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981.【ハル視点】サイクさんの指導
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「サイクさん、指導、よろしく頼む」
改めてそう声をかけてから深々と頭を下げれば、サイクさんはまかせろと胸を叩きながら笑みを見せてくれた。
「まずは何から始めれば良い?」
「うーん、どうしようかな。あまりあれこれといじっちまうと、ハルの持ち味が消えてしまうだろうからな…」
手数の多さは剣使いの強い味方だから絶対に残したいし…と、サイクさんはさらりと俺の戦い方を褒めてくれた。なんだかこんなに自然に褒められてしまうと、すこし照れるな。
「うん、そうだな。まず最初は、踏み込みの訓練から始めようか」
「踏み込みの訓練か」
それならハルの戦い方自体をいじる事にはならないだろうからなと、サイクさんは真剣な表情で呟いた。そんな事まで考えてくれるんだな。サイクさんは良い指導者みたいだ。
「普通、剣での戦い方は、一気に動いて敵や的との距離を詰めるよな?」
「ああ、そうだな。俺の戦い方もそうだ」
素早く敵に近づいて攻撃するのが、剣での戦い方の基本だ。
「もちろんそのやり方は否定しないぞ?それはそのままで良いんだが…強い攻撃を放ちたい時だけ、斧使いのやり方に変えてみるってのはどうだ?」
サイクさんによると、斧使いが本気で攻撃をするときは、軽く上に跳びあがってからその勢いを使って攻撃をするらしい。
今までにも、斧を使っている人にはたくさん出逢ってきた。だが、そういえばこういうその武器によって違う、戦い方の基本を尋ねた事は無かったな。
「剣使いの間合いなら…そうだな、跳びあがった後は普段よりもさらに一歩前に出るつもりで距離を詰めた方がうまくいくかな」
サイクさんは、おそらくだが剣も使っていた事があるんだろうな。アドバイスがかなり的確でありがたい。
「どうしても合わないようならやめれば良いだけだから、とりあえず何度かやってみたら良い」
そう促された俺は、少し離れた所でもう一度剣を構えた。
最初の挑戦ではそもそも跳ぶタイミングがよく分からなくて、狙いがうまく定まらなかった。魔道具にこそかろうじて当たったものの、本当にかする程度の攻撃になってしまった。
悔しさのあまり、ついつい眉間にしわを寄せてしまった。
「最初からうまくは行かないさ、切り替えろ、ハル」
サイクさんの言葉に小さく頷いて、俺はもう一度的との距離を取った。
さっきは少し跳ぶタイミングが早かったから、今度はもう少し遅くしてみよう。
気を取り直してもう一度と挑戦してみたが、今度はタイミングが遅すぎて的に攻撃を当てる事すらできなかった。
なるほど、これだと遅すぎるのか。
それならもう一度とすぐに後ろを向いて歩き出した俺に、サイクさんは何も言わなかった。
何度も何度も飽きもせずに同じ攻撃を繰り返してみたが、そう簡単に威力が高い攻撃は出せなかった。
まあそう簡単じゃないよな。
だが、ほんのわずかにでも俺の攻撃の威力が上がる可能性があるなら、出来るまでやるだけだ。俺に合う合わないは、出来るようになってから考える事だ。
「サイクさん、俺はこのままこの訓練を続けるから、もしよければ隣の魔道具でも使っててくれないか?」
いつまでも俺が訓練をするのを見てるだけというのもつまらないだろうとそう提案してみたが、サイクさんはいや、大丈夫だとすぐに笑顔で首を振った。
「ぐんぐん上達していく姿を見てるのも、楽しいもんだからな」
「上達…してるか?」
自分では全くそうは思えない。諦め悪くやり続けるつもりだったのに、そう言われると少し驚いてしまった。
「ああ、してるよ。ハルの気配探知の鋭さからして、目で見るよりも感覚で的を狙った方がうまくいくかもな」
「…感覚で狙う…か…。やってみる」
もちろん目でも見てはいるが、視覚だけに頼らない。このタイミングで跳んで、的をめがけて攻撃を放つ。
その瞬間、自分でもハッと思うほどの攻撃が出来た。呆然と見つめる先の魔道具は、俺が攻撃したものだとは思えないほど深々と傷が入っていた。
「ハル、出来たじゃないか!今のは良かった!」
自分の事のように喜んでくれるサイクさんに、俺は笑顔でありがとうと答えた。
「よし、次は斧使いの呼吸の仕方なんだが…」
どうやらサイクさんは、まだまだ俺を鍛えてくれるつもりらしい。
「ああ、どんどん教えてくれ」
「まかせとけ!」
改めてそう声をかけてから深々と頭を下げれば、サイクさんはまかせろと胸を叩きながら笑みを見せてくれた。
「まずは何から始めれば良い?」
「うーん、どうしようかな。あまりあれこれといじっちまうと、ハルの持ち味が消えてしまうだろうからな…」
手数の多さは剣使いの強い味方だから絶対に残したいし…と、サイクさんはさらりと俺の戦い方を褒めてくれた。なんだかこんなに自然に褒められてしまうと、すこし照れるな。
「うん、そうだな。まず最初は、踏み込みの訓練から始めようか」
「踏み込みの訓練か」
それならハルの戦い方自体をいじる事にはならないだろうからなと、サイクさんは真剣な表情で呟いた。そんな事まで考えてくれるんだな。サイクさんは良い指導者みたいだ。
「普通、剣での戦い方は、一気に動いて敵や的との距離を詰めるよな?」
「ああ、そうだな。俺の戦い方もそうだ」
素早く敵に近づいて攻撃するのが、剣での戦い方の基本だ。
「もちろんそのやり方は否定しないぞ?それはそのままで良いんだが…強い攻撃を放ちたい時だけ、斧使いのやり方に変えてみるってのはどうだ?」
サイクさんによると、斧使いが本気で攻撃をするときは、軽く上に跳びあがってからその勢いを使って攻撃をするらしい。
今までにも、斧を使っている人にはたくさん出逢ってきた。だが、そういえばこういうその武器によって違う、戦い方の基本を尋ねた事は無かったな。
「剣使いの間合いなら…そうだな、跳びあがった後は普段よりもさらに一歩前に出るつもりで距離を詰めた方がうまくいくかな」
サイクさんは、おそらくだが剣も使っていた事があるんだろうな。アドバイスがかなり的確でありがたい。
「どうしても合わないようならやめれば良いだけだから、とりあえず何度かやってみたら良い」
そう促された俺は、少し離れた所でもう一度剣を構えた。
最初の挑戦ではそもそも跳ぶタイミングがよく分からなくて、狙いがうまく定まらなかった。魔道具にこそかろうじて当たったものの、本当にかする程度の攻撃になってしまった。
悔しさのあまり、ついつい眉間にしわを寄せてしまった。
「最初からうまくは行かないさ、切り替えろ、ハル」
サイクさんの言葉に小さく頷いて、俺はもう一度的との距離を取った。
さっきは少し跳ぶタイミングが早かったから、今度はもう少し遅くしてみよう。
気を取り直してもう一度と挑戦してみたが、今度はタイミングが遅すぎて的に攻撃を当てる事すらできなかった。
なるほど、これだと遅すぎるのか。
それならもう一度とすぐに後ろを向いて歩き出した俺に、サイクさんは何も言わなかった。
何度も何度も飽きもせずに同じ攻撃を繰り返してみたが、そう簡単に威力が高い攻撃は出せなかった。
まあそう簡単じゃないよな。
だが、ほんのわずかにでも俺の攻撃の威力が上がる可能性があるなら、出来るまでやるだけだ。俺に合う合わないは、出来るようになってから考える事だ。
「サイクさん、俺はこのままこの訓練を続けるから、もしよければ隣の魔道具でも使っててくれないか?」
いつまでも俺が訓練をするのを見てるだけというのもつまらないだろうとそう提案してみたが、サイクさんはいや、大丈夫だとすぐに笑顔で首を振った。
「ぐんぐん上達していく姿を見てるのも、楽しいもんだからな」
「上達…してるか?」
自分では全くそうは思えない。諦め悪くやり続けるつもりだったのに、そう言われると少し驚いてしまった。
「ああ、してるよ。ハルの気配探知の鋭さからして、目で見るよりも感覚で的を狙った方がうまくいくかもな」
「…感覚で狙う…か…。やってみる」
もちろん目でも見てはいるが、視覚だけに頼らない。このタイミングで跳んで、的をめがけて攻撃を放つ。
その瞬間、自分でもハッと思うほどの攻撃が出来た。呆然と見つめる先の魔道具は、俺が攻撃したものだとは思えないほど深々と傷が入っていた。
「ハル、出来たじゃないか!今のは良かった!」
自分の事のように喜んでくれるサイクさんに、俺は笑顔でありがとうと答えた。
「よし、次は斧使いの呼吸の仕方なんだが…」
どうやらサイクさんは、まだまだ俺を鍛えてくれるつもりらしい。
「ああ、どんどん教えてくれ」
「まかせとけ!」
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