生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1083.【ハル視点】これからの予定

「さて、それじゃあこれからどうするか…だな。意見がある者はいるか?」

 その場にいる全員を見回したファーガス兄さんは、改めてそう尋ねた。

「お二人とそのウマが助かったのはとても良い事ですが…私は盗賊団を野放しにはしたくありません!」
「それはもちろんそうだよねー、ね、ファーガス兄さん」
「ああ、野放しにはしない。被害もたくさん出ているからな」

 そう答えた瞬間、周りにいる探索隊の隊員達からぶわりと殺気が溢れた。

 こんな至近距離で殺気を浴びさせてしまったが、シュリは怖がっていないか?

 慌てて視線を向けたが、さっきまで皆に囲まれて褒められたり撫でられたりしていたからか、シュリは予想よりもずっと落ち着いた様子だった。今は普通に皆の様子をじっと見つめて観察している。

「ここに集まってくれた皆には悪いんだが、俺はここで離脱して二人とこのウマを連れて帰りたいと思ってる」

 たぶんファーガス兄さんの質問は、俺がこれを言い出しやすくするためのものだろう。そう判断して口にした事だったが、アキトとキースは驚いた様子で俺を見つめている。

 二人揃って、そんな事を言って良いの?って思っている顔だな。

「まあそうなると思ってたよ。なぁ、ジル」

 マティさんは艶やかに笑ってそう答えた。

「ええ。折角逃げてきたのに、その場所までもう一度一緒に行こうなんて言う方がどうかしていると思います」
「そうだよねー俺もそう思ってたよ、ジルー!」

 抱き着くつもりで勢い良く近づいて行ったウィル兄さんの顔を、ジルさんはさっと片手で押さえた。ああ、反応が慣れてるな。いつも兄がすまない。

「やめてください、ウィリアム隊長」
「いつもみたいにウィルって呼んで欲しいのになー」

 よし、これで問題は無いかなと思ったんだが、アキトとキースは少し不安そうに隊員達の方へと視線を向けた。

「私も賛成です」
「一緒に盗賊団の方へ行くと言われた方が、ハル様の正気を疑ってました!」
「ですね。もしそう言われていたら、偽物かと思うところです!」
「それが一番良い案だと思います」
「保護した人は、迅速に安全な場所に移動させるのが鉄則ですからね!」

 二人の視線を受けた騎士達は、爽やかな笑顔で口々にそう答えている。

「あー、俺は盗賊団に借りを返したいんだが…それにハルは必要ねぇからな!」
「ええ、ハルの代わりに存分にお礼をしてきましょうか」
「そうそう、俺達にまかせとけー」
「気にせずに大事な人を優先しとけよ」

 次いで二人が目を向けた衛兵たちは、それじゃあ気を付けてなーと片手を振りながら気軽にそう答えた。

「ウマでの移動でしたら…そう危険も無いでしょう」
「ええ、ハル様がいれば大丈夫です」
「それよりももし盗賊団を放っておけば、またお二人に害を成すかもしれません」
「盗賊団の方を優先しましょうか」
「私も全力で盗賊団の方に対処いたしましょう」

 好戦的に笑った使用人たちは、二人に向かってまた領主城でお会いできるのを楽しみにしておりますと声を返している。

「よし、満場一致で問題なしだな。帰って良いぞ、ハル」
「ありがとう、みんな」
「「ありがとうございます」」

 俺からは見えなかったが、どうやら頭を下げた俺の後ろでアキトとキース、シュリも頭を下げていたようだ。可愛いなーウマくんなんて声が聞こえてきたのには、すこし笑ってしまった。

 この短時間でシュリもだいぶ気に入られているみたいだな。

「それでは俺達はこのまま、盗賊団のアジトの方へと向かうか」
「あの…俺達を追って来てると思うので、アジトに着く前に出くわす可能性が高いと思います」

 牙蛇盗賊団の人たちは俺達を逃がしたらお頭に殺されると大騒ぎしていたと伝えたアキトに、ファーガス兄さんは薄っすらと笑みを浮かべて答えた。

「情報をありがとう、アキトくん。油断はせずに進むようにするよ」
「お頭に殺されると口にしたという事は…そこにはお頭はいないのか…?」
「ええ、そうかもしれませんね。それなら数人は確実に生け捕りにして情報を取らないといけませんね」
「大丈夫大丈夫。そこは俺達が上手くやるってー!」

 ぽんぽんと進んでいく周りの会話を、俺はいつもの事だと聞き流した。

 普段でも盗賊団ごときには手ごわいだろう相手だが、それが怒りと共に本気で向かっていくわけだ。勝ち目はひとつも無いだろうが、二人を攫った報いだと思って甘んじて受け入れてもらおう。
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