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1038.時間稼ぎ
いやいや、今はハルに見惚れている場合じゃない。
ハッと我に返った俺は、シュリくんが隠れている切り株の方へとちらりと視線を向けた。俺の視線に釣られるように切り株を見たハルに、俺は笑顔で声をかける。
「あのね、ハル。シュリくんは、すごいんだよ」
「そう、すっごいんだよ!」
援護射撃のように隣から声をかけてくれるキースくんが、たまらなく可愛い。ハルも微笑ましそうに笑顔を浮かべて、キースくんの顔を覗き込んでいる。
「もしシュリくんが一緒じゃなかったら…俺達はきっとここまで逃げて来れなかったと思う」
人の言葉を喋れる馬だって事はさすがに俺の口からは言えないけど、それ以外の事をいっぱいいっぱい説明しよう。
そうやって色々と説明しているうちに、シュリくんも出てきてくれるんじゃないかな。
もしハルに姿を見せるつもりが無かったら、わざわざ声をかけたり自己紹介したりしないと思うんだよね。だって普通の馬の振りをして人の言葉を一切喋らなければ、たぶん喋れる馬だってバレないんだし。
だから出てきてくれるつもりはあると思うんだ。たぶん、今は心の準備中なんだろうな。
俺とキースくん相手の時は、久しぶりに話せる相手がいるって嬉しさで声をかけてくれただけで本当は人見知りぎみなのかもしれない。
そんな事を考えつつどれだけすごいかを説明しようとしたんだけど、それよりも前にハルが驚きの声をあげた。
「えっ…!?盗賊団には、アキトの魔法の腕が通用しなかったのか?」
「通用しなかったというか…」
「その盗賊団はそんなに強かったのか?本当に二人とも、怪我は無いんだよな?」
キースの持ってたポーションを使ったからとかじゃないんだよなと、ハルは心配そうにもう一度尋ねてきた。
「えっと、もちろんポーションは持ってるけど、攫われてからは一本も使ってないよ」
「うん、本当に怪我はしてない」
二人してそう答えれば、ハルはふーっと深々と息を吐いた。
「そうか…良かった。すまない、動揺した」
「ううん、心配してくれてありがとう」
「ありがとう、ハル兄」
二人でぎゅーっと手を握れば、ハルはくしゃりと笑みを浮かべた。
「ありがとう。すこし落ち着いた…それで、その盗賊団のやつらは強かったのか?」
「うーん、戦ってないからはっきりした強さは分からないんだよね。見張りの二人は剣はかなり使えそうだったけど…」
見張りの二人の様子を思い出しながら何とかそう答えたけど、ハルは不思議そうに首を傾げた。
「戦っていない…?」
「うん」
繋いだままの手を、キースくんはくいくいと引っ張って気を引いている。
「あのね、僕たちが捕まってた部屋には、魔法を使えなくする魔道具があったんだよ」
「なるほど、それで戦ってないに繋がるのか」
それにしてもそんな珍しい魔道具を、なぜ盗賊が持っているのか…とハルは深刻な顔で呟いた。そう言われてみれば確かに。あの盗賊たち、どこからあんな魔道具を手に入れたんだろう。
「その魔法が使えない場所から、いったいどうやって脱出したんだ?」
「えっと…」
うーん、シュリくんが壁をぶち破ったんだってのは、どう説明すれば良いんだろうな。説明の内容を悩んでいる間に、シュリくんの小さな声が聞こえた。
「ハル、あの…アキトとキースのへやのかべを、ぼくがこわしたの」
「壁を壊した?身体強化の魔法とかか?」
「ううん、えっとたぶんぼくをみたら、わかってくれるとおもうんだけど…」
「みる?」
「えっと、こわがらないでほしいな」
「ああ、怖がらないよ」
約束するよとあっさりと口にしたハルに、シュリくんはそーっと切り株の影から顔を出した。
「ああ、なるほど。身体強化魔法なんてなくても壁は破壊できるだろうな。改めてはじめまして、シュリ」
人の言葉を喋る馬だと驚いた様子もなく、ハルはあっさりとシュリくんの存在を受け入れた。
「おどろかないの?」
「ああ、別に驚かないな。広い世界には人の言葉がわかるウマぐらいいても不思議じゃない」
「じゃあ、こわがらないの?」
「ああ、別に怖くないからな。大事な家族と伴侶候補を、助けてくれた相手だ」
そう言って笑ったハルに、シュリくんはきょとんとしながらもじわじわと近づいて来る。まだ完全に警戒を解いたわけじゃないみたいだ。
「それよりも、二人と一緒に逃げてくれてありがとう。魔法が封じられた部屋から逃げられたのは、シュリのおかげだ」
深々と礼をしたハルに、シュリくんはパチパチと何度も瞬きを繰り返した。
ハッと我に返った俺は、シュリくんが隠れている切り株の方へとちらりと視線を向けた。俺の視線に釣られるように切り株を見たハルに、俺は笑顔で声をかける。
「あのね、ハル。シュリくんは、すごいんだよ」
「そう、すっごいんだよ!」
援護射撃のように隣から声をかけてくれるキースくんが、たまらなく可愛い。ハルも微笑ましそうに笑顔を浮かべて、キースくんの顔を覗き込んでいる。
「もしシュリくんが一緒じゃなかったら…俺達はきっとここまで逃げて来れなかったと思う」
人の言葉を喋れる馬だって事はさすがに俺の口からは言えないけど、それ以外の事をいっぱいいっぱい説明しよう。
そうやって色々と説明しているうちに、シュリくんも出てきてくれるんじゃないかな。
もしハルに姿を見せるつもりが無かったら、わざわざ声をかけたり自己紹介したりしないと思うんだよね。だって普通の馬の振りをして人の言葉を一切喋らなければ、たぶん喋れる馬だってバレないんだし。
だから出てきてくれるつもりはあると思うんだ。たぶん、今は心の準備中なんだろうな。
俺とキースくん相手の時は、久しぶりに話せる相手がいるって嬉しさで声をかけてくれただけで本当は人見知りぎみなのかもしれない。
そんな事を考えつつどれだけすごいかを説明しようとしたんだけど、それよりも前にハルが驚きの声をあげた。
「えっ…!?盗賊団には、アキトの魔法の腕が通用しなかったのか?」
「通用しなかったというか…」
「その盗賊団はそんなに強かったのか?本当に二人とも、怪我は無いんだよな?」
キースの持ってたポーションを使ったからとかじゃないんだよなと、ハルは心配そうにもう一度尋ねてきた。
「えっと、もちろんポーションは持ってるけど、攫われてからは一本も使ってないよ」
「うん、本当に怪我はしてない」
二人してそう答えれば、ハルはふーっと深々と息を吐いた。
「そうか…良かった。すまない、動揺した」
「ううん、心配してくれてありがとう」
「ありがとう、ハル兄」
二人でぎゅーっと手を握れば、ハルはくしゃりと笑みを浮かべた。
「ありがとう。すこし落ち着いた…それで、その盗賊団のやつらは強かったのか?」
「うーん、戦ってないからはっきりした強さは分からないんだよね。見張りの二人は剣はかなり使えそうだったけど…」
見張りの二人の様子を思い出しながら何とかそう答えたけど、ハルは不思議そうに首を傾げた。
「戦っていない…?」
「うん」
繋いだままの手を、キースくんはくいくいと引っ張って気を引いている。
「あのね、僕たちが捕まってた部屋には、魔法を使えなくする魔道具があったんだよ」
「なるほど、それで戦ってないに繋がるのか」
それにしてもそんな珍しい魔道具を、なぜ盗賊が持っているのか…とハルは深刻な顔で呟いた。そう言われてみれば確かに。あの盗賊たち、どこからあんな魔道具を手に入れたんだろう。
「その魔法が使えない場所から、いったいどうやって脱出したんだ?」
「えっと…」
うーん、シュリくんが壁をぶち破ったんだってのは、どう説明すれば良いんだろうな。説明の内容を悩んでいる間に、シュリくんの小さな声が聞こえた。
「ハル、あの…アキトとキースのへやのかべを、ぼくがこわしたの」
「壁を壊した?身体強化の魔法とかか?」
「ううん、えっとたぶんぼくをみたら、わかってくれるとおもうんだけど…」
「みる?」
「えっと、こわがらないでほしいな」
「ああ、怖がらないよ」
約束するよとあっさりと口にしたハルに、シュリくんはそーっと切り株の影から顔を出した。
「ああ、なるほど。身体強化魔法なんてなくても壁は破壊できるだろうな。改めてはじめまして、シュリ」
人の言葉を喋る馬だと驚いた様子もなく、ハルはあっさりとシュリくんの存在を受け入れた。
「おどろかないの?」
「ああ、別に驚かないな。広い世界には人の言葉がわかるウマぐらいいても不思議じゃない」
「じゃあ、こわがらないの?」
「ああ、別に怖くないからな。大事な家族と伴侶候補を、助けてくれた相手だ」
そう言って笑ったハルに、シュリくんはきょとんとしながらもじわじわと近づいて来る。まだ完全に警戒を解いたわけじゃないみたいだ。
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