生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1053.【ハル視点】出発の日

 まだ太陽も上がり切らない早朝、不意に眠りから目覚めた俺はごしごしと重い瞼をこすった。

 最初に頭を過ったのは、ああ、俺は眠れたんだな――だった。

 あれこれと考えすぎたから、もしかして全く眠れないかと心配していたぐらいだったんだが、どうやら自分でも気づかないままいつの間にか眠っていたようだ。

 眠るのは体調を整えるためにも必要だから眠ってみせると言い切ったけれど、夜中になるとウィル兄に気絶させてもらえば良かったかなと思ってしまうぐらい眠気が来なかったんだよな。まあ少しでも眠れて良かったと思おう。

 一人きりでやけに広く感じるベッドから、むくりと起き上がる。すっかり日課になった伸びや軽い運動をして体調を確認する。

 うん、特にどこか悪い所は感じないな。今すぐにでも外へと飛び出していけそうなぐらいの体調だ。

 食欲もとくに湧いては来ないんだが、鞄に入っていた屋台飯を取り出してもそもそと食事を済ませる。味もろくに感じないが、これはアキトが特に気に入っていたお店の物だなとどうしても考えてしまう。

 自身に浄化魔法をかけたり装備品を整えたりしている内に、気づけばもうすぐ朝の五時だ。精神を集中して研ぎなおした愛用の剣を腰に下げて、俺は立ち上がった。

 さあ行こう。二人を助けるために。



 待ち合わせ場所である騎士団の訓練場へと向かうと、たくさんの人が同じ方向を目指して歩いている所だった。

「おはようございます、ハル様」
「ああ、おはよう」
「ハル様、盗賊をこらしめましょうね」
「もちろんだ」
「あの、探索隊に参加させて頂きます!今日は全力で頑張ります!」
「そうか。参加してくれてありがとう」

 そんな風にかけられる声に返事を返しながら進んでいけば、騎士団の訓練場へと辿り着いた。

 そこには既にたくさんの人たちが到着していた。

 綺麗に整列しているというわけでも無いんだが、騎士は騎士、衛兵は衛兵、そして使用人は使用人でおおまかに集まっているようだ。

「ハル、遅かったな」

 そう声をかけてきたのは、完全武装をしたファーガス兄さんだった。その恰好からして、兄さんも参加するのか?少しだけ驚きつつもファーガス兄さんの隣へと視線を向ければ、きっちりと鎧を着こんだマティ姉さんがにこりと微笑みかけてきた。

「二人も…探索隊に参加するんですか?」
「ええ、もちろん参加させてもらうわよ」
「参加するためにここにいるんだからな」
「でも二人は次期領主夫妻だから…良いのか?」

 思わずそう尋ねれば、ファーガス兄さんはニヤリと笑みを浮かべて答えた。

「俺達は志願してここにいるんだ。志願方式なんだから問題は無いだろう?」

 あー…なるほど。だからあの場で、一切志願方式への反対意見が出なかったのか。志願方式なら俺も参加して良いだろうと言えるという判断だったらしい。

「…まあ、問題は無いな」

 戦力としても頼りになる二人だから、何の問題も無い。そう答えれば、二人は満足そうに笑みを浮かべた。

 でもこの流れは、ウィル兄もここにいそうだな。

 そう思って視線を巡らせれば、同じく完全武装のウィル兄が騎士達の近くから笑顔で手を振ってきた。

「おはよーハル」
「おはよう、ウィル兄さん、ジルさん」
「おはようございます」
「昨夜はちゃんと眠れたー?」
「ああ、眠れたよ」

 そう答えながら、俺はウィル兄さんとジルさんの後ろに揃っている騎士達に視線を向けた。
 うーん。これはもしかして、ウィル兄さんとジルさんが所属している隊の隊員は…全員揃っているんじゃないか?見覚えのある顔が揃い過ぎている。

 本当に命令していないんだよな?と疑問に思っていると、俺の表情の変化に気づいたらしいジルさんが尋ねるよりも前に口を開いた。

「ウィリアム隊長と私が、キースくんとアキトくんの話しをよくしていたので…その…隊員達からは他人事とは思えないと参加希望があったんです。誓って命令はしてませんよ」

 苦笑しながらジルさんがそう言えば、後ろにいる隊員達もコクコクと頷いている。

「あの、ジル副隊長が誰かの話しをする事は滅多にないので」
「アキト様とキース様の事はよく覚えています」
「ウィリアム隊長は、はやく二人が伴侶になれば良いのにと、はじめてお会いした日からずっと言っていましたから…」

 なるほど。ここまで言ってくれるという事は、どうやら本当の事らしい。

「そうか。二人のために集まってくれてありがとう」

 そう答えれば、騎士たちは嬉しそうに笑ってくれた。
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