生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
1,071 / 1,561

1070.保護

 王家が、シュリくんを保護してる…?

「えっと…ケイリーさん、それってどういう事…ですか?」
「父さま…それってどういう事?」

 キースくんと俺が揃って首を傾げながら尋ねれば、ケイリーさんはふふと楽し気に笑った。

「本来ならね、これは領主を務めている者とその妻しか知る事が出来ない、そんな話しなんだが…」

 そう話しを切り出したケイリーさんの声を、慌てた様子のハルが遮った。

「ちょっと待ってくれ、父さん!」

 言われた通りに素直にそこで言葉を止めたケイリーさんは、ん?と言いたげにハルをじっと見つめている。

「もしその話しを聞いたせいで、二人に少しでも不利な事があるかもしれなら、気にはなるけどここで聞くのを止めるよ?」
「いやいや、さすがに何か問題があるなら私も話そうとはしないよ。そこはきちんと線引きするから、少しは信じてくれ」

 苦笑を浮かべたケイリーさんは、ただしこの制限には一部の例外があるんだよと続けた。

「人の言葉を話せるウマの方から声をかけられた人には、何を話しても良いっていう決まりがあるんだ」

 俺とキースくん、そしてハルは、シュリくんと普通に話をしている。だから、ここで詳しい事を知っても何の問題も無いらしい。

「ああ、なるほど。そういう事か…話しを遮ってすまなかった」
「いや、大事な人を守るためには、そういう確認も必要だからな」

 むしろ俺達相手なら確認はどんどんすれば良いと、ケイリーさんは優しい笑顔でそう返している。息子に疑われたって怒るんじゃないあたりに、ケイリーさんの懐の深さを感じるな。

「えーとな、まず前提としてシュリのように人の言葉を喋れるウマは、かなり珍しい存在だ。だがこの世界に一頭しかいないとか、そういうレベルの希少性という訳じゃない。今は…たしかシュリを入れて六頭…だったかな?」
「うん、ろくとうだよー」

 シュリくんみたいに喋れる馬さんが、六頭もいるんだ。それはちょっとびっくりな光景だろうな。でもできる事なら、会ってみたいとも思うんだけど。

 他の馬さんたちも、俺と会話してくれたりするんだろうか。

「もちろん野生のウマの中にも喋れるウマはいるだろうし、喋る事を隠してどこかで誰かの相棒になっているウマもいたりすると思うんだが…とりあえず王家がいま保護してるのは、六頭だけなんだ」

 ちなみにケイリーさんの説明によると、人の言葉を喋れる馬はみんな珍しい魔法が使えたり、普通の馬と比べても力がすごく強かったりするんだって。

 そっか。シュリくんのあの気配を消す魔法とかも、もしかしたらそういう魔法だったのかもしれないな。そう考えていたのは、どうやら俺だけじゃなかったみたいだ。

「シュリくんの魔法も、すごかったもんねー!」
「へへ、ありがとう」

 ニコニコ笑顔で褒めるキースくんに、シュリくんは照れくさそうにしながらも嬉しそうだ。

「普通の馬よりも強い…とは。それほど強いなら保護は必要無い…のでは?」

 納得がいかなかったのか不思議そうにハルがそう尋ねれば、ケイリーさんはあっさりとまあそうだなと頷いた。

「シュリくんのような人の言葉を喋れる馬は、精霊に近い存在なんじゃないかと言われているんだよ」

 ハルが言った通り、強い存在だから別に保護は必要無いらしいんだけど、それでも大事にしたいからと王家が交渉して納得したウマだけを保護しているらしい。

 ちなみに保護なんて必要ないと、交渉が決裂するウマもやっぱりいるらしいよ。その場合はそのウマの好きなように生きてもらうんだって。ウマの意思が第一に優先されるのは、良い事なのかもしれないな。

「えっと…じゃあ母さまは、何をしてるの?」

 そうだよね。さっきグレースさんがいなかった理由が分かったって言ったって事は、シュリくんの事に関わってるって事だよね。

「グレースは、不思議とウマに好かれる体質だからな。友人である王妃様に頼まれて、昔から定期的に保護施設まで足を運んでいるんだ」

 なかでもシュリくんはかなり珍しい、人の言葉を話せるウマ同士のこどもらしい。

 身を守る術の無い幼いシュリくんが人の言葉を話し始めた時、両親は一気に人を警戒するようになったんだって。

「そんな中でも、王妃様とグレース、そしてたった一人の世話役の人だけが近づけたんだ」
「へー母さま、すごいね!」
「ああ、グレースはすごいんだよ!」

 そんなに大事にしてたシュリくんが攫われてしまったら、ご両親はどれだけ心配しているだろう。

「だからおそらく…シュリが攫われてしまったせいで暴れるご両親ウマを宥めるために、グレースは呼び出されているんだと思うんだ」
「あー…」
「父さん、はやくシュリの両親に伝えた方が良いのでは?」
「ああ、この後、すぐに領主城に戻って魔道具で連絡するよ」

 ケイリーさんはシュリも無事だったし、きっとグレースもすぐに帰ってくるなと嬉しそうな笑みを浮かべた。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。