生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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987.案内役は

 今日領主城に帰ったら、キースくんと友達になったんだってハルに報告しよう。

 人見知りのキースくんの方から、友達?って聞いてくれたんだよ。そう話したらきっとハルは、キースくんの成長を感じて喜ぶんだろうな。

 隣を歩いているキースくんにちらりと視線を向けてみれば、ニコニコ笑顔を浮かべた楽しそうな表情が目に飛び込んでくる。

 俺と友達って言われただけで、こんなに喜んでくれてるんだもんな。それだけで、俺もついつい笑顔になっちゃうよ。



 二人揃って笑顔のまま森を通り抜けて、今度は市街地へと道を歩いていく。ウェルマ市場までの道は、もう何度も通ったルートだからさすがに覚えてきた。

 問題はウェルマ市場の中なんだよね。基本的には一本道なんだけど、その道が微妙に曲がってたりするからどこに繋がってるのかとかが、いまいちよく分からない。

 ハルが案内してくれてる時はあんまり意識してなかったけど、改めて考えると単純そうに見えて結構複雑なんだよね。

 迷子にならないように気をつけないとな。そんな事を考えながら、俺は内心すこし緊張しつつ市場へ足を踏み入れたんだけど、そんな心配は全く不要だった。

 というのも、ウエルマ市場に入るなり、張り切った様子のキースくんが笑顔で案内を始めてくれたんだ。

 それがすごいんだよ。俺がどっちに行こうかって考える前に、こっちだよとか、今の時間はこっちの方が空いてるからこっちから行こうとか教えてくれるんだ。すっごく道に詳しくて、まるでハルと一緒にいるみたいだ。

 きびきび張り切って案内してくれてると思ったら、たまに家族の好きなお店の情報とかを教えてくれるのもすごく可愛くて癒される。

 あそこの店はジルさんお気に入りの石鹸を売ってるんだとか、あそこの屋台は僕には少し辛い味付けだけど、父さんはあれが大好きなんだとかね。

 領主様一家も庶民に混ざって市場で買い物してたりするんだ。まああの人達ならそんな事は気にしなさそうだし、そもそもみんな強いから大丈夫なのかな。

 キースくんが楽しそうに色々と話しながら笑顔で案内してくれるから、俺もどんどん楽しくなってくる。

「キースくんは、道案内がうまいんだね」
「そう…かな?」
「うん、ハルみたいだと思ったよ」

 あれ、これもしかして駄目だった?兄と比べられたって思われちゃうやつかなと、口にしてしまってから気づいてしまった。

 俺にとっては、ハルみたいは最上級の誉め言葉なんだけどね。

「…本当にそう思う?」

 あ、顔が嬉しそうに笑ってるから、どうやら比べられて嫌ってわけじゃないみたいだ。ほっとしながら、俺はキースくんに笑いかけた。

「うん、思うよ!ハルも案内がすごく上手なんだ。道に詳しいのももちろんだけど、こうやって色んな情報を教えてくれる所もすごく似てる」
「そっかー…それは嬉しいな」

 照れくさそうにキースくんは笑みを浮かべた。

「僕ね、ハル兄さんみたいになりたくて、道を覚えたりしてるんだ」

 うわー…これは…もしハルが知ったら、気絶するレベルの可愛さじゃない?お兄ちゃんみたいになりたいって努力する弟って、もう存在からして可愛すぎると思う。

「すごいね、キースくんならきっとなれるよ」

 そうかなーと照れ笑いを浮かべたキースくんの可愛さを堪能しつつ、俺はぐるりと周囲に視線を向けた。

 さっきから気になってたけど、やっぱり今日も衛兵や騎士らしき人がたくさんいるみたいなんだよね。制服の人から私服の人まで様々だけど、何となくそうかなーって判断ができる人が多い。

 あと、そういう人からたまに視線を感じるんだよね。

 嫌な視線とかってわけじゃなくて、明らかに俺とキースくんが無事かを確認してる感じ。もしかしてあの人達がハルのいってた護衛だったりするなのかな。

 そんな事を考えながらぼんやりしていると、無意識のうちに一人の騎士さんをじっと見つめてしまっていたみたいだ。戸惑った様子で困り顔の私服のその騎士さんは、早朝訓練の時にウィリアムさんの隊員にいた人だったんだ。

「アキトくん?」
「あ、ごめん」

 心配そうに見上げてきたキースくんは、俺の視線の先に気づくとハッとした様子で俺の袖をくいくいと引っ張った。

 引っ張られるままに道の端へと歩いていくと、しゃがんで欲しいとジェスチャーをされた。すぐにその場にしゃがみこめば、キースくんはこっそりと耳元で囁いた。

「あのね、私服の衛兵や騎士の中に、もし知り合いがいても気づかないふりをしないと駄目なんだよ」
「え、そうなの?」
「うん、巡回の邪魔にならないようにって規則なんだ」

 わーじゃあ思いっきり見つめてしまったのは、まずかったんだ。

「ごめん、全く知らなかった。ハルは普通に声をかけてたから…」

 問題ないのかと思ってたんだよね。

「それはたぶん何かがあったんじゃないかな?」
「あ、粗悪品の魔道具屋台を発見した時だった」
「そういう時は良いんだよーでも、ハル兄なら、周りが聞いてても大丈夫なようにうまく声をかけてると思うよ」

 ちょっと自慢げにそう言い放ったキースくんの可愛さに、ハルもここにいたら良かったのにと心の中で呟いた。
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