生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
1,085 / 1,561

1084.【ハル視点】待ち伏せ

 ルティルーの森の入口までアキトとキース、そしてシュリと一緒に戻っていけば、そこには置いていかれたたくさんのウマ達が自由に動き回っている所だった。

 気ままにうろうろと歩き回って散策しているウマや、近くにある花の香りを楽しんでいるウマ、退屈だったのか座り込んで眠っているウマもいる。

 馬が好きなアキトは、キラキラと目を輝かせてその様子を見守っている。

「ハロルド様、何か問題が…?」

 心配そうな表情で駆け寄ってきたのは、ウマの世話を頼んでいた騎士のうちの一人だった。これだけのウマが自由にしている今の状態でも、常に気配探知をしていたんだな。

 感心しながら答えようとしたが、それよりも前に別の騎士が声をあげた。

「いや待て…キース様だ!」
「おお、ご無事で何よりです!」
「アキト様もご一緒だ!」
「ああ、ありがとう。自分たちで逃げてきてくれたんだ」
「それはすごい!さすがお二人だ!」

 見張りの騎士達は、良かった良かったと心から喜んでくれた。

「俺達は先に帰って良いと、ファーガス兄さんから許可が出たんだ」

 俺の独断で勝手に帰ろうとしているわけじゃないという事は、一応はっきりと言っておかないとな。ちなみに他の人たちはそのまま盗賊退治に向かったと告げれば、騎士達は納得顔で頷いてくれた。

 俺たちが話し込んでいる間に、どうやらシュリは近くにいるウマに挨拶に行っていたようだ。

 会話がひと段落して背後を振り返ってみれば、そこには他のウマから優しく毛づくろいをされているシュリの姿があった。

 明らかに嬉しそうな表情をしているシュリも可愛いんだが、そんな姿を見たキースとアキトが可愛い可愛いと喜んでいる姿もとても可愛いかった。

 ここから先の領都までの移動にはもちろんウマを使うんだが、誰も乗っていない荷物も積んでいないウマを連れて戻るのは非常に目立つ。

 そこでシュリには体格的に釣り合うキースに乗ってもらい、アキトは俺と一緒に大人のウマに乗ってもらう事に決めた。

「キース、シュリ、領都まで頼んだよ」

 騎士達の目が無い間にこっそりとそう声をかければ、キースもシュリも誇らし気にキリリとした顔で頷いてくれた。

 予想外だったのは、数頭のウマがシュリと一緒に帰ると言いたげな素振りを見せた事だ。

 ここにいるのは相棒と呼べる相手がいるウマか、もしくは決まった相手で無くても乗せてくれるような穏やかな気性のウマばかりだ。

 ここに来る事に納得したウマしかいない筈なのにと驚きながらも、きちんと皆を乗せて帰ってきてくれと言葉にして頼む。

 丁寧にそう要望を伝えれば、ウマ達はしぶしぶと諦めてくれた。



 街道はウマに乗って走り抜ければ、何の危険も無かった。まだ魔物が多くなる時間帯では無い事、そして冒険者たちが移動を始める時間帯であった事がうまく作用したんだろう。

 あっという間に大門が見える場所まで辿り着いた俺達は、その場ですぐにウマから下りた。ここから先は騎士や衛兵でないと騎乗したままでの移動はできないからな。

 アキトとキースは街歩き用の派手では無い服だし、俺も森で着替えた冒険者装備だからそれほど目立たずに門を通れそうだ。

 領都に入るために並んでいる待機列の後ろに並び、俺達は大門から領都の中へと入った。

 待ちかねているだろう父さんと使用人たちに、早く二人の無事を伝えたい。すぐさまウマを引いたまま領主城へ向かうつもりだったんだが、移動を開始するよりも前にこっそりと近づいてきた若い衛兵から声をかけられた。

「ハル様、お連れ様と共にこちらへ起こし頂けますか?」
「問題は無いが…できれば早く父に会いに行きたいんだが…」

 小さな声でだがしっかりと要望を伝えた俺に、若い衛兵は明らかに困り顔で答えた。

「それがその…領主様ご本人が…こちらに来られていまして…領主城に向かわれてもご不在なんです…」

 なるほど。それはこっそりと声をかけに来る筈だな。待ちかねてここまで来てしまったという事か。俺は片手で頭を押さえてから、衛兵に答えた。

「……あー…そうか。それは父が迷惑をかけてすまなかったな…」
「いえ、そんな。迷惑などとんでもないです」

 慌てた様子で衛兵はそう答えてくれたが、領主本人がいきなり尋ねてきたらまず間違いなく緊張するだろう。

 特に今は、領主相手でも物怖じしないようなベテラン衛兵は揃って探索隊に参加しているからな。若手しかいない中での領主の訪問は、確実に迷惑だ。

「案内を頼めるか?」
「はい、すぐにご案内します」

 ホッとした様子の若い衛兵の案内で、衛兵詰所の建物内にある広い部屋へと向かった。

 外と一枚のドアで繋がっているこの部屋は、遠征に出発するための準備をするための部屋だ。だから馬も一緒に入って良いと説明されて、アキトは驚いた様子だった。

 もしこの部屋以外に案内されるようなら、あの部屋にしてくれと言うつもりだったんだが。父さんはシュリの事は知らないが、もし帰ってくるなら俺のウマと一緒だからという判断だったんだろうな。

 部屋の中にはぽつんと用意された豪華な椅子と、そこに腰かけた父さんの姿があった。ドアを開けて中に入ったアキトとキースの姿に、父さんは大きく目を見開いた。

「…っ!アキトくん、キース!」

 そう叫んだ次の瞬間、父さんは椅子を蹴り倒すような勢いで立ち上がるとすぐさまこちへと駆け寄ってきた。そのままの勢いで、ガバッとアキトとキースを両腕に抱きしめる。

「ああ、二人とも無事に帰ってきてくれてありがとう!おかえり!」

 助けるためにアジトへと向かうよりも、ただ帰ってくるのを待っているだけの方がきっとつらい。珍しくも取り乱した様子の父さんに、アキトとキースは嬉しそうに笑みをこぼした。

「父さま、ただいま!」
「ただいま戻りました、ケイリーさん!」

 二人の返事を聞いて帰ってきた実感が湧いたのか、ふふと笑った父さんは嬉しそうに二人を抱きしめる両腕に力をこめた。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。