございます。私もハルさんを見つけたら報告します」

 こうして共同戦線を張った俺達は、さっきまでよりも真剣な目で訓練場を見回し始めた。



 訓練場を見ていて気づいたんだけど、騎士団の訓練って言うともっとこう皆でまとまって武器を構えて振るとかそういうのかなーと思ってたんだ。勝手な俺の騎士団のイメージなんだけどね。

 あ、あと外周をひたすらぐるぐる走って、体力をつけるーとかね。

 そういう体育会系のノリなのかと勝手に思ってたんだけど、こうして見ている限りでは早朝訓練の内容はかなり自由みたいだ。

 それぞれ自分のしたい訓練に打ち込むのが普通みたいで、大剣をひたすら素振りしている人もいれば、片隅にある的めがけて少しずつ距離を変えながら魔法を打ち続けている人もいる。

「早朝訓練って…かなり自由に訓練をするんですね」

 まだウィルさんもハルも見つけられていないのに、思わずジルさんにそう声をかけてしまった。ジルさんは怒るでも呆れるでもなく、すぐにええと頷いてくれた。

「ウィルからは日によって違う内容だと聞いた事がありますので、どうやら今日は自由に訓練の日みたいですね」

 ジルさんによると全員揃って走り込みをする日もあれば、総当たりでひたすらに対人戦をする日、それに魔物相手の戦いの実践をしようとダンジョンに向かう日なんてものもあるらしい。

「ああ、でも前半と後半で内容を変える日もあるとは聞きましたね」
「なるほど。訓練に集中できるようにって毎日内容を変えてるんですね…すごいな」
「ええ、本当にすごいと思います。ちなみにこの早朝の訓練内容は、ファーガスさんとケイリーさんが一緒に考えているそうですよ」

 お二人ともかなり忙しいと聞いていたけど、こういう事がたくさん重なったせいなんだろうな。

「それにマチルダさんも相談に乗る事があると言ってました」

 そんな事を話しながらも、俺もジルさんも視線だけは止めていない。

 あ、あっちにいる大きな盾を構えている人なんて、近くにいた人に声をかけて数人がかりで攻撃をしてもらってそれを見事にしのいでいる。って、一瞬だけ見えた顔に見覚えがあるんだけど

「あれ…?」
「どうしました?ハルさんが見つかりましたか?」
「いえ、あのハルでもウィリアムさんでもないんですが…この間ルダリオンの時に知り合った盾使いのミルゴさんがいました」

 あっちの大きな盾で複数に切りかかられている人ですと教えれば、ジルさんは驚いた様子でそちらを見た。

「あー…切りかかっているのは全員うちの隊員ですから…たぶんあの辺りにウィルもいますね」
「え、そうなんですか?」
「ええ、騎士で無い方を相手にして、あそこまでまとまって本気の攻撃をするなら、間違いなくウィルの指示です」

ジルさんの断言に、俺はハルもあの辺りにいるのかなと視線を向けた。
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