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1043.【ハル視点】本題
父さんとファーガス兄さんは、どうやらその魔道具技師が作ろうとしているという罠要素の無い転移魔法の魔道具という物に、かなり興味を引かれたようだ。
「実現すれば…か。まあそう簡単ではないだろうな」
「ああ、人の手によって作られた転移の魔道具は、まだないはずだからな」
「ダンジョン産か、過去の遺物が多いんだよな」
「そうだな。特に転移魔法となると、精霊の時代の遺物が多いはずだ」
そんな風に話し合っている二人の表情は、どこまでも真剣だ。
今は城の地下などの要所にのみひっそりと設置させている転移の魔道具が、いつでもどこでも気軽に使えるようになるとなれば、それはもう色々と問題が起きるだろう。
まず魔道具所持のための規則から変えなければいけないだろうし、防衛面でも攻撃面でも注意する所が一変するだろう。
何故かそんな対応策まで相談し始めた二人の横で、ウィル兄だけがじっと何かを考えているようだった。
「ウィル兄、どうかした?」
「…うーん、ちょっと気になる事があってさー」
「気になる事?」
「うん…あのさ、クレット」
俺の視線の先を読んだのか、ウィル兄はクレットの方をまっすぐに見つめてながら口を開いた。まるで見えているかのような、そんな視線の向きだ。
「はい、ウィリアム隊長!」
ウィル兄には聞こえないのに、律儀に返事を返したクレットは、何故か姿勢を正してビシッと敬礼までしている。
反射的な行動なのか、それとも真剣にやっているのかは分からないが、中々に微笑ましい光景だ。
見えないウィル兄にもクレットの微笑ましい行動を教えたいなと思ったんだが、あまりに真剣なウィル兄の表情を見て、俺はそっと開きかけた口を閉じた。
「二人が攫われた魔道具を集めている奴を知ってるー程度の情報を、わざわざクレットが伝えに来るとは思えないんだけど…本題は何?」
まるで突き放すような問い方だったけれど、クレットはさすがウィリアム隊長だとキラキラと目を輝かせながら嬉しそうに笑った。
「その技師は過去に盗賊団に襲われた事があるんです。そしてその時に、荷物を奪われているというのが本題です」
「それは…」
クレットの言葉を、俺はすぐさま皆へと伝えた。
「なるほど、それが本題か」
うんうんと満足そうに頷いたウィル兄は、さすがクレットだと嬉しそうだ。褒められたクレットも、幸せそうにニコニコと笑みを浮かべている。報告したかった相手は、もしかしたらウィル兄だったのかもしれないな。
「盗賊に奪われた魔道具…か」
「それはかなり怪しいな」
父さんとファーガス兄さんも、関係があるという判断のようだ。
「その魔道具技師は友人だったんですが…盗賊に襲われた当時、魔道具を紛失したという届け出はきちんと出すように伝えました。おそらく調べれば記録があると思います」
「盗賊に襲われた当時、友人だった魔道具技師にきちんと魔道具紛失の届け出は出すように伝えたから、記録がある筈だとクレットが言っている」
「そうなの?魔道具関係の書類や資料は、だいたい目を通したよねー?」
この中で一番書類や資料に詳しいだろうファーガス兄さんに、その場にいた全員の視線が一気に集まった。
「魔道具の紛失の届け出は、衛兵か商業ギルドでの管理になるんだ。だから俺達が調べた書類や資料の中には、紛失届は含まれていないぞ」
ファーガス兄さんの返答を聞くなり、それじゃあまずは衛兵に聞いてみるねとウィル兄はすぐにノート型の魔道具に筆記具を走らせた。
「あー…今は商業ギルドにあるけど、衛兵が調べに行ってくれるって」
「そうか、礼を言っておいてくれ」
「分かったー」
ウィル兄がまたノート型魔道具に向き合っている間に、今度はファーガス兄さんがクレットに声をかけた。
「クレット。その友人から、襲ってきた盗賊団の話を聞いた事はあるか?」
「はい。やけに統率が取れていたのが気になったと、友人は言っていました。盗賊全員がつけていた腕輪には、蛇の模様があったと聞いています」
クレットからの分かりやすく具体的な答えに、俺は思わず蛇…と呟いていた。クレットの言葉を伝える事もせずにいきなり蛇と呟いた俺を、誰も責めたりはしなかった。
「蛇…」
「蛇という事は、牙蛇盗賊団だな」
それどころか、蛇という単語だけで俺と同じ答えに辿り着いたらしい。
「ここまで説明しておいてなんですが…もしかしたら全く関係の無い盗賊が、その魔道具を偶然手に入れたのかもしれません」
それでも俺の言葉を信じてくれるんですかと、少し不安そうなクレットの言葉に、俺は笑顔で答えた。
「ああ、もし牙蛇盗賊団が無関係だったとしても、何も問題は無いよ。どうせ盗賊なんて害しか無いんだし、潰せる時に潰しておきたい」
いつか俺の大事な人に手を出すかもしれないからなと続ければ、兄さんたちにはふふっと笑われてしまった。
「よく言った。それでこそ俺の息子だな」
何故か父には、それでこそと褒められたのは少し予想外だったな。
クレットも肩の荷が下りた様子で笑ってくれたから、まあ良いんだが。
「実現すれば…か。まあそう簡単ではないだろうな」
「ああ、人の手によって作られた転移の魔道具は、まだないはずだからな」
「ダンジョン産か、過去の遺物が多いんだよな」
「そうだな。特に転移魔法となると、精霊の時代の遺物が多いはずだ」
そんな風に話し合っている二人の表情は、どこまでも真剣だ。
今は城の地下などの要所にのみひっそりと設置させている転移の魔道具が、いつでもどこでも気軽に使えるようになるとなれば、それはもう色々と問題が起きるだろう。
まず魔道具所持のための規則から変えなければいけないだろうし、防衛面でも攻撃面でも注意する所が一変するだろう。
何故かそんな対応策まで相談し始めた二人の横で、ウィル兄だけがじっと何かを考えているようだった。
「ウィル兄、どうかした?」
「…うーん、ちょっと気になる事があってさー」
「気になる事?」
「うん…あのさ、クレット」
俺の視線の先を読んだのか、ウィル兄はクレットの方をまっすぐに見つめてながら口を開いた。まるで見えているかのような、そんな視線の向きだ。
「はい、ウィリアム隊長!」
ウィル兄には聞こえないのに、律儀に返事を返したクレットは、何故か姿勢を正してビシッと敬礼までしている。
反射的な行動なのか、それとも真剣にやっているのかは分からないが、中々に微笑ましい光景だ。
見えないウィル兄にもクレットの微笑ましい行動を教えたいなと思ったんだが、あまりに真剣なウィル兄の表情を見て、俺はそっと開きかけた口を閉じた。
「二人が攫われた魔道具を集めている奴を知ってるー程度の情報を、わざわざクレットが伝えに来るとは思えないんだけど…本題は何?」
まるで突き放すような問い方だったけれど、クレットはさすがウィリアム隊長だとキラキラと目を輝かせながら嬉しそうに笑った。
「その技師は過去に盗賊団に襲われた事があるんです。そしてその時に、荷物を奪われているというのが本題です」
「それは…」
クレットの言葉を、俺はすぐさま皆へと伝えた。
「なるほど、それが本題か」
うんうんと満足そうに頷いたウィル兄は、さすがクレットだと嬉しそうだ。褒められたクレットも、幸せそうにニコニコと笑みを浮かべている。報告したかった相手は、もしかしたらウィル兄だったのかもしれないな。
「盗賊に奪われた魔道具…か」
「それはかなり怪しいな」
父さんとファーガス兄さんも、関係があるという判断のようだ。
「その魔道具技師は友人だったんですが…盗賊に襲われた当時、魔道具を紛失したという届け出はきちんと出すように伝えました。おそらく調べれば記録があると思います」
「盗賊に襲われた当時、友人だった魔道具技師にきちんと魔道具紛失の届け出は出すように伝えたから、記録がある筈だとクレットが言っている」
「そうなの?魔道具関係の書類や資料は、だいたい目を通したよねー?」
この中で一番書類や資料に詳しいだろうファーガス兄さんに、その場にいた全員の視線が一気に集まった。
「魔道具の紛失の届け出は、衛兵か商業ギルドでの管理になるんだ。だから俺達が調べた書類や資料の中には、紛失届は含まれていないぞ」
ファーガス兄さんの返答を聞くなり、それじゃあまずは衛兵に聞いてみるねとウィル兄はすぐにノート型の魔道具に筆記具を走らせた。
「あー…今は商業ギルドにあるけど、衛兵が調べに行ってくれるって」
「そうか、礼を言っておいてくれ」
「分かったー」
ウィル兄がまたノート型魔道具に向き合っている間に、今度はファーガス兄さんがクレットに声をかけた。
「クレット。その友人から、襲ってきた盗賊団の話を聞いた事はあるか?」
「はい。やけに統率が取れていたのが気になったと、友人は言っていました。盗賊全員がつけていた腕輪には、蛇の模様があったと聞いています」
クレットからの分かりやすく具体的な答えに、俺は思わず蛇…と呟いていた。クレットの言葉を伝える事もせずにいきなり蛇と呟いた俺を、誰も責めたりはしなかった。
「蛇…」
「蛇という事は、牙蛇盗賊団だな」
それどころか、蛇という単語だけで俺と同じ答えに辿り着いたらしい。
「ここまで説明しておいてなんですが…もしかしたら全く関係の無い盗賊が、その魔道具を偶然手に入れたのかもしれません」
それでも俺の言葉を信じてくれるんですかと、少し不安そうなクレットの言葉に、俺は笑顔で答えた。
「ああ、もし牙蛇盗賊団が無関係だったとしても、何も問題は無いよ。どうせ盗賊なんて害しか無いんだし、潰せる時に潰しておきたい」
いつか俺の大事な人に手を出すかもしれないからなと続ければ、兄さんたちにはふふっと笑われてしまった。
「よく言った。それでこそ俺の息子だな」
何故か父には、それでこそと褒められたのは少し予想外だったな。
クレットも肩の荷が下りた様子で笑ってくれたから、まあ良いんだが。
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