生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1081.【ハル視点】飛び出した理由を

 俺達が気配を消す魔法の範囲から飛び出すよりも早く、どうやら探索隊は移動を開始していたらしい。

「あー…また、さっきが…いっぱいだ……」

 シュリはぽつりと小さな声でそう呟くと、怯えた様子でその場に立ち止まってしまった。

「怖がらせてしまってすまない」

 俺はそう声をかけながら、落ち着いてもらえるようにと優しくシュリの首筋を撫でた。

 あんなあからさまな殺気をまとった集団が迫ってくるのを怖がるのは当然の事だろうし、攻撃に転じようとしないだけシュリは理性的だと思う。

「この殺気はあくまでも二人を攫った盗賊に向けたものであってシュリに向けられているわけじゃないんだが…それでもやっぱり怖いかな?」
「…うん、じぶんにむけられてないのはわかってるんだけど…」

 それでも怖いんだとすこし申し訳なさそうに口にしたシュリに、俺はニコリと笑みを浮かべながら答えた。

「そうか。じゃあまずは俺が、逃げてきた二人を見つけたと皆に説明しに行ってくる。シュリは心の準備が出来たら、アキトとキースと一緒に来てくれるか?」

 無理だと言われたら次はどんな作戦を考えるべきだろう。そんな事を考えながら答えを待っていると、控え目な声が聞こえてきた。

「…うん、わかった」
「シュリくん、ずっと僕が一緒にいるから大丈夫だよ」
「うん、ありがとう、キース」

 優しくシュリを撫でるキースと、撫でられて嬉しそうに目を細めるシュリの姿に、アキトと俺は思わず視線を交わしてから微笑んでしまった。

 なんだかシュリといるキースからは、兄のような雰囲気を感じる。弟のために頑張ろうとする兄らしさというか、張り切っている感じだ。

 シュリも嬉しそうに受け入れているから、何とも可愛らしい光景だ。

「じゃあちょっと行ってくるね」

 振り返って笑顔でそう声をかければ、アキトが笑顔でいってらっしゃいと返してくれた。



「あーいた!」
「ハル様がいたぞ!」
「勝手に暴走しないでください、ハル様!」
「心配したんですよ!」

 俺の姿を見つけるなり、探索隊のメンバー数人からそんな叫び声が飛んできた。勝手に一人で飛び出した俺が、全面的に悪いからな。多少文句を言われるのぐらいは覚悟の上だ。

「勝手にどこかに行かないでください!」
「ハル様を発見しました!」
「自由すぎるだろ、お前」

 そんな声が飛び交うなか、俺はまっすぐに探索隊の方へと足を進めた。

「ハル様、ご無事を信じておりました」
「「「おかえりなさいませ」」」

 ずらりと並んだ使用人たちからかけられた帰還を祝う声に、俺は手だけで答えた。

 集団の真正面に行く手をふさぐかのように立ち止まれば、進んできていた集団もぴたりと足を止めた。

「みんな、勝手に先行してすまない」

 俺はそこから見える範囲の全員の顔をぐるりと見回してから、そう口にした。

 反応は様々だ。呆れたように笑う人、面白そうに観察している人、安心したと力を抜いている人、尊敬の目で見つめている人もいるな。

 だが、思った以上に好意的な視線が多い。他の地域ならあり得ない事かもしれないが、領主一家の家族愛と伴侶愛の重さは周知の事実だからな。飛び出すと思ってたとでも思われているのかもしれない。

「ハル、無事だったんだな」

 そう声をかけてきたのは、一番先頭にいたファーガス兄さんだった。

「まったく、急に駆け出したから何事かと思ったよ」

 マティ姉さんはクスクスと笑いながらも、無事でなによりだと冷静にそう続けた。

「ハルさんまで攫われたかと思いました…」

 心配そうにジルさんがそう言えば、ウィル兄はいやいやと身を乗り出した。

「えー俺は我慢の限界が来て、一人で盗賊団のアジトまで駆けていったのかと思ったよ」

 ふふと笑ったウィル兄は、でも理由があるんでしょう?何か成果はあったの?と続けて尋ねてくる。

 ああ、まあ俺がここに普通の顔をして戻ってきた時点で、成果があったとは分かるよな。

「まず俺が先行した理由だが、アキトが魔力を練り上げているのを感じたんだ。それが消えてしまう前に、急いでそこまで移動したかった」

 説明する時間すら惜しかったと素直な気持ちを伝えれば、ファーガス兄さんはそれなら仕方ないなと納得顔で頷いてくれた。

 誰か一人ぐらいは文句を言ってくるかと思ったんだが、予想に反して他の隊員たちも全員が頷いてくれているようだ。

「それでー…?探しに行ったハルが殺気を消して戻ってきたって事は…?」

 見つかったんだよね?と言いたげなウィル兄の言葉に、俺はにっこりと笑顔で答えた。

「アキトとキースを見つけたよ」

 隊員達は何も言わず、ただ真剣な表情で笑顔の俺を見つめてくる。

「二人とも無事か?」

 みんなの言葉を代表してそう尋ねてくれたマティさんに、俺はすぐさまコクリと頷いた。

「ああ、二人とも怪我もしていないし無事だよ」

 そう答えた瞬間、わぁぁと歓声が上がった。
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