生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1007.【ハル視点】二人の予定

 最後まで俺には一言も無かったな。まあ俺に挨拶をしてアキトを無視したなら大問題だが、逆だから良いか。俺はふうとひとつ息を吐いて、父の行動に文句を言わずに終わらせた。

「あのさ…ハル、キースくんも会議に参加するんだよね?」
「いや、キースは参加しないよ」

 いくら一族が参加する会議だと言っても、まだ成人していない者は議題とよほど関連が無い限り参加は免除される。だから、今日の会議にはキースは参加しなくて良い筈だ。

「そうなんだ…」
「ああ…今日の予定は…どうする?」

 俺が無理だから行かないで欲しいなんて、さすがに言えない。

 キースはずっと前から、この日を楽しみにしていた。

 そもそもアキトと一緒に街に遊びに行きたいと言い出したのは、珍しい事にキースの方からだったしな。俺の方が、その二人の約束に便乗させてもらう形になった自覚はある。

「んー…今日どうするかは、キースくんの様子を見てから決めるじゃ駄目?」
「いや、駄目じゃないよ」

 きちんとキースの気持ちを優先してくれる所に、むしろ感謝したいぐらいだ。

「もしハルがいないと聞いて不安そうだったら延期するけど――楽しみにしてくれてるみたいだったしもし俺と二人でも行くつもりなら行きたいな」
「ああ、そうしようか」



 急いで外出の用意を終わらせたアキトと一緒に、俺はキースの待つ玄関近くにある部屋へと足を向けた。キースは担当の侍従と数名のメイドと共に、既にそこで待っていた。

「キース、待たせてすまない」
「ごめんなさい」
「ううん、気にしないで」
「対策会議の事は聞いた?」
「うん、聞いたよ」

 物分かりの良いキースは、しょんぼりと肩を落とししながらも仕方ないよと少し寂しそうに呟いた。

 どうやら荷物はきちんと用意しているようだし、おそらくここに来てから聞いてしまったんだろうな。

「ねぇ、ハル。俺とキースくん、二人だけで市場に行くのは…駄目なのかな?」

 アキトならきっとそう言うだろうなと想像はできていたが、やっぱりそうなるのか。

「アキトとキースの二人だけで…?」
「え、アキトくんは、一緒に市場に行くの…僕と二人だけでも良いの?」

 最近になってようやく敬語なしで話すようになったキースは、キラキラと目を輝かせてアキトにそう尋ねている。

「ハル、駄目かな?」
「いや、駄目というわけでは無いよ…俺も行きたかった…けど…」

 思わず本音がポロリとこぼれてしまった。

「ハルも一緒にもまた行こうよ」

 そう声をかけてくれたアキトは、そっと俺に顔を近づけてきた。

「たださ、キースくん、すごく楽しみにしてくれて下調べとかもしてくれてたんだ。だから、今日は駄目って言いたくないだけなんだ」

 そう言われれば、俺も駄目だとは言いたくないな。

「分かった。それじゃあ条件を二つだけ出して良いかな?」
「条件?」
「ああ、一つ目、二人とも危険な場所には行かない事」

 そう指を立てて声をかければ、アキトとキースはコクコクと頷いてくれた。

「二つ目、護衛をつけても良いか?」
「護衛…?」
「ああ、何かあった時のためにね。あ、でも二人で楽しみたいだろうから、こっそり陰から護衛するようにするよ」
「僕は問題ないよ」
「うん、キースくんが良いなら俺も大丈夫」

 これで行って良いの?と言いたげな二人に、俺は慌てて声をかけた。

「それじゃあ、手配する時間だけ貰えるかな?」

 俺はそう言うなり、ちらりと使用人たちに視線を向けた。任せてくださいと頷いてくれたのを確認してから、俺は一人部屋を出た。



 他の城はどうだか知らないが、ここの領主城に廊下を走るなと言うような人はいない。ささっと道を開けてくれる使用人たちに礼を言いながら、俺は全力で廊下を駆け抜けた。

 侍従とメイド達にめくばせをしてきたから、手配が終わる前に二人が外出する事は無い。そう分かっていても、気持ちだけが焦っていた。

「失礼します」

 廊下で待機している侍従への挨拶もそこそこに、俺はファーガス兄さんの執務室へと飛び込んだ。

「ああ。来たか、ハル。おはよう」
「おはよー」

 どうやらウィル兄さんもここにいたらしい。

「おはよう、兄さんたち」
「会議の話しは聞いたか?」
「聞いたよ。それより頼みたいことがあるんだ」
「頼みたい…」
「事?」

 不思議そうな二人に、俺はできるだけ冷静に説明を始めた。

 元々アキトとキースと一緒にでかける予定だった事。

 俺だって出来る事なら会議では無くそちらに参加したかった事。

 会議の話を聞いて予定がなくなると思ったキースが、かなり気落ちしていた事。

 そしてそんなキースを見て、アキトがキースと二人だけでもでかけると決めた事。

 順番にそんな事を説明していけば、二人は揃って真剣な表情に変わった。
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