生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1044.【ハル視点】感謝の言葉を

 空気も変わった所で、俺はぐるりと部屋の中にいる人達を見回した。

「とりあえず一番最初に目指す敵は、牙蛇盗賊団で良いかな?」

 改めてそう声に出して確認すれば、父さんもファーガス兄さんもウィル兄もすぐに頷いてくれた。クレットは嬉しそうに笑顔で俺達の会話を聞いている。

「うんうん、まずはクレットの教えてくれた情報から始めよっかー」
「そうだな。それが一番だろう」
「ああ、そうしよう」

 さてとりあえず意見は一致したわけだが、ここからどう対応するかを考えないといけないよな。そんな事を考えていると、不意に父さんが口を開いた。視線の向いている先は、クレットが立っている方向だ。

「クレット、有意義な情報をありがとう。幽霊になっても変わらずに俺達に力を貸してくれる事に、心から感謝する」

 うん、そうだよな。クレットには感謝しないとな。

「俺からも、教えてくれてありがとう」

 クレットのおかげで、何も出来ずにここで報告を待つだけの時間から解放される。

「弟たちのために情報を伝えに来てくれて、本当にありがとう」

 ファーガス兄さんも真剣な顔で、感謝の言葉を口にした。いまさらりとキースとアキトの事を弟たちと言ったな。うん、まあ俺の伴侶なら、ファーガス兄さんにとっては弟だから別に良いか。

「俺も、ありがとねークレット。情報もだけど、久しぶりに会話できた気分で嬉しいよ」

 ハルがいないと喋れないのはちょっとだけ不便だけどねと、ウィル兄は笑顔でそう続ける。

 口々に礼を言われたクレットは、ぐっと拳に力を入れてうつむいてしまった。

「こんな事が…起こるなんて…」

 ああ、俺がアキトに救われたと感じたように、今クレットも救われたような気持ちなのかもしれないな。

 しばらくしてからすっと顔をあげたクレットは、背筋を伸ばして元気に答えた。

「はっ!光栄であります!」
「…光栄だって言ってるよ」

 その声が今にも泣き出しそうなほど震えている事は、わざわざ指摘しなくても良いだろう。

 俺はそっとクレットから目を反らして、既に相談を始めている兄たちの方へと向けた。

「牙蛇盗賊団…ウィル、何か情報はあるか?」
「うーん、それがねー牙蛇盗賊団は、あまり隙を見せないんだよねー」
「ああ、きっと率いている奴が有能なんだろうな…本当に忌々しい事だ…」

 ぼそりと呟いたファーガス兄さんは、珍しくも嫌悪感を露わにしている。他の事ならここまで表情には出さないんだが、ファーガス兄さんの盗賊嫌いは相当に根が深いからな。

 まあ盗賊を好きだなんて物好きな奴は、どこを探してもそうそういないだろうが。理不尽に命や財産を狙って攻撃を仕掛けてくる、そんな奴らだからな。

 かくいう俺も、人の物を盗んで楽をしようとする盗賊たちは大嫌いだ。

 危険と隣り合わせの盗賊稼業をするぐらいなら、いっそ冒険者になれば良いのにと常々思っている。機会があったとしてもそこで冒険者になろうと思わないから、盗賊なんだろうが。

「あの…」
「クレット、どうかしたか?」
「…えーと、正直どれが本拠地なのかまでは分からないんですが…牙蛇盗賊団のものらしきアジトを、私はいくつか知っています」
「は?そうなのか?」

 思わずそう聞き返せば、父さんと兄さんたちからの咎めるような視線が一気に俺に集まってきた。

「あー…すまない。人と幽霊の間を取り持つ事に慣れてないんだ」

 ここにアキトがいたら、きっとそつなくこなすんだろうなと考えながら、俺は三人に謝罪した。

「謝らなくて良いからーはやく教えてー」
「ああ、きちんとクレットの言葉を教えるよ」

 本拠地は分からないが牙蛇盗賊団のものらしきアジトを、いくつか知っていると言われたんだ。そう話せば、三人も驚いた様子でクレットのいる方向をまじまじと見つめた。全員俺の視線を読んだんだろうか。きっと読んだんだろうな。

 それにしても角度が完璧すぎて、見つめられた形になったクレットの方が戸惑っている。この人たちは本当に見えていないんだろうかと言いたげな、困惑した表情だ。

「クレット、どこが本拠地なのかは分からなくても良い。ひとまずアジトがどこにあるのか、俺達に教えてくれるか?」
「はい、もちろんです!」
「もちろんだと即答してくれてるよ」
「では頼む」
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