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1059.【ハル視点】張り切るウマ達
これだけの人数が集まり、しかもウマに騎乗して一斉に移動をするなんて、実は辺境領でもそう頻繁にある事では無い。
スタンピードや強大な魔物が街や村を襲撃してきたなどのよほどの非常事態か、それこそ他国との戦争が起きた時ぐらいしかないだろう。普段のウマでの移動は、多くても十名前後の隊単位でしか動かないからな。
滅多に無いこの状況に、どうやらウマたちもかなり張り切っているようだ。加速を促すように指示を出せば、それだけで面白いほどにぐんぐんと速度が上がっていく。
たまに冒険者や旅人らしき人影は見えるが、それも景色と共に一瞬で過ぎ去っていく。さすがにこの速度なら、乗っている人の顔までは見えないだろうな。俺は笑顔を消すと、周りを走る仲間に視線を向けた。
俺と同じように考えたのか、もう笑顔を浮かべている人は誰一人としていなかった。ただただ前を睨んで、一つの生き物のように街道を駆け抜けていく。
「よし、ここからさらに速度をあげるぞ!」
「おおー!」
ウェルマール領都からルティルーの森までの距離は、決して近いとは言えない。一番速いだろう騎馬でも十時間程はかかる。もし移動手段が徒歩だったりしたら、まず間違いなく数日はかかってしまうだろう距離だ。
それなのに、なんで俺はもうルティルーの森の入口にいるんだろうな。
なかば呆然としながら、俺は魔導収納鞄から取り出したウカの生肉をウマの前へと差し出した。ここまで俺を乗せてきてくれたウマは、くんと匂いを嗅ぐなり嬉しそうに肉に齧りついている。
今は入口の手前の所で全員がウマから下りて、ここまで乗せてくれた礼と労いにそれぞれがウマへと食べ物を与えている所だ。
「うん、思ったよりも早く着いたな」
「皆が頑張ってくれたからだな」
食事を終えた自分のウマを労うように撫でながら、ファーガス兄さんとマティさんがそんな事を話しているのが聞こえてくる。
たしかに思ったよりもかなり早かったな。十時間程は軽くかかると思っていたのに、ルティルーの森の入口に辿り着いたのは出発から七時間ほどが経った頃だった。
途中で何度か休憩も挟んだのにも関わらずこの時間なんだから、本当に驚異的な速度だと言える。それだけ張り切っていたんだろうか。
このままの速度で森の中にも突入してしまいたい所だが、ウマで進めるのはここまでだ。
他の場所ならこのまま突っ込むという選択肢もあったのかもしれないが、ルティルーの森ではそれは不可能だ。この森の街道に一歩でも足を踏み入れてしまうと、無駄に魔物を寄せつけてしまうからな。
でてくる魔物はさすがにS級やA級ではないから、蹴散らしながら進むというのもありだろう。だがさすがに今は、そんな事に時間を使っている場合では無いからな。
「今のうちに、各自軽く食事を済ませておいてねーはい、サンドイッチどうぞー」
「もしよろしければ、こちらのサンドイッチをどうそ」
ウィル兄さんとジルさんは、そう言いながら事前に用意してあったらしいサンドイッチを配り歩いている。通常の任務ならこんな事は決してしないんだが、今回は俺達の家族を助けるために集まってくれた志願者たちだから…だろうな。
「はい。ハルさんも、食べてくださいね」
じっと目を見つめられながらジルさんにそう言われた俺は、ありがとうございますと呟いて包みを受け取った。色とりどりのたくさんの具材の挟まったサンドイッチは、アキトが見たら美味しそうだと喜びそうな見た目だな。
そんな事を考えながら、俺はサンドイッチにかぶりついた。食べ始めればホッとした様子で笑ったジルさんは、また他の人の所へと歩いていった。
ここから先の移動手段が徒歩になるという事は、ウマは全頭ここに置いていく事になる。
ウェルマール騎士団と衛兵隊のマークを首から下げているから、所属不明のウマがたくさんいるという事にはならない筈だが…それでもこれだけのウマが集まっていればなかなかの迫力だ。
これだけの頭数が集まっていれば魔物に狙われる心配も無いだろうが、見かけた人が怖がる可能性はある。
そこで選ばれた数名の騎士と衛兵が、この場に残る事になった。世話係という名の、ここに来た人たちへの説明をするための係だ。
こちらの人選は、完全にファーガス兄さんとマティさんに丸投げさせてもらった。
二人の話し合いによって選ばれた数名は、ファーガス兄さん自らに名前を呼んで残る事を頼まれて嬉しそうに目を輝かせて頷いていた。
どうやら牙蛇盗賊団を倒そうと思っている人や、この手でアキトとキースを助けようと思っている人はうまく避けられたらしい。さすがの人選だな。
スタンピードや強大な魔物が街や村を襲撃してきたなどのよほどの非常事態か、それこそ他国との戦争が起きた時ぐらいしかないだろう。普段のウマでの移動は、多くても十名前後の隊単位でしか動かないからな。
滅多に無いこの状況に、どうやらウマたちもかなり張り切っているようだ。加速を促すように指示を出せば、それだけで面白いほどにぐんぐんと速度が上がっていく。
たまに冒険者や旅人らしき人影は見えるが、それも景色と共に一瞬で過ぎ去っていく。さすがにこの速度なら、乗っている人の顔までは見えないだろうな。俺は笑顔を消すと、周りを走る仲間に視線を向けた。
俺と同じように考えたのか、もう笑顔を浮かべている人は誰一人としていなかった。ただただ前を睨んで、一つの生き物のように街道を駆け抜けていく。
「よし、ここからさらに速度をあげるぞ!」
「おおー!」
ウェルマール領都からルティルーの森までの距離は、決して近いとは言えない。一番速いだろう騎馬でも十時間程はかかる。もし移動手段が徒歩だったりしたら、まず間違いなく数日はかかってしまうだろう距離だ。
それなのに、なんで俺はもうルティルーの森の入口にいるんだろうな。
なかば呆然としながら、俺は魔導収納鞄から取り出したウカの生肉をウマの前へと差し出した。ここまで俺を乗せてきてくれたウマは、くんと匂いを嗅ぐなり嬉しそうに肉に齧りついている。
今は入口の手前の所で全員がウマから下りて、ここまで乗せてくれた礼と労いにそれぞれがウマへと食べ物を与えている所だ。
「うん、思ったよりも早く着いたな」
「皆が頑張ってくれたからだな」
食事を終えた自分のウマを労うように撫でながら、ファーガス兄さんとマティさんがそんな事を話しているのが聞こえてくる。
たしかに思ったよりもかなり早かったな。十時間程は軽くかかると思っていたのに、ルティルーの森の入口に辿り着いたのは出発から七時間ほどが経った頃だった。
途中で何度か休憩も挟んだのにも関わらずこの時間なんだから、本当に驚異的な速度だと言える。それだけ張り切っていたんだろうか。
このままの速度で森の中にも突入してしまいたい所だが、ウマで進めるのはここまでだ。
他の場所ならこのまま突っ込むという選択肢もあったのかもしれないが、ルティルーの森ではそれは不可能だ。この森の街道に一歩でも足を踏み入れてしまうと、無駄に魔物を寄せつけてしまうからな。
でてくる魔物はさすがにS級やA級ではないから、蹴散らしながら進むというのもありだろう。だがさすがに今は、そんな事に時間を使っている場合では無いからな。
「今のうちに、各自軽く食事を済ませておいてねーはい、サンドイッチどうぞー」
「もしよろしければ、こちらのサンドイッチをどうそ」
ウィル兄さんとジルさんは、そう言いながら事前に用意してあったらしいサンドイッチを配り歩いている。通常の任務ならこんな事は決してしないんだが、今回は俺達の家族を助けるために集まってくれた志願者たちだから…だろうな。
「はい。ハルさんも、食べてくださいね」
じっと目を見つめられながらジルさんにそう言われた俺は、ありがとうございますと呟いて包みを受け取った。色とりどりのたくさんの具材の挟まったサンドイッチは、アキトが見たら美味しそうだと喜びそうな見た目だな。
そんな事を考えながら、俺はサンドイッチにかぶりついた。食べ始めればホッとした様子で笑ったジルさんは、また他の人の所へと歩いていった。
ここから先の移動手段が徒歩になるという事は、ウマは全頭ここに置いていく事になる。
ウェルマール騎士団と衛兵隊のマークを首から下げているから、所属不明のウマがたくさんいるという事にはならない筈だが…それでもこれだけのウマが集まっていればなかなかの迫力だ。
これだけの頭数が集まっていれば魔物に狙われる心配も無いだろうが、見かけた人が怖がる可能性はある。
そこで選ばれた数名の騎士と衛兵が、この場に残る事になった。世話係という名の、ここに来た人たちへの説明をするための係だ。
こちらの人選は、完全にファーガス兄さんとマティさんに丸投げさせてもらった。
二人の話し合いによって選ばれた数名は、ファーガス兄さん自らに名前を呼んで残る事を頼まれて嬉しそうに目を輝かせて頷いていた。
どうやら牙蛇盗賊団を倒そうと思っている人や、この手でアキトとキースを助けようと思っている人はうまく避けられたらしい。さすがの人選だな。
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