生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
1,038 / 1,561

1037.衝撃

「くるよっ!」

 シュリくんの呼びかけと自分の気配探知だけを頼りに攻撃を放とうとしたけど、それよりも前に動きを止めてしまうほどの大きな声が辺りに響いた。

「アキトっ!!」
「え…」

 突然名前を呼ばれた俺は、驚きに目を大きく見開いてそのまま固まってしまった。攻撃をするために構えていた手も、気づけば下ろしてしまっている。それぐらい、衝撃的だった。

「は…ハル?」

 なんでこんなところにハルが?とか、あの殺気しか感じなかった気配ってもしかしてハルだったの?とか、色々と言いたい事はあるんだけど、そのどれもが言葉にはならなかった。

 口から飛び出したのは、え、ほんもの?という呟きだけだった。

 俺いつの間にか寝てて、夢でも見てるのかな?それともA級の魔物に、幻を見る魔法をかけられてるとか?

「ほんものだよ」

 あ、そのくしゃりって笑い方、ハルがよくするやつだ。

 そんな事を考えていると、切り株の向こうからひょこりとキースくんが顔を出した。
 
「…え…ハル兄…?」

 どうやらキースくんにも、ちゃんとハルの姿が見えてるみたいだ。うん、ってことは、これは俺の夢とか幻を見せられてるってわけじゃないよね。

「ハル兄、本物のハル兄だ!」

 キースくんは、大急ぎでこちらへと駆け寄ってきた。

「ああ、キースも無事だったか!良かった!」

 俺とキースくんをぎゅっと両腕で抱きしめたハルは、はぁーと深い安堵の息を吐いた。

「二人が攫われたと聞いて、生きた心地がしなかったよ…無事で良かった」

 噛み締めるようにそう呟いたハルの両腕は、プルプルと小刻みに震えている。

「心配かけてごめん」
「僕も…ごめんなさい」
「謝らないで。二人は悪くないよ。悪いのは…卑劣な罠を使った盗賊団だからね…」

 俺から見ても怖いと思うぐらい凄みのある表情で、ハルはぼそりとそう答えた。

「あ、つい思いっきり抱きしめてしまったけど、二人とも怪我は無いかな?」
「うんっ!」
「二人とも怪我はしてないよ」

 抱きしめるのをやめた後も、ハルの両手は俺とキースくんの手と繋がれたままだ。もうどこにも行かせないと言いたげなその動きが、くすぐったいけど嬉しい。

「それにしても、どうしてここにいるの?」
「この森の奥に、盗賊団のアジトがあるという情報があったんだ。それで捜索隊を編成して向かっている所だったんだが…アキトの魔力を感じたからここに来たんだ」

 ああ、そうか。ハルは俺の魔力が見えるし感じられるんだったな。それなら納得だとキースくんと頷き合っていると、ハルは不思議そうに首を傾げながら尋ねてきた。

「キース、たしか気配を消す魔道具と防音結界の魔道具は…持っていなかったよな?」
「あー…うん、僕は持ってないよ」
「でも俺の気配探知に二人の気配は無かったし、声すら聞こえなかった」

 どうしてだと首を傾げているハルに答えたいんだけど、いったい何から説明すれば良いんだろうと考え込んでしまった。

 えっと、まずシュリくんと一緒にここまで逃げてきた事を説明して、それからシュリくんの魔法のおかげだよーって言う?でもそれだとシュリくんが人の言葉を喋れる事も説明しないと駄目だよね。

 ただの馬だって事にしちゃうと、なんで名前を知ってるの?とかどうやって意思の疎通をしたの?って話しになっちゃうもんね。鋭いハルなら絶対にそこに気づくと思うんだ。

 でもシュリくんは人の言葉が喋れる馬なんだよーって勝手にバラしちゃうのは良く無いと思う。かといって、ハルの目の前でシュリくんに話して良い?って聞くのも駄目だし…。

 ぐるぐると考え込んでいると、切り株の向こうからシュリくんが小さな声でハルに話しかけた。

「あの…えっと…それはまどうぐじゃなくて、ぼくのまほうだよ」
「…きみは?」

 驚いた様子がかけらも無かったから、どうやら切り株の向こうに誰かがいる事にはだいぶ前から気づいていたみたいだ。気配を消す魔法は、距離が近いと効かないのかな。

「ぼくはシュレラーウ。シュリってよんで」
「わかった、シュリだな。俺はハル。アキトの伴侶候補で、キースの兄だ」

 姿を見せないシュリくんに、ハルは丁寧にそう声をかけた。

「あのね、ハル。シュリくんも攫われてきたんだ」

 慌てて盗賊の仲間じゃないよと口を挟めば、ハルは分かってるよとあっさりと答えてくれた。もしそうならこんな魔法を使ったりしないからねと言われて、怒ってても冷静なハルって格好良いなんて思ってしまった。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。