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1073.違う入口の理由
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すこし早歩きで辿り着いた領主城の前には、執事のボルトさんを筆頭にたくさんの使用人さんたちがずらりと並んで待ってくれていた。俺達の出迎えのためだけに、ずっとここで待機してくれてたのか。
ケイリーさんにあまり時間をかけすぎないようにって言われたから急いで来たつもりだったけど、もっと急いだほうが良かったかな。
「おかえりなさいませ、皆様」
すっと一歩前に出た執事長のボルトさんが見事な礼と共にそう口を開けば、後ろに並んだ使用人のみなさんも揃った声でおかえりなさいませと声をかけてから礼をしてくれた。
「みんな、ただいま」
「ただいま戻りました!」
俺とキースくんがそう答えれば、みんな嬉しそうな笑顔を見せてくれる。うっすらと涙を浮かべている人もいるから、よっぽど心配してくれていたんだろうな。
「アキト、キース。中に入ろうか」
「ええ、どうぞこちらへ」
案内されたのはいつも使っている玄関では無く、少し離れた所にある大きな扉の方だった。あれ、いつもの場所じゃないんだと思った瞬間、ボルトさんが笑顔で理由を教えてくれた。
「そちらの二頭の馬のお客様には、玄関では入りにくいでしょうから」
あーそっか。確かにいつもの玄関近くは決して狭くは無いんだけど、綺麗な花瓶とかが飾られていたりするもんね。
そんな事まで考えてくれてるんだと感心していると、ハルが理由は他にもあるんだろう?と意味深な事を口にした。
「ええ、そちらの理由の方が大きいですね」
え、なんだろう。そちらの理由って一体何ですか?と俺が尋ねるよりも前に、ボルトさんがさっと機敏な動きで大きな扉を開いた。
開いた扉の向こうにあったのは、今開けてくれたのと全く同じ形の扉だった。何だろうこの部屋。確かに広々としてるけど、本当にドアだけがある部屋だ。
「ほら、みんな入って」
ハルがそう声をかければ、キースくんがささっと部屋に入った。その後に続いたシュリくんも恐る恐る慎重に足を進めている。ちなみに大人の馬は、ハルをちらりと見てからそのまま悠々と中へと足を踏み入れてたよ。何だか動きに余裕があって格好良いんだよね、この馬さん。
「アキトも早くおいで」
ハルに手招きされて部屋へと入れば、すっと中に入ったボルトさんが背後のドアを閉めた。カチャリと音が鳴ったのを確認してから、ハルがドアを開ける。
途端に、俺達は物凄い量の歓声に包まれた。一体何が起きたって思うぐらいの大騒ぎだ。
あまりの歓声にびっくりしたシュリくんが、ぴょこんっと跳ねたぐらいだからね。そんなシュリくんを大人の馬さんが優しく宥めているのが、視界の端に見えた。
歓声を放ったのは、領主城の使用人の皆さんだった。
「ああ、よくぞ、よくぞご無事で!」
「お二人ともお元気そうですね」
「…無事で…良かった…です」
「自力で脱出とは、すごいですね。さすがお二人です!」
「帰宅を信じておりました!」
「お疲れでしょう?お部屋の寝具はいつもに増して丁寧に綺麗にしております!」
「おかえりなさいませ!」
さっきはいっせい過ぎて何を言っているのかも分からなかったけど、落ち着いて聞いてみれば俺達の帰宅を喜んでくれている言葉ばかりだ。
さっき入口で立ってくれていた人たちも、気づけば違うドアから合流していて俺達を囲むように立っている。
「お出迎えありがとー」
キースくんは特に動じた様子もなく、普通に笑顔でそう答えている。この勢いに圧倒されないんだ。すごいな、キースくん。
感心していると、ハルが苦笑して声をかけてきた。
「アキト、びっくりした?」
「うん、びっくりした。みんなが歓迎してくれて嬉しいんだけど…」
「ボルトがこの部屋を選んだもう一つの理由は、出迎えの時の大騒ぎが外に漏れないから…だよね?」
「ええ、領主様からお二人の帰宅が告げられた後、普段は聞きわけの良い使用人たちが自分もお出迎えしたいと言って譲らなかったんです」
「それで大騒ぎになるのが分かっていたから、表にいたのは落ち着いた対応を見せられる使用人のみでその他はここに待機してたんだな」
もしここに家族の皆がいたら、きっともっと大騒ぎになってたけどなと、ハルは楽し気に笑って続けた。そっか。今はこの城にいるハルの家族は、ケイリーさんとキースくんだけなのか。
「先ほど帰宅の一報を回しましたから、おそらくまだまだ増えますよ」
そう言って笑ったボルトさんの言葉にかぶせるように、部屋のドアがバンッとすごい勢いで開いた。
ケイリーさんにあまり時間をかけすぎないようにって言われたから急いで来たつもりだったけど、もっと急いだほうが良かったかな。
「おかえりなさいませ、皆様」
すっと一歩前に出た執事長のボルトさんが見事な礼と共にそう口を開けば、後ろに並んだ使用人のみなさんも揃った声でおかえりなさいませと声をかけてから礼をしてくれた。
「みんな、ただいま」
「ただいま戻りました!」
俺とキースくんがそう答えれば、みんな嬉しそうな笑顔を見せてくれる。うっすらと涙を浮かべている人もいるから、よっぽど心配してくれていたんだろうな。
「アキト、キース。中に入ろうか」
「ええ、どうぞこちらへ」
案内されたのはいつも使っている玄関では無く、少し離れた所にある大きな扉の方だった。あれ、いつもの場所じゃないんだと思った瞬間、ボルトさんが笑顔で理由を教えてくれた。
「そちらの二頭の馬のお客様には、玄関では入りにくいでしょうから」
あーそっか。確かにいつもの玄関近くは決して狭くは無いんだけど、綺麗な花瓶とかが飾られていたりするもんね。
そんな事まで考えてくれてるんだと感心していると、ハルが理由は他にもあるんだろう?と意味深な事を口にした。
「ええ、そちらの理由の方が大きいですね」
え、なんだろう。そちらの理由って一体何ですか?と俺が尋ねるよりも前に、ボルトさんがさっと機敏な動きで大きな扉を開いた。
開いた扉の向こうにあったのは、今開けてくれたのと全く同じ形の扉だった。何だろうこの部屋。確かに広々としてるけど、本当にドアだけがある部屋だ。
「ほら、みんな入って」
ハルがそう声をかければ、キースくんがささっと部屋に入った。その後に続いたシュリくんも恐る恐る慎重に足を進めている。ちなみに大人の馬は、ハルをちらりと見てからそのまま悠々と中へと足を踏み入れてたよ。何だか動きに余裕があって格好良いんだよね、この馬さん。
「アキトも早くおいで」
ハルに手招きされて部屋へと入れば、すっと中に入ったボルトさんが背後のドアを閉めた。カチャリと音が鳴ったのを確認してから、ハルがドアを開ける。
途端に、俺達は物凄い量の歓声に包まれた。一体何が起きたって思うぐらいの大騒ぎだ。
あまりの歓声にびっくりしたシュリくんが、ぴょこんっと跳ねたぐらいだからね。そんなシュリくんを大人の馬さんが優しく宥めているのが、視界の端に見えた。
歓声を放ったのは、領主城の使用人の皆さんだった。
「ああ、よくぞ、よくぞご無事で!」
「お二人ともお元気そうですね」
「…無事で…良かった…です」
「自力で脱出とは、すごいですね。さすがお二人です!」
「帰宅を信じておりました!」
「お疲れでしょう?お部屋の寝具はいつもに増して丁寧に綺麗にしております!」
「おかえりなさいませ!」
さっきはいっせい過ぎて何を言っているのかも分からなかったけど、落ち着いて聞いてみれば俺達の帰宅を喜んでくれている言葉ばかりだ。
さっき入口で立ってくれていた人たちも、気づけば違うドアから合流していて俺達を囲むように立っている。
「お出迎えありがとー」
キースくんは特に動じた様子もなく、普通に笑顔でそう答えている。この勢いに圧倒されないんだ。すごいな、キースくん。
感心していると、ハルが苦笑して声をかけてきた。
「アキト、びっくりした?」
「うん、びっくりした。みんなが歓迎してくれて嬉しいんだけど…」
「ボルトがこの部屋を選んだもう一つの理由は、出迎えの時の大騒ぎが外に漏れないから…だよね?」
「ええ、領主様からお二人の帰宅が告げられた後、普段は聞きわけの良い使用人たちが自分もお出迎えしたいと言って譲らなかったんです」
「それで大騒ぎになるのが分かっていたから、表にいたのは落ち着いた対応を見せられる使用人のみでその他はここに待機してたんだな」
もしここに家族の皆がいたら、きっともっと大騒ぎになってたけどなと、ハルは楽し気に笑って続けた。そっか。今はこの城にいるハルの家族は、ケイリーさんとキースくんだけなのか。
「先ほど帰宅の一報を回しましたから、おそらくまだまだ増えますよ」
そう言って笑ったボルトさんの言葉にかぶせるように、部屋のドアがバンッとすごい勢いで開いた。
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