生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1027.暴れる戦利品

 ハッと目を開けた俺は、体は動かさないままそっと視線だけを動かした。眠ってしまう前と同じ場所で座り込んでいるし、室内にはキースくんと俺しかいない。

 うん、どうやら俺達は、まだあの部屋の中に閉じ込められたままみたいだ。

 俺も情報収集頑張るぞと意気込んでたんだけど、実はキースくんが眠ってからはろくな情報が得られなかったんだよね。

 というのも、見張りの一人がふわぁとあくびをするなり、俺もちょっと寝てくるわーと仮眠に行ってしまったからだ。

 さすがによく喋る見張りの人も一人で喋り続けたりはしない。だから残念ながら、追加情報は何もなし。

 情報収集も出来なくなったしどうしようかなーなんて考えてたんだけど、肩にもたれかかってくる体温と重みに俺もうっかり眠ってしまったらしい。

 とは言ってもさすがに熟睡まではしてなかったから、うとうとしたーぐらいだと思うんだけど。

 うん、でも体はかなり元気になった気がするし、体調も特に悪くない。攫われてきたわりに図太いなと自分でも苦笑してしまうけど、でも元気なのは良い事だよね。

 おかげで脱出の事を考えてられるんだし。

 問題はどうやってここから出るか…なんだけど。魔法で壁を潰すとか…俺に出来るのかな。いやでも想像力で何とかなるなら、水魔法でウォーターカッターとかで壁を切るとかできたりしないかな。

 正直原理は全く分かってないけど、すっごい速さと細さで噴出させた水で切るんだよね?ダイヤも切れるぐらいなんだから、それが再現できたら壁ぐらい余裕だろう。

 そんな事をぐるぐると考えていると、不意に思いっきり何かが壁にぶつかったようなそんな轟音が聞こえてきた。まるでトラックが壁に突っ込んだような、そんな凄まじい音だった。

 背中を預けている建物も、まだグラグラと揺れているぐらいの衝撃だった。

「いったい何事だっ!おい、何があった!」

 大慌てでそう叫んだのは、ドアの向こうにいる見張りの男だった。

「やばい、この前の戦利品が暴れてるんだっ!」

 叫ぶようにしてそう答えた男の声は、たぶんさっきまで俺達の見張りをしてたあの人じゃない。あの人はもっと声が高かったからな。

 それにしても、戦利品が暴れてる?それってどんな状況?

 ハテナマークをいっぱい浮かべながら首を傾げていると、不意にくいっと腕を引かれた。

 慌てて視線を向ければいつの間にか目を覚ましていたキースくんが、すがるように俺の服の袖を握っているのが見えた。大慌てでさっと手のひらを差し出すと、すぐにきゅっと握りしめられる。

「…びっくりして…」

 言い訳するようにぽつりと口にしたキースくんの手を、安心させるようにキュッキュッと軽く力を込めて握り返す。

 あの轟音で目を覚ましたなら、そりゃあかなり驚いたよね。起きてた俺でもびっくりしたぐらいだし、むしろよく叫ばずに我慢したと思う。

「無理もないよ。俺も驚いたし」
「ん、ありがと。えっと…さっき戦利品って言ってた…?」
「うん、たしかに戦利品って言ってたね」
「暴れる戦利品?」

 二人で首を傾げていると、さらに叫び声が聞こえる。

「大人しくしろ!」
「うるさい!」

 あれ、何かこどものような声が言い返してない?

「うわっ…」
「いてっ!」

 ドカンドカンとすごい音が聞こえてくる事に、俺とキースくんは顔を見合わせた。

「かえらせろ!」

 うん、やっぱり子どもっぽい声が聞こえるんだけど。暴れてる戦利品とやらの声なんだろうか。あんなに可愛い声なのに、この轟音を発生させてるのはその子って事?

「おい、そんな所に突っ立ってないで、お前も手伝えっ!!」

 不意にそんな声が聞こえてきた。

「は?見張りなのに行けるかよ!」
「お前、怪我したくねぇからって卑怯だぞ!臆病者が!」
「あ?誰が臆病者だ!こら!」
「お前だろ、お前」

 うわーまさかの喧嘩が始まりそうだと思っていると、不意に別の声が割りこんできた。

「喧嘩するな、馬鹿野郎どもが、いいから早く手伝え!その部屋、しっかり鍵は掛かってるんだろうが!」
「そうだぞ、鍵が無いと絶対に開かない魔道具だろー?」
「…まあそう言われればそうか」

 バタバタと遠ざかっていく複数人の足音に、俺とキースくんはすっくと立ち上がった。

 見張りのいない今が、絶対に一番の脱出チャンスだもんね。

「魔道具の鍵があるって言ってたし、壁の方にするね?」
「僕もそれが良いと思う」

 キースくんの頷きを確認してから、俺は急いで魔力を練ろうとした。だけど、一瞬だけ集まった魔力はあっという間に霧散してしまった。

「え…?」

 魔法を発動させるためには絶対に必要な、でもすっかり慣れたはずのその動き。

 それが何故か失敗した。

 慌てて同じ動きを繰り返してみたけど、やはり魔力は全然練り上げられなかった。あっという間に魔力が霧散していくのが分かる。

「また失敗した…」

 呆然と呟いた俺に、キースくんはきゅっと後ろから抱き着いてきた。

「たぶん…ここには魔法を使えなくする魔道具が…設置されてるんだと思う」
「そんな…じゃあ…」

 魔法なしの俺が、キースくんを連れてここから脱出なんて出来る筈がない。
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