生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
1,074 / 1,561

1073.違う入口の理由

 すこし早歩きで辿り着いた領主城の前には、執事のボルトさんを筆頭にたくさんの使用人さんたちがずらりと並んで待ってくれていた。俺達の出迎えのためだけに、ずっとここで待機してくれてたのか。

 ケイリーさんにあまり時間をかけすぎないようにって言われたから急いで来たつもりだったけど、もっと急いだほうが良かったかな。

「おかえりなさいませ、皆様」

 すっと一歩前に出た執事長のボルトさんが見事な礼と共にそう口を開けば、後ろに並んだ使用人のみなさんも揃った声でおかえりなさいませと声をかけてから礼をしてくれた。

「みんな、ただいま」
「ただいま戻りました!」

 俺とキースくんがそう答えれば、みんな嬉しそうな笑顔を見せてくれる。うっすらと涙を浮かべている人もいるから、よっぽど心配してくれていたんだろうな。

「アキト、キース。中に入ろうか」
「ええ、どうぞこちらへ」

 案内されたのはいつも使っている玄関では無く、少し離れた所にある大きな扉の方だった。あれ、いつもの場所じゃないんだと思った瞬間、ボルトさんが笑顔で理由を教えてくれた。

「そちらの二頭の馬のお客様には、玄関では入りにくいでしょうから」

 あーそっか。確かにいつもの玄関近くは決して狭くは無いんだけど、綺麗な花瓶とかが飾られていたりするもんね。

 そんな事まで考えてくれてるんだと感心していると、ハルが理由は他にもあるんだろう?と意味深な事を口にした。

「ええ、そちらの理由の方が大きいですね」

 え、なんだろう。そちらの理由って一体何ですか?と俺が尋ねるよりも前に、ボルトさんがさっと機敏な動きで大きな扉を開いた。

 開いた扉の向こうにあったのは、今開けてくれたのと全く同じ形の扉だった。何だろうこの部屋。確かに広々としてるけど、本当にドアだけがある部屋だ。

「ほら、みんな入って」

 ハルがそう声をかければ、キースくんがささっと部屋に入った。その後に続いたシュリくんも恐る恐る慎重に足を進めている。ちなみに大人の馬は、ハルをちらりと見てからそのまま悠々と中へと足を踏み入れてたよ。何だか動きに余裕があって格好良いんだよね、この馬さん。

「アキトも早くおいで」

 ハルに手招きされて部屋へと入れば、すっと中に入ったボルトさんが背後のドアを閉めた。カチャリと音が鳴ったのを確認してから、ハルがドアを開ける。

 途端に、俺達は物凄い量の歓声に包まれた。一体何が起きたって思うぐらいの大騒ぎだ。

 あまりの歓声にびっくりしたシュリくんが、ぴょこんっと跳ねたぐらいだからね。そんなシュリくんを大人の馬さんが優しく宥めているのが、視界の端に見えた。

 歓声を放ったのは、領主城の使用人の皆さんだった。

「ああ、よくぞ、よくぞご無事で!」
「お二人ともお元気そうですね」
「…無事で…良かった…です」
「自力で脱出とは、すごいですね。さすがお二人です!」
「帰宅を信じておりました!」
「お疲れでしょう?お部屋の寝具はいつもに増して丁寧に綺麗にしております!」
「おかえりなさいませ!」

 さっきはいっせい過ぎて何を言っているのかも分からなかったけど、落ち着いて聞いてみれば俺達の帰宅を喜んでくれている言葉ばかりだ。

 さっき入口で立ってくれていた人たちも、気づけば違うドアから合流していて俺達を囲むように立っている。

「お出迎えありがとー」

 キースくんは特に動じた様子もなく、普通に笑顔でそう答えている。この勢いに圧倒されないんだ。すごいな、キースくん。

 感心していると、ハルが苦笑して声をかけてきた。

「アキト、びっくりした?」
「うん、びっくりした。みんなが歓迎してくれて嬉しいんだけど…」
「ボルトがこの部屋を選んだもう一つの理由は、出迎えの時の大騒ぎが外に漏れないから…だよね?」
「ええ、領主様からお二人の帰宅が告げられた後、普段は聞きわけの良い使用人たちが自分もお出迎えしたいと言って譲らなかったんです」
「それで大騒ぎになるのが分かっていたから、表にいたのは落ち着いた対応を見せられる使用人のみでその他はここに待機してたんだな」

 もしここに家族の皆がいたら、きっともっと大騒ぎになってたけどなと、ハルは楽し気に笑って続けた。そっか。今はこの城にいるハルの家族は、ケイリーさんとキースくんだけなのか。

「先ほど帰宅の一報を回しましたから、おそらくまだまだ増えますよ」

 そう言って笑ったボルトさんの言葉にかぶせるように、部屋のドアがバンッとすごい勢いで開いた。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。