生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1072.後を追って

 ケイリーさんと護衛の騎士さんたちが出て行ったのを確認した俺達は、しばらく待ってから揃って衛兵詰所を出発した。メンバーは俺とハルにキースくんとシュリくん、そして大人の馬の3人と2頭だ。

 うっかり途中で追いつかないように気をつけないといけないなーと思ってたんだけど、どうやらそんな心配はいらなかったみたいだ。

「わー領主様だー!」
「ケイリー様ぁ!」
「カッコいいー!!」
「おお、手を振って下さったぞ!」

 そんな住民たちの歓声が、俺たちが進む道の先の方からずーっと聞こえてくるんだ。その歓声のおかげで、今どのあたりにケイリーさん達がいるのかがすぐに分かるんだよね。距離も測りやすくてすっごく助かってる。

 ちなみにキースくんは父様はすごいと誇らしげに、ハルはあまりに盛大な歓声にちょっと苦笑しながらも無言で歩き続けている。

「いやー今日は領主様を見れるとか、すっげぇ良い日だな!」
「そうだなー今日は良い日だ!」

 そんな事を笑顔で言い合っている人たちの声が聞こえてきたかと思えば、運悪く会えなかった人たちの嘆きの声も聞こえてくる。

「は?領主様がここを通ったのか?」
「ああ、確かに通ったぞー!この目でばっちり見たからな!」
「はー嘘だろ?嘘だって言ってくれよ!俺たったいま来たから見れてねぇ!」
「それは残念だったな」
「今朝の合同訓練に出発するファーガス様とマチルダ様の姿は見たんだが…」
「え、俺はそっちを見れてない!良いなー!」

 大声でお互いを羨むような会話している冒険者たちの隣をそっとすり抜けて、俺たちはさらに足を動かした。どうやら領主様を一目みたいと、ケイリーさん達と一緒に人波が移動しているみたいだ。そのおかげで、この辺りはそこまで混雑してないのがすごくありがたい。

 馬さんとシュリくんもこういう状況には慣れているのか、落ち着いた様子で人の隙間を進んでくれている。

 それにしても、こうして改めて見てみると街中でも馬を連れて歩いてる人って結構多いんだな。

 ウェルマール領都の街中を騎乗したままで移動できるのは騎士や衛兵、または非常事態の時だけらしいから、今見える範囲にいる馬はみんな紐を引かれている状態だ。

 そのおかげで特に目立つ事もなく移動できているのが、すごくありがたい。

 そんな事を考えながらすれ違った馬を何気なく目で追っていると、不意にハルが心配そうに声をかけてきた。

「アキト…どうかした?」
「あ、ごめん。ただ馬を見つめてただけ」
「ああ、確かに街中にウマが入れる場所はそう多くないもんね」

 ハルからそう言われて、俺はやっと目の前の光景が珍しいものである事に気がついた。

 そういえばトライプールでもその他の街でも、馬が集まっている場所はどこも必ず壁の外だったな。トライプールだと壁の外にある馬車乗り場のところに、連れてきた馬が預けられるって聞いたけど、たしかに領都の中ではみかけた事がなかった。

「もしかして…他の街は禁止されてたの?」
「ああ、そこも説明してなかったか」

 俺の説明不足だなと反省し始めたハルに、俺は慌ててそんな事は無いよと声をかけた。

「というか…ここは馬が入っても良いんだね?」
「ああ、ウェルマール領都はウマの出入りを一切禁じてないんだ」

 他の場所から来た旅人ですら、街中に馬を連れて入る事ができるらしい。

「まあ、さすがに怒ってるウマとか、今にも暴れそうなウマは入り口で止めて落ち着かせるけどな」
「あ、僕もいちどだけ見た事があるんだけど、衛兵のおじいちゃんが飛び乗ってねーそのまま外に走りに行ってたよ」

 え、そういう落ち着かせ方なんだ。驚いて思わずハルに視線を向ければ、ハルは苦笑しながら答えた。

「ああ、走り足りなくて暴れたい気持ちのウマには、それが一番良い手だからな」

 気が済むまで走りきれば自然と自分で街に帰ろうとするからなーと、ハルはあっさりとそう言って笑みを浮かべた。

 ううん、やっぱりここの領の人ってすごいな。おおらかで大胆で、でも人として魅力的だと思う。

「あ、そろそろ森の入口だね」

 キースくんの声で視線を向ければ、確かに遠くの方に森の入口が見えた。

 ここまでついてきていた住民たちも、森に入ればそれ以上は追わないという暗黙のルールがあるらしい。それぞれが自由に去っていくのを見守ってから、俺達はゆっくりと森に足を踏み入れた。

 ひたすら森を歩いていけば、やがて木々の間から立派な領主城が見えてくる。

 お城を見た瞬間、やっとここに帰って来れたと思った自分に笑ってしまった。

 俺とキースくんが攫われてからここに帰ってくるまで、まだ二日も経ってないのにね。そう考えたらすっごいスピード解決なんだけど、何だかホッとしてしまった。
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