1,063 / 1,561
1062.【ハル視点】安堵
アキトの魔力だけを頼りに、俺はひたすらまっすぐにアキトを目指して走り続けた。森の中に当たり前にある枝や茂み、地面の凹凸などの障害物が、今だけは本当に鬱陶しい。
苛立ちを感じながらも走っていくと、ようやくアキトの魔力を感じる場所が見える所まで辿り着いた。
アキトの魔力は、間違いなくあそこの茂みの中から感じる。でも、こうして目視ができる距離になっても、何故か目には見えない。
もしかしたらこれも色々な魔道具を持っているらしい牙蛇盗賊団の罠なのかもしれないが、それならそれで別に問題は無い。
ただ、俺の持てる全力で叩き潰せば良いだけだ。
何の躊躇も無く茂みの方へと飛び込めば、聞き覚えないの無い来るよという声が聞こえた。いったい誰だと少しだけ気にはなったが、今はそれどころではない。アキトに俺の気配を伝えているなら、少なくとも敵では無いだろう。
さっと視線を巡らせれば、魔力を練り上げているアキトの姿が飛び込んできた。
「アキトっ!!」
ああ、無事だった…アキトだ。
それしか考えられずに反射的にそう叫んで名を呼べば、アキトはえ…と小さな声で呟いた。攻撃をするために構えていたのだろうアキトの手が、ゆっくりと下りていく。
「は…ハル?―――え、ほんもの?」
「うん、ほんものだよ」
あまりにもいつも通りのアキトの様子にホッとして、思わず笑みがこぼれてしまった。
キースはどこだい?と俺が尋ねようとするよりも前に、切り株の向こうからひょこりとキースが顔を出した。
「…え…ハル兄…?――ハル兄、本物のハル兄だ!」
嬉しそうに叫んだキースは、大急ぎでこちらへと駆け寄ってきた。
「ああ、キースも無事だったか!良かった!」
アキトとキースをぎゅっと両腕で抱きしめた俺は、はぁーと深い安堵の息を吐いた。さっと見た範囲ではあるが、アキトもキースも目立った怪我もなく普段通りの様子だ。
「二人が攫われたと聞いて、生きた心地がしなかったよ…無事で良かった」
噛み締めるようにそう呟いた俺の両腕は、情けない事にプルプルと小刻みに震えていた。
「心配かけてごめん」
「僕も…ごめんなさい」
「謝らないで。二人は悪くないよ。悪いのは…卑劣な罠を使った盗賊団だからね…」
二人を攫った盗賊団の事は絶対に許さないけどねと考えながら、俺はぼそりとそう答えた。
「あ、つい思いっきり抱きしめてしまったけど、二人とも怪我は無いかな?」
「うんっ!」
「二人とも怪我はしてないよ」
顔を見たいからと抱きしめるのはやめたんだが、このまま二人から離れる気にはとてもなれなかった。俺は片手をアキトと、もう片手をキースの手と繋いだままにしたんだが、二人は嬉しそうに笑って受け入れてくれた。
「それにしても、どうしてここにいるの?」
「この森の奥に、盗賊団のアジトがあるという情報があったんだ。それで捜索隊を編成して向かっている所だったんだが…アキトの魔力を感じたからここに来たんだ」
探索隊と、牙蛇盗賊団の討伐隊も兼ねているんだが、それはまあ説明しなくても良いだろう。
アキトとキースはそれなら納得だと言いたげに頷き合っているんだが、俺も気になっている事を聞いても良いだろうか。
「キース、たしか気配を消す魔道具と防音結界の魔道具は…持っていなかったよな?」
「あー…うん、僕は持ってないよ」
「でも俺の気配探知に二人の気配は無かったし、声すら聞こえなかった」
それはどうしてだと首を傾げた俺に、アキトとキースは困り顔で顔を見合わせた。
説明したくないというよりも、いったい何から説明すれば良いんだろうと困っているような表情だな。
もしかしてそれは、さっきのきたよと叫んだ声と関係しているんだろうか。
あの声の感じからしてキースが出てきた切り株の辺りにいるんだと思うんだが、その気配も俺には気付けないんだよな。この距離で気配に気付けないなんてそうある事じゃない。
そんな事を考えていると、切り株の向こうから小さな声が俺に話しかけてきた。
「あの…えっと…それはまどうぐじゃなくて、ぼくのまほうだよ」
「…きみは?」
気配は感じないが、声は聞こえる。
「ぼくはシュレラーウ。シュリってよんで」
「わかった、シュリだな。俺はハル。アキトの伴侶候補で、キースの兄だ」
まだこちらを警戒しているのか姿こそ見せてくれていないが、アキトとキースが困っているならと自分から声をかけてくれる相手だ。自然と声は優しくなった。
「あのね、ハル。シュリくんも攫われてきたんだ」
慌てて盗賊の仲間じゃないよと口を挟んだアキトに、俺は分かってるよと答えた。
「もしシュリが盗賊の仲間なら、アキトとキースと一緒に逃げるためにこんな魔法を使ったりしないからね」
あの気配の消し方は、盗賊たちどころかA級の魔物にすら感知できないほどのものだからな。
苛立ちを感じながらも走っていくと、ようやくアキトの魔力を感じる場所が見える所まで辿り着いた。
アキトの魔力は、間違いなくあそこの茂みの中から感じる。でも、こうして目視ができる距離になっても、何故か目には見えない。
もしかしたらこれも色々な魔道具を持っているらしい牙蛇盗賊団の罠なのかもしれないが、それならそれで別に問題は無い。
ただ、俺の持てる全力で叩き潰せば良いだけだ。
何の躊躇も無く茂みの方へと飛び込めば、聞き覚えないの無い来るよという声が聞こえた。いったい誰だと少しだけ気にはなったが、今はそれどころではない。アキトに俺の気配を伝えているなら、少なくとも敵では無いだろう。
さっと視線を巡らせれば、魔力を練り上げているアキトの姿が飛び込んできた。
「アキトっ!!」
ああ、無事だった…アキトだ。
それしか考えられずに反射的にそう叫んで名を呼べば、アキトはえ…と小さな声で呟いた。攻撃をするために構えていたのだろうアキトの手が、ゆっくりと下りていく。
「は…ハル?―――え、ほんもの?」
「うん、ほんものだよ」
あまりにもいつも通りのアキトの様子にホッとして、思わず笑みがこぼれてしまった。
キースはどこだい?と俺が尋ねようとするよりも前に、切り株の向こうからひょこりとキースが顔を出した。
「…え…ハル兄…?――ハル兄、本物のハル兄だ!」
嬉しそうに叫んだキースは、大急ぎでこちらへと駆け寄ってきた。
「ああ、キースも無事だったか!良かった!」
アキトとキースをぎゅっと両腕で抱きしめた俺は、はぁーと深い安堵の息を吐いた。さっと見た範囲ではあるが、アキトもキースも目立った怪我もなく普段通りの様子だ。
「二人が攫われたと聞いて、生きた心地がしなかったよ…無事で良かった」
噛み締めるようにそう呟いた俺の両腕は、情けない事にプルプルと小刻みに震えていた。
「心配かけてごめん」
「僕も…ごめんなさい」
「謝らないで。二人は悪くないよ。悪いのは…卑劣な罠を使った盗賊団だからね…」
二人を攫った盗賊団の事は絶対に許さないけどねと考えながら、俺はぼそりとそう答えた。
「あ、つい思いっきり抱きしめてしまったけど、二人とも怪我は無いかな?」
「うんっ!」
「二人とも怪我はしてないよ」
顔を見たいからと抱きしめるのはやめたんだが、このまま二人から離れる気にはとてもなれなかった。俺は片手をアキトと、もう片手をキースの手と繋いだままにしたんだが、二人は嬉しそうに笑って受け入れてくれた。
「それにしても、どうしてここにいるの?」
「この森の奥に、盗賊団のアジトがあるという情報があったんだ。それで捜索隊を編成して向かっている所だったんだが…アキトの魔力を感じたからここに来たんだ」
探索隊と、牙蛇盗賊団の討伐隊も兼ねているんだが、それはまあ説明しなくても良いだろう。
アキトとキースはそれなら納得だと言いたげに頷き合っているんだが、俺も気になっている事を聞いても良いだろうか。
「キース、たしか気配を消す魔道具と防音結界の魔道具は…持っていなかったよな?」
「あー…うん、僕は持ってないよ」
「でも俺の気配探知に二人の気配は無かったし、声すら聞こえなかった」
それはどうしてだと首を傾げた俺に、アキトとキースは困り顔で顔を見合わせた。
説明したくないというよりも、いったい何から説明すれば良いんだろうと困っているような表情だな。
もしかしてそれは、さっきのきたよと叫んだ声と関係しているんだろうか。
あの声の感じからしてキースが出てきた切り株の辺りにいるんだと思うんだが、その気配も俺には気付けないんだよな。この距離で気配に気付けないなんてそうある事じゃない。
そんな事を考えていると、切り株の向こうから小さな声が俺に話しかけてきた。
「あの…えっと…それはまどうぐじゃなくて、ぼくのまほうだよ」
「…きみは?」
気配は感じないが、声は聞こえる。
「ぼくはシュレラーウ。シュリってよんで」
「わかった、シュリだな。俺はハル。アキトの伴侶候補で、キースの兄だ」
まだこちらを警戒しているのか姿こそ見せてくれていないが、アキトとキースが困っているならと自分から声をかけてくれる相手だ。自然と声は優しくなった。
「あのね、ハル。シュリくんも攫われてきたんだ」
慌てて盗賊の仲間じゃないよと口を挟んだアキトに、俺は分かってるよと答えた。
「もしシュリが盗賊の仲間なら、アキトとキースと一緒に逃げるためにこんな魔法を使ったりしないからね」
あの気配の消し方は、盗賊たちどころかA級の魔物にすら感知できないほどのものだからな。
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
神獣様の森にて。
しゅ
BL
どこ、ここ.......?
俺は橋本 俊。
残業終わり、会社のエレベーターに乗ったはずだった。
そう。そのはずである。
いつもの日常から、急に非日常になり、日常に変わる、そんなお話。
7話完結。完結後、別のペアの話を更新致します。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。