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975.【ハル視点】森の訓練場へ
ウェルマール騎士団の本部は、領主城のある場所から更に森の奥へと進んだ所に建てられている。
ここの騎士団本部は他の地域と比べても、かなり訓練用の設備が整っている。訓練関係の設備だけなら、王都にある王立騎士団本部と比べても遜色は無いレベルだろう。
ウマに乗る練習をするためのコースもあれば、戦い方や戦略についての本が詰め込まれた部屋、ひたすら全方位から攻撃を受け続ける部屋なんてものまで存在している。
中でも一番人気があるのは、天候を気にせずに訓練ができるようにと地下に作られた大規模な訓練場だ。騎士団員であればいつでも使えるその訓練場は、どんな時間に訪れても訓練の相手が見つかると評判だ。
だが早朝訓練が行われるのは、その騎士団本部の地下訓練場ではない。
訓練が始まった頃は騎士団員だけで行っていたから場所も地下だったんだが、噂を聞きつけた衛兵や冒険者から参加したいと言われ出したんだよな。
衛兵も冒険者も、いざという時に魔物を倒してくれる人だ。つまりは領民を守ってくれる人でもある。強くなってもらうのは大歓迎だと、数代前の領主が森の中に訓練場を作ったのがきっかけだ。
この訓練場は領主城からも見える程度の近さにあるんだが、一応防犯対策として色々と仕掛けをしてある。だから領主城から向かうとなると、道順が少し厄介になるんだよな。
最短距離を進めれば近いんだがと考えながら、俺は兄達と一緒に廊下を進んでいく。
「ねえ、ハル。アキトくんは、今日もやっぱり来てないんだねー」
残念そうなウィル兄の言葉に、俺は苦笑を返した。
「ああ、母さんとの約束があるからな」
アキトは絶対に来ないよと続ければ、ファーガス兄さんはだろうなと頷いている。
「何度も誘って何度も断らせたらアキトが気にするかもしれないから、そもそも誘ってもいないんだけどね」
「ああ、その方が良いだろうな。俺も母が帰ってくるまでは誘わないように気を付けよう」
「そうだね、俺も気をつけよー」
アキトくんも一緒に訓練楽しそうだなと思ったんだけどなと続けた兄に、俺は笑って尋ねた。
「ウィル兄こそ、ジルさんは誘って無いのか?」
「ジルは早朝訓練についていけるほどの体力は無いって言うんだ」
「別に体力強化系への参加も強制じゃないだろうに」
「なんかね、俺の隊のやつらが参加してたら、自分もやらないわけには行かないっていってたよー」
本当は書類仕事とかの方が忙しいからなんだけど、それは俺には言わないんだと少し不服そうだ。まあ確かにジルさんなら、そういう言葉を言いつつ自分の仕事を片づけていきそうだな。
「ファグ兄は?マティさん連れてこないの?」
「マティは訓練より実戦が好きだと断られる」
「あーなるほど…マティさんらしいね」
普段からきちんと身体を鍛えていないとあの動きは出来ないと思うんだが、一人で訓練をするのが好きな人もいるからな。
そんな事を話しながら領主城から外の道へと踏み出せば、たくさんの人がゾロゾロと森の訓練場を目指して移動している所だった。
「あ、おはようございます、ファーガス様!」
「ウィリアム隊長、おはようございます!」
あっという間に自分の部下達に囲まれた兄達から、俺はこっそりと距離を取った。
「あ、ハルもいるー!おはよう!」
出来る事ならこのまま気配を消したい所だったんだが、不意に後ろからかけられた声を無視するわけにもいかず俺は背後を振り返った。
「ああ、クーヒルか。おはよう」
ニコニコ笑顔のこいつは、昔馴染みのクーヒルだ。
のんびりとした口調と雰囲気に勝手に騙される奴もいるぐらい穏やかな奴なんだが、こう見えて衛兵の部隊を率いている隊長の一人だ。
「今日も来てるかなーって思ってたんだ」
「しばらくは来るつもりだよ」
「こないだまで来なかったのに?」
もっと前から辺境に帰ってきてただろと言われると、耳が痛いな。
「ちょっと力不足を自覚してな」
「は?ハルで力不足とか…何と戦ったの?」
苦戦する相手とか滅多にいないだろうと尋ねてくれるのは、俺への信頼だろうか。ルダリオンだよと答えるべきかと考えていると、後ろの方から叫び声が聞こえてきた。
「ああああああああああああ!」
「何事だ!」
早朝訓練に向かっている人たちは、向上心のある強い人ばかりだ。その全員が咄嗟に身構えた。
「いたぁぁぁあぁあ!この人ですよぉぉぉぉぉ!」
「うるせぇ!叫ぶな!」
「いてっ!」
ああ、近くにいた知り合いに叩かれたみたいだな。少なくとも差し迫った危険は無さそうだと、全員が警戒を解いていく。
「A級魔石を持ち込んだ人ですぅぅぅぅぅ!!!!!」
あ、なるほど。叫んだのは魔石を受け取ったという新人の衛兵か。
そしてサイクさんは、今日も訓練に来てるんだなと俺は全てを理解した。
ここの騎士団本部は他の地域と比べても、かなり訓練用の設備が整っている。訓練関係の設備だけなら、王都にある王立騎士団本部と比べても遜色は無いレベルだろう。
ウマに乗る練習をするためのコースもあれば、戦い方や戦略についての本が詰め込まれた部屋、ひたすら全方位から攻撃を受け続ける部屋なんてものまで存在している。
中でも一番人気があるのは、天候を気にせずに訓練ができるようにと地下に作られた大規模な訓練場だ。騎士団員であればいつでも使えるその訓練場は、どんな時間に訪れても訓練の相手が見つかると評判だ。
だが早朝訓練が行われるのは、その騎士団本部の地下訓練場ではない。
訓練が始まった頃は騎士団員だけで行っていたから場所も地下だったんだが、噂を聞きつけた衛兵や冒険者から参加したいと言われ出したんだよな。
衛兵も冒険者も、いざという時に魔物を倒してくれる人だ。つまりは領民を守ってくれる人でもある。強くなってもらうのは大歓迎だと、数代前の領主が森の中に訓練場を作ったのがきっかけだ。
この訓練場は領主城からも見える程度の近さにあるんだが、一応防犯対策として色々と仕掛けをしてある。だから領主城から向かうとなると、道順が少し厄介になるんだよな。
最短距離を進めれば近いんだがと考えながら、俺は兄達と一緒に廊下を進んでいく。
「ねえ、ハル。アキトくんは、今日もやっぱり来てないんだねー」
残念そうなウィル兄の言葉に、俺は苦笑を返した。
「ああ、母さんとの約束があるからな」
アキトは絶対に来ないよと続ければ、ファーガス兄さんはだろうなと頷いている。
「何度も誘って何度も断らせたらアキトが気にするかもしれないから、そもそも誘ってもいないんだけどね」
「ああ、その方が良いだろうな。俺も母が帰ってくるまでは誘わないように気を付けよう」
「そうだね、俺も気をつけよー」
アキトくんも一緒に訓練楽しそうだなと思ったんだけどなと続けた兄に、俺は笑って尋ねた。
「ウィル兄こそ、ジルさんは誘って無いのか?」
「ジルは早朝訓練についていけるほどの体力は無いって言うんだ」
「別に体力強化系への参加も強制じゃないだろうに」
「なんかね、俺の隊のやつらが参加してたら、自分もやらないわけには行かないっていってたよー」
本当は書類仕事とかの方が忙しいからなんだけど、それは俺には言わないんだと少し不服そうだ。まあ確かにジルさんなら、そういう言葉を言いつつ自分の仕事を片づけていきそうだな。
「ファグ兄は?マティさん連れてこないの?」
「マティは訓練より実戦が好きだと断られる」
「あーなるほど…マティさんらしいね」
普段からきちんと身体を鍛えていないとあの動きは出来ないと思うんだが、一人で訓練をするのが好きな人もいるからな。
そんな事を話しながら領主城から外の道へと踏み出せば、たくさんの人がゾロゾロと森の訓練場を目指して移動している所だった。
「あ、おはようございます、ファーガス様!」
「ウィリアム隊長、おはようございます!」
あっという間に自分の部下達に囲まれた兄達から、俺はこっそりと距離を取った。
「あ、ハルもいるー!おはよう!」
出来る事ならこのまま気配を消したい所だったんだが、不意に後ろからかけられた声を無視するわけにもいかず俺は背後を振り返った。
「ああ、クーヒルか。おはよう」
ニコニコ笑顔のこいつは、昔馴染みのクーヒルだ。
のんびりとした口調と雰囲気に勝手に騙される奴もいるぐらい穏やかな奴なんだが、こう見えて衛兵の部隊を率いている隊長の一人だ。
「今日も来てるかなーって思ってたんだ」
「しばらくは来るつもりだよ」
「こないだまで来なかったのに?」
もっと前から辺境に帰ってきてただろと言われると、耳が痛いな。
「ちょっと力不足を自覚してな」
「は?ハルで力不足とか…何と戦ったの?」
苦戦する相手とか滅多にいないだろうと尋ねてくれるのは、俺への信頼だろうか。ルダリオンだよと答えるべきかと考えていると、後ろの方から叫び声が聞こえてきた。
「ああああああああああああ!」
「何事だ!」
早朝訓練に向かっている人たちは、向上心のある強い人ばかりだ。その全員が咄嗟に身構えた。
「いたぁぁぁあぁあ!この人ですよぉぉぉぉぉ!」
「うるせぇ!叫ぶな!」
「いてっ!」
ああ、近くにいた知り合いに叩かれたみたいだな。少なくとも差し迫った危険は無さそうだと、全員が警戒を解いていく。
「A級魔石を持ち込んだ人ですぅぅぅぅぅ!!!!!」
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そしてサイクさんは、今日も訓練に来てるんだなと俺は全てを理解した。
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