生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1015.【ハル視点】応接室

 父が部屋から出ていったのをきっかけに、会議の参加者達もそれぞれが思い思いに動き出す。

 お腹が空いたとラスの料理について話し合いながら、すぐさま隣の広間へと食事に向かおうとする者たち。まずはぐいーっと伸びをして、会議の時間で固まった体を伸ばすための運動を始める者たち。会議とは全く関係のない話題を口にして、笑い合っている者たちもいる。

 こうしてみると個性が見えてくるよな。

 ふと会議室の隅の方へと視線を向けてみれば、会議で配られた書類を片手に魔物についての議論をしている者たちまでいるな。

 そんな風に興味深く周りを観察していると、不意にファーガス兄さんに声をかけられた。

「ハル」

 周りに聞こえないように気を使っているのか、かなり小さな声だ。

「ん?」
「ハル、俺達も行くぞ」
「ああ、分かった」

 あれ?そういえばウィル兄がいないな。

 そう思いながらもファーガス兄さんについてこっそりと会議室から出れば、隣の広間の入口で参加者に声をかけているウィル兄の姿があった。

「時間になったらここの広間まで呼びに来させるから、それまではのんびり楽しんでねー」

 ちなみに昼寝してても怒られないよーなんて笑顔で言うウィル兄に、広間へ向かう参加者たちも楽しそうに笑い返している。

 ああ、なるほど。ウィル兄はこっそりと部屋を出て、会議の内容から少しでも気持ちを切り替えられるようにここで声かけしてたのか。

 こういうのは、父はもちろん、ファーガス兄さんにもできないからな。仮にやろうとしても、逆に萎縮されてしまうのが想像できる。父さんもファーガス兄さんも尊敬されているし慕われてもいるんだが、それでも部下からすれば緊張する相手だからな。

 ちなみに、萎縮させないからと言ってウィル兄が尊敬されていないというわけではない。あの笑顔と話し方のおかげなのか、我が家の中でおそらく一番話しやすい相手として親しまれているだけだ。

 萎縮させないという点だけならキースも該当するんだが、キースの方の人見知りが発動するからな。かなり声はかけ難いだろう。

「ファーガス様、ハロルド様、こちらへどうぞ。ご案内します」

 スッと俺達に近づいてきた執事長は、控え目にそう声をかけてきた。

「ああ、頼む」

 頷いたファーガス兄さんと一緒にボルトの後をついていけば、案内されたのは会議室からすこし離れた場所にある滅多に使われない小さな応接室だった。

「どうぞお入りください」

 ボルトの手によって開かれたドアから応接室の中へと入れば、疲れた様子で腰を下ろした父とたくさんの料理が出迎えてくれた。

「ああ、ファーガス、ハル。お疲れ」
「父さんもお疲れ様」
「お疲れ」

 お互いに労いの言葉をかけ合ってから、手振りで勧められるままに俺達はどさりと椅子に腰を下ろした。座り心地の良い椅子に座って脱力すれば、自然にふうーっと息が漏れる。

 会議の疲労感というのは、採取や討伐、警護なんかで感じるものとは全然違うんだよな。あまり会議に慣れていないせいもあってか、会議というものは何故かやけに疲れる気がする。

「失礼いたします。ウィリアム様をご案内して参りました」
「みんなおまたせー」
「いや、皆への声かけありがとう。助かった」

 ファーガス兄さんからの感謝の言葉に、ウィル兄はニコニコと笑顔で答えた。

「どういたしましてーちゃんと休憩して欲しいもんねー」

 ああ、さっきの声かけは、ファーガス兄さんから頼まれてやっていたのか。自分がやれば萎縮させると、きっと本人も思ったんだろうな。

「全員、無事に広間には移動していたか?」

 すこし心配そうにそう尋ねた父さんに、ウィル兄はうんと頷いた。

「何人かは会議内容について話し合ってて会議室から移動すらしてなかったけど、その人たちもちゃんと全員誘導してきたよー」
「そうか、ありがとう」
「まあ、あの内容だったら話し合いたくなる気持ちは分かるけどねー」
「だが、食事をしながら話す内容でもないだろうからな」

 ファーガス兄さんの言葉に、俺達は全員揃って頷いた。食事の時に会議の内容について考えているなんて、料理人に失礼だろう。

「よし、俺達も会議の内容には一切触れずに、ただラスの作った料理を堪能するか!」
「賛成ー!」
「ああ、そうしよう」
「そうだな」

 今日もずらりと並んだ美味しそうな料理の数々をぐるりと眺めて、俺達は四人揃って口を開いた。

「「「「いただきます!」」」」
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