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996.屋台飯
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列に並んでしばらく待つと、ようやく俺たちの番がやってきた。そんなに並んでる人は多くなかったけど、調理に時間がかかるような何かなんだろうか。
ワクワクしながら屋台へと近づくと、店員のおじさんが口を開いた。
「こんにちは。いらっしゃい、兄さんら、長い間待たせちまってすまねぇな」
「こんにちは、いえ大丈夫です」
「こんにちは!」
挨拶を返した俺とキースくんを順番に見て、おじさんはにかっと嬉しそうに笑顔を浮かべた。なんというか太陽のような、裏表の無さそうなとにかく明るい笑顔だ。
「アキトくん、あのね、ここはしょっぱいのも甘いのも両方選べるお店なんだよ」
ニコニコ笑顔で元気に教えてくれるキースくんに、おじさんはそうそうと何度も頷いている。
「やっぱりそっちの子はたまに来てくれる子だよなー!そっちの兄さんは見ない顔だが、初めてかい?」
「あ、はい」
「それなら初めての客への説明を…して良いか?」
うん。その質問を俺に対してじゃなくてキースくんに対してしてくれる辺り、きっと優しい人なんだろうなと思った。もしキースくんが説明したいなら、説明役を譲ってくれるつもりだったんだろう。
もしかしたら自分で説明したいーって言う子もいるかもしれないもんね。
「はい、おねがいします!」
キースくんはニコニコ笑顔で即答してたけどね。さすが精神面が大人っぽいキースくんだな。
「よっしゃ、まかせろ!」
そう言うなり素早く背後を振り返ったおじさんは、片手に丸くて白いパンを持って俺達に見せてくれた。
どうやらおじさんの真後ろのテーブルには、たくさんのパンが詰まった箱がどかっと積み上げられていたみたいだ。カラフルな野菜や果物にばかり目がいってしまって、そこにあるのがパンだって事すら全く気づいてなかったよ。
「うちはこの柔らかいパンに、しょっぱいのか甘いのかを挟んで出す屋台なんだ」
そう説明しながら、おじさんは一瞬にしてその白いパンに切り込みを入れてみせた。具は挟めるけど切り分けるまではいかないぐらいの、絶妙な深さだ。
「しょっぱい方は秘蔵のソースを使って焼いた肉と、こっちの野菜から好きなものをいくつか選んで挟むんだ」
ちなみに肉の種類もいくつか選べるぞと、リストを指差して教えてくれた。あ、鶏肉みたいな味のマルックスがある。俺はやっぱりマルックスが良いなー。
「野菜は…自分の好きなのを指定するんですか?」
「ああ、元々自分が好きな野菜を選ぶ客もいれば、見た目や色、形だけを見てこの野菜を食べてみたいって選ぶ客もいるぞ」
へー、それはちょっと楽しそうだな。
「この野菜が好きだーって言われたら、それに合う野菜を俺が勧めたりもしてる」
なんだろう、野菜ソムリエって単語がぼんやり浮かんできたな。
「ただ、ものによっては生で食べれない野菜もあるからな、生食できるの、出来ないの、それに焼いた方が美味しいのなんて事もある。その辺はちゃんと説明するから、安心してくれ」
しょっぱい方の説明はこんなもんかなと続けたおじさんは、次に近くに置いてあった黄色の実をそっと指差した。逆さまに置かれているその実に、なんだか見覚えがある。
「甘いやつの方はこのパルポの実を使って、それに好きな果物を選んでもらって切ったものを挟むんだが…あー、兄さん、まずそもそもパルポの実は知ってるかい?」
うん、知ってる。その目にも鮮やかな黄色の実は、よーく覚えてる。
これぱっと見は硬そうに見えるけど、ちょっと力を入れると指が埋まってしまう程の柔らかさなんだよね。逆さまに置いてあるのは鮮度維持のためってハルに教わった。
そして肝心のお味は、砂糖入りの生クリームそのものだ。
異世界ギャップだなーとしみじみ思ったからか、よく覚えてる。
「あ、はい、知ってます!俺、納品した事があります」
「お、兄ちゃんは冒険者なのかい!それならもしかしたら、これも兄ちゃんが納品してくれたやつかもしれねぇな」
おじさんは朗らかに笑ってそう言ってくれた。
まあ俺が納品したのはトライプールだったし、だいぶ前の話だからこれが俺の納品した物だなんて事は無いんだろうけどさ。
でもおじさんの嬉しそうな言葉が何だか嬉しくて、俺は笑ってそうかもですねと答えた。
「パルポの実はどんな果物にも合うんだが、もし多すぎて選べないってなったら甘めとか、甘酸っぱいとか、甘さ控えめとかの指定をしてくれたら、俺が選んで作る事もできる」
「うわーどっちも食べてみたいな…」
「アキトくん、僕いっつも両方買うよ!」
思わずこぼれた本音に、キースくんは笑顔でそう教えてくれた。
「え、そうなの?」
「うん、パンも小ぶりだから食べれちゃうんだよね」
「お、このパンの大きさの理由に気づくとは、やるな少年!」
両方食べれるようにあえて小さ目にしてるんだと笑ったおじさんは、嬉しそうにキースくんを褒めちぎっている。
当のキースくんはちょっと照れくさそうだけど、おじさんの太陽のような笑顔のせいか、それとも何度も来てる店だからか、人見知りは発動していないみたいだ。
テーブルの上に置かれているパンをじっと見つめてみる。
うん、この大きさだと俺も二個は余裕だろうな。
これに具材をはさんだ状態を想像してみたら、ベーグルサンドみたいな感じになるのかな。あれもお菓子系のとおかず系のとあるし。まあこのパンに穴は開いてないみたいだけど。
ワクワクしながら屋台へと近づくと、店員のおじさんが口を開いた。
「こんにちは。いらっしゃい、兄さんら、長い間待たせちまってすまねぇな」
「こんにちは、いえ大丈夫です」
「こんにちは!」
挨拶を返した俺とキースくんを順番に見て、おじさんはにかっと嬉しそうに笑顔を浮かべた。なんというか太陽のような、裏表の無さそうなとにかく明るい笑顔だ。
「アキトくん、あのね、ここはしょっぱいのも甘いのも両方選べるお店なんだよ」
ニコニコ笑顔で元気に教えてくれるキースくんに、おじさんはそうそうと何度も頷いている。
「やっぱりそっちの子はたまに来てくれる子だよなー!そっちの兄さんは見ない顔だが、初めてかい?」
「あ、はい」
「それなら初めての客への説明を…して良いか?」
うん。その質問を俺に対してじゃなくてキースくんに対してしてくれる辺り、きっと優しい人なんだろうなと思った。もしキースくんが説明したいなら、説明役を譲ってくれるつもりだったんだろう。
もしかしたら自分で説明したいーって言う子もいるかもしれないもんね。
「はい、おねがいします!」
キースくんはニコニコ笑顔で即答してたけどね。さすが精神面が大人っぽいキースくんだな。
「よっしゃ、まかせろ!」
そう言うなり素早く背後を振り返ったおじさんは、片手に丸くて白いパンを持って俺達に見せてくれた。
どうやらおじさんの真後ろのテーブルには、たくさんのパンが詰まった箱がどかっと積み上げられていたみたいだ。カラフルな野菜や果物にばかり目がいってしまって、そこにあるのがパンだって事すら全く気づいてなかったよ。
「うちはこの柔らかいパンに、しょっぱいのか甘いのかを挟んで出す屋台なんだ」
そう説明しながら、おじさんは一瞬にしてその白いパンに切り込みを入れてみせた。具は挟めるけど切り分けるまではいかないぐらいの、絶妙な深さだ。
「しょっぱい方は秘蔵のソースを使って焼いた肉と、こっちの野菜から好きなものをいくつか選んで挟むんだ」
ちなみに肉の種類もいくつか選べるぞと、リストを指差して教えてくれた。あ、鶏肉みたいな味のマルックスがある。俺はやっぱりマルックスが良いなー。
「野菜は…自分の好きなのを指定するんですか?」
「ああ、元々自分が好きな野菜を選ぶ客もいれば、見た目や色、形だけを見てこの野菜を食べてみたいって選ぶ客もいるぞ」
へー、それはちょっと楽しそうだな。
「この野菜が好きだーって言われたら、それに合う野菜を俺が勧めたりもしてる」
なんだろう、野菜ソムリエって単語がぼんやり浮かんできたな。
「ただ、ものによっては生で食べれない野菜もあるからな、生食できるの、出来ないの、それに焼いた方が美味しいのなんて事もある。その辺はちゃんと説明するから、安心してくれ」
しょっぱい方の説明はこんなもんかなと続けたおじさんは、次に近くに置いてあった黄色の実をそっと指差した。逆さまに置かれているその実に、なんだか見覚えがある。
「甘いやつの方はこのパルポの実を使って、それに好きな果物を選んでもらって切ったものを挟むんだが…あー、兄さん、まずそもそもパルポの実は知ってるかい?」
うん、知ってる。その目にも鮮やかな黄色の実は、よーく覚えてる。
これぱっと見は硬そうに見えるけど、ちょっと力を入れると指が埋まってしまう程の柔らかさなんだよね。逆さまに置いてあるのは鮮度維持のためってハルに教わった。
そして肝心のお味は、砂糖入りの生クリームそのものだ。
異世界ギャップだなーとしみじみ思ったからか、よく覚えてる。
「あ、はい、知ってます!俺、納品した事があります」
「お、兄ちゃんは冒険者なのかい!それならもしかしたら、これも兄ちゃんが納品してくれたやつかもしれねぇな」
おじさんは朗らかに笑ってそう言ってくれた。
まあ俺が納品したのはトライプールだったし、だいぶ前の話だからこれが俺の納品した物だなんて事は無いんだろうけどさ。
でもおじさんの嬉しそうな言葉が何だか嬉しくて、俺は笑ってそうかもですねと答えた。
「パルポの実はどんな果物にも合うんだが、もし多すぎて選べないってなったら甘めとか、甘酸っぱいとか、甘さ控えめとかの指定をしてくれたら、俺が選んで作る事もできる」
「うわーどっちも食べてみたいな…」
「アキトくん、僕いっつも両方買うよ!」
思わずこぼれた本音に、キースくんは笑顔でそう教えてくれた。
「え、そうなの?」
「うん、パンも小ぶりだから食べれちゃうんだよね」
「お、このパンの大きさの理由に気づくとは、やるな少年!」
両方食べれるようにあえて小さ目にしてるんだと笑ったおじさんは、嬉しそうにキースくんを褒めちぎっている。
当のキースくんはちょっと照れくさそうだけど、おじさんの太陽のような笑顔のせいか、それとも何度も来てる店だからか、人見知りは発動していないみたいだ。
テーブルの上に置かれているパンをじっと見つめてみる。
うん、この大きさだと俺も二個は余裕だろうな。
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