生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
986 / 1,561

985.予定変更

「アキト、キース、くれぐれも気を付けてね」

 あまりにも心配そうな表情で告げられたハルの言葉に、俺とキースくんは思わず顔を見合わせてから苦笑してしまった。

「うん、ちゃんと気を付けるね」
「ハル兄、まかせて」

 俺とキースくんの事を心配してくれるハルの気持ちは、すごく嬉しい。すごく嬉しいんだけど、この会話さっきから何回目だろう。

「俺も一緒に行きたかったな…」
「次は絶対、ハル兄も一緒に行こうね」

 ニコニコ笑顔のキースくんにそう言われれば、兄としてそれ以上何かを言う事もできなかったのか、ハルは複雑そうな表情でこくりと一つ頷いた。



 本来なら今日は俺とハル、そしてキースくんの三人で市場に遊びに行く予定だったんだけど、ハルに急用が入っちゃったんだ。

 もちろんハルは先約があるからって何とか断ろうとはしてくれたんだけど、さすがに今回ばかりは断り切れなかったんだよね。

 というのも、あのルダリオンの一件があってから、辺境領ではあちこちで同時に調査を進めていたんだって。その結果、他にもあまりこの辺りでは見かけないような、A級の強い魔物が何体か見つかったらしい。

 ちなみにその魔物たちは、既に騎士や衛兵、冒険者の人達で全て倒したらしいよ。

 やっぱりここの人達ってすごいよね。他の地域だったらものすごく大騒ぎになりかねない事態なのに、もうしっかり全部倒しちゃってるんだから。

 そんなわけであっさりと魔物は倒してしまったけど、問題はその魔物が現れた原因が全く分かっていない事なんだって。

 その原因を探るための対策会議に、ハルも出席する事になったんだ。

 ハルの所属は今もトライプール騎士団なんだけど、さすがに家族なら所属が違ってもこいう会議に参加する事はできるんだって。

 お互いの騎士団が持つ機密情報の漏洩さえしなければ良いっていう、王家が定めた法律もあるらしいよ。

 いざという時に所属とか管轄とかを気にせずに色んな所の騎士団と協力できるって、何気にすごい事だと思う。

 ちなみに俺はハルの伴侶候補ではあるけど、まだハルの正式な伴侶ってわけじゃない。まだ書類上では家族じゃないから、今回の会議には参加できないんだって。

 別に俺はその会議にすっごく参加したいってわけじゃないから何の問題も無いんだけど、ものすごく申し訳なさそうな顔をしたケイリーさんがそう説明してくれたんだ。

「これはもちろん、あくまで書類上の話しだからね?私たち家族にとっては、既にアキトくんはもう家族だからね?誤解しないでね?」

 大慌てでそう弁解してくれるケイリーさんの姿に、胸がほっこりしちゃったよ。



 ハルが対策会議に出席するのは絶対として、問題はキースくんとの約束だった。

 数日前から顔を合わせる度にどこに行きたいかって相談をしてたし、俺が気になるっていったお店をメイドさん達に聞いて情報収集してくれたりしてたんだよね。

 すっごく楽しみにしてくれていたのを知ってるだけに、ハルの予定が無理になったから今日はやめておこうとは言いたくない。

「キース、対策会議の事は聞いた?」
「うん、聞いたよ」

 物分かりの良いキースくんは、しょんぼりと肩を落とししながらも仕方ないよと少し寂しそうに呟いた。

 あー駄目だ。やっぱり今日は無しでとは言いたくない。

「ねぇ、ハル。俺とキースくん、二人だけで市場に行くのは…駄目なのかな?」
「アキトとキースの二人だけで…?」
「え、アキトくんは、一緒に市場に行くの…僕と二人だけでも良いの?」

 最近になってようやく敬語なしで話してくれるようになったキースくんは、キラキラと目を輝かせてそう尋ねてくれた。

 よし、少なくともキースくんは乗り気みたいだ。

「ハル、駄目かな?」
「いや、駄目というわけでは無いよ…俺も行きたかった…けど…」
「ハルも一緒にもまた行こうよ」

 そう声をかけてから、そっとハルに顔を近づける。

「たださ、キースくん、すごく楽しみにしてくれて下調べとかもしてくれてたんだ。だから、今日は駄目って言いたくないだけなんだ」

 こっそりとそう囁けば、ハルはなるほどとすぐに頷いてくれた。

「分かった。それじゃあ条件を二つだけ出して良いかな?」
「条件?」
「ああ、一つ目、二人とも危険な場所には行かない事」

 目的地はウェルマ市場だけだから、危険な場所になんて行かない。俺とキースくんはコクコクと頷いた。

「二つ目、護衛をつけても良いか?」
「護衛…?」
「ああ、何かあった時のためにね。あ、でも二人で楽しみたいだろうから、こっそり陰から護衛するようにするよ」

 なるほど。知らない人と一緒に市場を回るわけじゃないなら、むしろ助かるかもしれない。

「僕は問題ないよ」
「うん、キースくんが良いなら俺も大丈夫」
「それじゃあ、手配する時間だけ貰えるかな?」

 ハルはそう言うと、慌てた様子で部屋から出ていった。

「アキトくん、ありがとう」
「ん?」
「本当はおでかけしたかったんだ」
「そっか。俺もキースくんとのおでかけ楽しみだよ」

 そんな言葉を交わして、俺達は笑い合った。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。