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1029.可愛いふたり
こっちの世界に来てから今まで、たくさんの馬に出逢った。俺がいた元の世界よりも、こっちでは馬はずっとずっと身近な存在だった。
そもそも車が無いから、一番一般的な移動手段といえば馬車だしね。
それに騎士さんや衛兵さんたちは、それぞれ馬に騎乗して街や街道を見回ってたりもする。あの人達にとっては、きっと馬は大事な相棒なんだろうな。
まあ元魔物だからとかで、どうやらすごく怖がられてもいるみたいなんだけどね。でも俺が出逢った馬は、どの子もすごく優しかった。それで余計に馬が好きになっちゃったんだけど。
色んな子がいたなーと思い返してみたけど、うん、やっぱりどの馬も、人の言葉を喋ってはいなかったよね。こっちの言葉を理解してるんだろうなって子は、たくさんいた気がするんだけど。
でも目の前にいるこの馬くんが、幼い声で俺達の言葉を話してくれてるのも事実なわけで。
俺は困惑しながらも、可愛い馬の頭を撫でる可愛いキースくんという、可愛いの集合体な光景をただじっと見つめていた。
「あの…一つ聞いても良い?」
「うんっ!なんでもきいて?」
気持ちよさそうにうっとりとしていた馬くんは、嬉しそうにキースくんを見つめている。
「えっと…君はなぜ人の言葉が喋れるの?」
キースくんは直球でそう尋ねてくれた。
「えーと、りゆうはしらない」
「そうなの?」
「うん、ぼくはうまれつきしゃべれたんだ」
「へぇ、それってスキルとかそういう力なのかなー」
珍しい力だねとキースくんに誉められた馬くんは、へへーと嬉しそうに笑った。
「たぶんそれでさらわれたんだけどね」
「え…ごめん」
「ううん、ふたりとはなせるから、ぼくはこのちからがあってうれしいよ」
あー可愛い。弾むような声でそう言ってくれる馬くんも可愛いし、ぽやぽやと嬉しそうに笑っているキースくんも可愛い。
そろそろこの馬くんの名前を聞きたい所だけど、今はまず脱出するのが優先だよね。
馬くんがかけてくれた防音魔法のおかげで、俺達の部屋の壁が潰れた事は盗賊団のメンバーにはどうやらまだバレていないみたいだ。
それにしてもこっちの音は向こうに聞こえてないのに、あっちの声はうっすら聞こえてくるってすごいよね。動向が分かって助かるんだけど。
どうやら盗賊団の人達は馬くんを見失ったせいで、今は半狂乱になって建物の中を探し回っているみたいだ。お頭に殺されるーと叫んでいる声が、どんどん多くなってる。
「どうやってここから出ようか?」
「…あの…あのね。ここからでても、またいっぱいおはなししてくれる?」
もぞもぞとその場で足踏みをしながら尋ねる馬くんは、今までよっぽど寂しい思いをしてたんだろうな。久しぶりに他の人と話せる事が、すごく嬉しいみたいだ。
「うん!」
「もちろん!」
うん、この子の名前を聞くなら、こっちもきちんと本名で名乗りたいな。そのためにも、ここからちゃんと脱出しないと。
脱出する理由が増えていくのは、きっと良い事だよね。俺頑張るよ、ハル。
「じゃあねーまずは、ふたりともぼくにのって?」
「え、乗って良いの?」
「うん、そのほうがにげやすいからね」
うーん、馬の速さは知ってるから嬉しい申し出ではあるんだけど、じゃあお願いと提案を受け入れるのもちょっと難しい。
というのもこの子、普通に馬車を引いてるような馬の大きさと比べると二回りぐらい体が小さいんだよね。声も幼いしまだ仔馬なのかもしれない。
そんな子に大人と子ども、二人も乗せてもらうって、さすがに無理だよね。
「この子だけ乗せてくれたら、俺は自分で走れるよ?」
「えんりょしないで」
「でも…二人も乗せるのは大変でしょう?」
無理はしないで欲しいと訴えてみたけど、馬くんはううんとあっさりと首を振った。
「まえにね、おとなふたりのせても、ちゃーんとはしれたんだ。だからだいじょうぶ」
「ええ、それはすごいね!」
「へへ、ありがと」
どうやら馬くんの負担にはならないらしいとホッと息を吐いた所で、俺は大変な事に気が付いた。
実は俺、まだ一人で馬に乗れないんだよね。ブレイズ達が全員上手に馬を乗りこなしてたのを見て、乗馬の練習をしたいって相談はハルにしてたんだよ。
でもそれが実現するよりも前に、ここ辺境領に来ちゃったんだよね。
「ごめん…あの…言い難いんだけど」
「ん?なぁに?」
「どうしたの?」
不思議そうにこちらを向いてくれた二人に、俺は小さな声で告げた。
「俺、一人で馬に乗った事が無いんだ…だから、うまく乗れないかもしれない」
そもそも車が無いから、一番一般的な移動手段といえば馬車だしね。
それに騎士さんや衛兵さんたちは、それぞれ馬に騎乗して街や街道を見回ってたりもする。あの人達にとっては、きっと馬は大事な相棒なんだろうな。
まあ元魔物だからとかで、どうやらすごく怖がられてもいるみたいなんだけどね。でも俺が出逢った馬は、どの子もすごく優しかった。それで余計に馬が好きになっちゃったんだけど。
色んな子がいたなーと思い返してみたけど、うん、やっぱりどの馬も、人の言葉を喋ってはいなかったよね。こっちの言葉を理解してるんだろうなって子は、たくさんいた気がするんだけど。
でも目の前にいるこの馬くんが、幼い声で俺達の言葉を話してくれてるのも事実なわけで。
俺は困惑しながらも、可愛い馬の頭を撫でる可愛いキースくんという、可愛いの集合体な光景をただじっと見つめていた。
「あの…一つ聞いても良い?」
「うんっ!なんでもきいて?」
気持ちよさそうにうっとりとしていた馬くんは、嬉しそうにキースくんを見つめている。
「えっと…君はなぜ人の言葉が喋れるの?」
キースくんは直球でそう尋ねてくれた。
「えーと、りゆうはしらない」
「そうなの?」
「うん、ぼくはうまれつきしゃべれたんだ」
「へぇ、それってスキルとかそういう力なのかなー」
珍しい力だねとキースくんに誉められた馬くんは、へへーと嬉しそうに笑った。
「たぶんそれでさらわれたんだけどね」
「え…ごめん」
「ううん、ふたりとはなせるから、ぼくはこのちからがあってうれしいよ」
あー可愛い。弾むような声でそう言ってくれる馬くんも可愛いし、ぽやぽやと嬉しそうに笑っているキースくんも可愛い。
そろそろこの馬くんの名前を聞きたい所だけど、今はまず脱出するのが優先だよね。
馬くんがかけてくれた防音魔法のおかげで、俺達の部屋の壁が潰れた事は盗賊団のメンバーにはどうやらまだバレていないみたいだ。
それにしてもこっちの音は向こうに聞こえてないのに、あっちの声はうっすら聞こえてくるってすごいよね。動向が分かって助かるんだけど。
どうやら盗賊団の人達は馬くんを見失ったせいで、今は半狂乱になって建物の中を探し回っているみたいだ。お頭に殺されるーと叫んでいる声が、どんどん多くなってる。
「どうやってここから出ようか?」
「…あの…あのね。ここからでても、またいっぱいおはなししてくれる?」
もぞもぞとその場で足踏みをしながら尋ねる馬くんは、今までよっぽど寂しい思いをしてたんだろうな。久しぶりに他の人と話せる事が、すごく嬉しいみたいだ。
「うん!」
「もちろん!」
うん、この子の名前を聞くなら、こっちもきちんと本名で名乗りたいな。そのためにも、ここからちゃんと脱出しないと。
脱出する理由が増えていくのは、きっと良い事だよね。俺頑張るよ、ハル。
「じゃあねーまずは、ふたりともぼくにのって?」
「え、乗って良いの?」
「うん、そのほうがにげやすいからね」
うーん、馬の速さは知ってるから嬉しい申し出ではあるんだけど、じゃあお願いと提案を受け入れるのもちょっと難しい。
というのもこの子、普通に馬車を引いてるような馬の大きさと比べると二回りぐらい体が小さいんだよね。声も幼いしまだ仔馬なのかもしれない。
そんな子に大人と子ども、二人も乗せてもらうって、さすがに無理だよね。
「この子だけ乗せてくれたら、俺は自分で走れるよ?」
「えんりょしないで」
「でも…二人も乗せるのは大変でしょう?」
無理はしないで欲しいと訴えてみたけど、馬くんはううんとあっさりと首を振った。
「まえにね、おとなふたりのせても、ちゃーんとはしれたんだ。だからだいじょうぶ」
「ええ、それはすごいね!」
「へへ、ありがと」
どうやら馬くんの負担にはならないらしいとホッと息を吐いた所で、俺は大変な事に気が付いた。
実は俺、まだ一人で馬に乗れないんだよね。ブレイズ達が全員上手に馬を乗りこなしてたのを見て、乗馬の練習をしたいって相談はハルにしてたんだよ。
でもそれが実現するよりも前に、ここ辺境領に来ちゃったんだよね。
「ごめん…あの…言い難いんだけど」
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「どうしたの?」
不思議そうにこちらを向いてくれた二人に、俺は小さな声で告げた。
「俺、一人で馬に乗った事が無いんだ…だから、うまく乗れないかもしれない」
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