1,082 / 1,561
1081.【ハル視点】飛び出した理由を
俺達が気配を消す魔法の範囲から飛び出すよりも早く、どうやら探索隊は移動を開始していたらしい。
「あー…また、さっきが…いっぱいだ……」
シュリはぽつりと小さな声でそう呟くと、怯えた様子でその場に立ち止まってしまった。
「怖がらせてしまってすまない」
俺はそう声をかけながら、落ち着いてもらえるようにと優しくシュリの首筋を撫でた。
あんなあからさまな殺気をまとった集団が迫ってくるのを怖がるのは当然の事だろうし、攻撃に転じようとしないだけシュリは理性的だと思う。
「この殺気はあくまでも二人を攫った盗賊に向けたものであってシュリに向けられているわけじゃないんだが…それでもやっぱり怖いかな?」
「…うん、じぶんにむけられてないのはわかってるんだけど…」
それでも怖いんだとすこし申し訳なさそうに口にしたシュリに、俺はニコリと笑みを浮かべながら答えた。
「そうか。じゃあまずは俺が、逃げてきた二人を見つけたと皆に説明しに行ってくる。シュリは心の準備が出来たら、アキトとキースと一緒に来てくれるか?」
無理だと言われたら次はどんな作戦を考えるべきだろう。そんな事を考えながら答えを待っていると、控え目な声が聞こえてきた。
「…うん、わかった」
「シュリくん、ずっと僕が一緒にいるから大丈夫だよ」
「うん、ありがとう、キース」
優しくシュリを撫でるキースと、撫でられて嬉しそうに目を細めるシュリの姿に、アキトと俺は思わず視線を交わしてから微笑んでしまった。
なんだかシュリといるキースからは、兄のような雰囲気を感じる。弟のために頑張ろうとする兄らしさというか、張り切っている感じだ。
シュリも嬉しそうに受け入れているから、何とも可愛らしい光景だ。
「じゃあちょっと行ってくるね」
振り返って笑顔でそう声をかければ、アキトが笑顔でいってらっしゃいと返してくれた。
「あーいた!」
「ハル様がいたぞ!」
「勝手に暴走しないでください、ハル様!」
「心配したんですよ!」
俺の姿を見つけるなり、探索隊のメンバー数人からそんな叫び声が飛んできた。勝手に一人で飛び出した俺が、全面的に悪いからな。多少文句を言われるのぐらいは覚悟の上だ。
「勝手にどこかに行かないでください!」
「ハル様を発見しました!」
「自由すぎるだろ、お前」
そんな声が飛び交うなか、俺はまっすぐに探索隊の方へと足を進めた。
「ハル様、ご無事を信じておりました」
「「「おかえりなさいませ」」」
ずらりと並んだ使用人たちからかけられた帰還を祝う声に、俺は手だけで答えた。
集団の真正面に行く手をふさぐかのように立ち止まれば、進んできていた集団もぴたりと足を止めた。
「みんな、勝手に先行してすまない」
俺はそこから見える範囲の全員の顔をぐるりと見回してから、そう口にした。
反応は様々だ。呆れたように笑う人、面白そうに観察している人、安心したと力を抜いている人、尊敬の目で見つめている人もいるな。
だが、思った以上に好意的な視線が多い。他の地域ならあり得ない事かもしれないが、領主一家の家族愛と伴侶愛の重さは周知の事実だからな。飛び出すと思ってたとでも思われているのかもしれない。
「ハル、無事だったんだな」
そう声をかけてきたのは、一番先頭にいたファーガス兄さんだった。
「まったく、急に駆け出したから何事かと思ったよ」
マティ姉さんはクスクスと笑いながらも、無事でなによりだと冷静にそう続けた。
「ハルさんまで攫われたかと思いました…」
心配そうにジルさんがそう言えば、ウィル兄はいやいやと身を乗り出した。
「えー俺は我慢の限界が来て、一人で盗賊団のアジトまで駆けていったのかと思ったよ」
ふふと笑ったウィル兄は、でも理由があるんでしょう?何か成果はあったの?と続けて尋ねてくる。
ああ、まあ俺がここに普通の顔をして戻ってきた時点で、成果があったとは分かるよな。
「まず俺が先行した理由だが、アキトが魔力を練り上げているのを感じたんだ。それが消えてしまう前に、急いでそこまで移動したかった」
説明する時間すら惜しかったと素直な気持ちを伝えれば、ファーガス兄さんはそれなら仕方ないなと納得顔で頷いてくれた。
誰か一人ぐらいは文句を言ってくるかと思ったんだが、予想に反して他の隊員たちも全員が頷いてくれているようだ。
「それでー…?探しに行ったハルが殺気を消して戻ってきたって事は…?」
見つかったんだよね?と言いたげなウィル兄の言葉に、俺はにっこりと笑顔で答えた。
「アキトとキースを見つけたよ」
隊員達は何も言わず、ただ真剣な表情で笑顔の俺を見つめてくる。
「二人とも無事か?」
みんなの言葉を代表してそう尋ねてくれたマティさんに、俺はすぐさまコクリと頷いた。
「ああ、二人とも怪我もしていないし無事だよ」
そう答えた瞬間、わぁぁと歓声が上がった。
「あー…また、さっきが…いっぱいだ……」
シュリはぽつりと小さな声でそう呟くと、怯えた様子でその場に立ち止まってしまった。
「怖がらせてしまってすまない」
俺はそう声をかけながら、落ち着いてもらえるようにと優しくシュリの首筋を撫でた。
あんなあからさまな殺気をまとった集団が迫ってくるのを怖がるのは当然の事だろうし、攻撃に転じようとしないだけシュリは理性的だと思う。
「この殺気はあくまでも二人を攫った盗賊に向けたものであってシュリに向けられているわけじゃないんだが…それでもやっぱり怖いかな?」
「…うん、じぶんにむけられてないのはわかってるんだけど…」
それでも怖いんだとすこし申し訳なさそうに口にしたシュリに、俺はニコリと笑みを浮かべながら答えた。
「そうか。じゃあまずは俺が、逃げてきた二人を見つけたと皆に説明しに行ってくる。シュリは心の準備が出来たら、アキトとキースと一緒に来てくれるか?」
無理だと言われたら次はどんな作戦を考えるべきだろう。そんな事を考えながら答えを待っていると、控え目な声が聞こえてきた。
「…うん、わかった」
「シュリくん、ずっと僕が一緒にいるから大丈夫だよ」
「うん、ありがとう、キース」
優しくシュリを撫でるキースと、撫でられて嬉しそうに目を細めるシュリの姿に、アキトと俺は思わず視線を交わしてから微笑んでしまった。
なんだかシュリといるキースからは、兄のような雰囲気を感じる。弟のために頑張ろうとする兄らしさというか、張り切っている感じだ。
シュリも嬉しそうに受け入れているから、何とも可愛らしい光景だ。
「じゃあちょっと行ってくるね」
振り返って笑顔でそう声をかければ、アキトが笑顔でいってらっしゃいと返してくれた。
「あーいた!」
「ハル様がいたぞ!」
「勝手に暴走しないでください、ハル様!」
「心配したんですよ!」
俺の姿を見つけるなり、探索隊のメンバー数人からそんな叫び声が飛んできた。勝手に一人で飛び出した俺が、全面的に悪いからな。多少文句を言われるのぐらいは覚悟の上だ。
「勝手にどこかに行かないでください!」
「ハル様を発見しました!」
「自由すぎるだろ、お前」
そんな声が飛び交うなか、俺はまっすぐに探索隊の方へと足を進めた。
「ハル様、ご無事を信じておりました」
「「「おかえりなさいませ」」」
ずらりと並んだ使用人たちからかけられた帰還を祝う声に、俺は手だけで答えた。
集団の真正面に行く手をふさぐかのように立ち止まれば、進んできていた集団もぴたりと足を止めた。
「みんな、勝手に先行してすまない」
俺はそこから見える範囲の全員の顔をぐるりと見回してから、そう口にした。
反応は様々だ。呆れたように笑う人、面白そうに観察している人、安心したと力を抜いている人、尊敬の目で見つめている人もいるな。
だが、思った以上に好意的な視線が多い。他の地域ならあり得ない事かもしれないが、領主一家の家族愛と伴侶愛の重さは周知の事実だからな。飛び出すと思ってたとでも思われているのかもしれない。
「ハル、無事だったんだな」
そう声をかけてきたのは、一番先頭にいたファーガス兄さんだった。
「まったく、急に駆け出したから何事かと思ったよ」
マティ姉さんはクスクスと笑いながらも、無事でなによりだと冷静にそう続けた。
「ハルさんまで攫われたかと思いました…」
心配そうにジルさんがそう言えば、ウィル兄はいやいやと身を乗り出した。
「えー俺は我慢の限界が来て、一人で盗賊団のアジトまで駆けていったのかと思ったよ」
ふふと笑ったウィル兄は、でも理由があるんでしょう?何か成果はあったの?と続けて尋ねてくる。
ああ、まあ俺がここに普通の顔をして戻ってきた時点で、成果があったとは分かるよな。
「まず俺が先行した理由だが、アキトが魔力を練り上げているのを感じたんだ。それが消えてしまう前に、急いでそこまで移動したかった」
説明する時間すら惜しかったと素直な気持ちを伝えれば、ファーガス兄さんはそれなら仕方ないなと納得顔で頷いてくれた。
誰か一人ぐらいは文句を言ってくるかと思ったんだが、予想に反して他の隊員たちも全員が頷いてくれているようだ。
「それでー…?探しに行ったハルが殺気を消して戻ってきたって事は…?」
見つかったんだよね?と言いたげなウィル兄の言葉に、俺はにっこりと笑顔で答えた。
「アキトとキースを見つけたよ」
隊員達は何も言わず、ただ真剣な表情で笑顔の俺を見つめてくる。
「二人とも無事か?」
みんなの言葉を代表してそう尋ねてくれたマティさんに、俺はすぐさまコクリと頷いた。
「ああ、二人とも怪我もしていないし無事だよ」
そう答えた瞬間、わぁぁと歓声が上がった。
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。