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1089.【ハル視点】使用人の気持ち
城へ向かう俺達の足取りは軽い。アキトとキースもようやく帰って来れたと感じているのか、心なしか早歩きだ。
辿り着いた領主城の前には、執事のボルトを筆頭にたくさんの使用人たちがずらりと並んで待っていた。これだけの人数が揃って出迎える事は、実はここでも滅多にない事だ。
先に帰った父さんからアキトとキースの無事は知らされている筈だが、それでも自分の目で確認しようと集まってきているんだろう。二人とも愛されているな。
「おかえりなさいませ、皆様」
すっと一歩前に出た執事長のボルトが、流れるような礼と共にそう口を開く。後ろに並んだ使用人の皆も、おかえりなさいませと声を揃えてから深々と礼をした。
「みんな、ただいま」
「ただいま戻りました!」
アキトとキースが嬉しそうにそう答えれば、全員が笑顔を浮かべて頷いた。うっすらと涙を浮かべている人もいるようだ。
近くに俺に察知できる人の気配は無いとはいえ、ここは誰に見られていてもおかしくない城の外だ。だから使用人たちは必死で自分を律しているんだろう。
ウェルマール辺境伯家に相応しい振る舞いをと考えてくれているのは、俺も知っている。本来なら歓声をあげて、二人の周りに集まっていてもおかしくないぐらいだからな。
そう考えた俺は、すぐに二人に中に入ろうと提案した。ボルトや他の使用人たちから、感謝の視線が向けられたから俺の予想は間違っていないんだろう。
「アキト、キース。中に入ろうか」
「ええ、どうぞこちらへ」
いそいそと案内されたのはいつも使っている玄関では無く、少し離れた所にある大きな扉の前だった。アキトは不思議そうに首を傾げていたが、俺が説明するよりも先にボルトが笑顔で理由を教えていた。
「そちらの二頭のウマのお客様には、玄関では入りにくいでしょうから」
一緒にいるこどものウマが二人の恩人である事も、どうやら父はきちんと伝えていたらしい。そちらに配慮しましたと言いたげなボルトに、俺は笑って声をかける。
「理由は他にもあるんだろう?」
この部屋ならとりあえず外からの人目を気にしなくて良いし、それに使用人たちがたくさん集まっても問題が無い広さがある。そうだろうと匂わせれば、ボルトは笑顔で頷いた。
「ええ、そちらの理由の方が大きいですね」
ボルトはそれ以上の説明はせずに、さっと機敏な動きで大きな扉を開いた。
開いた扉の向こう側にあるのは、今開けたのと全く同じ形の扉だ。ここは外からの視線を遮るために、こういう二重の扉になっている。
「ほら、みんな入って」
俺がそう声をかければ、キースがささっと部屋に入った。その後に続いたシュリも恐る恐る慎重にではあったがすぐに足を進めてくれた。ちなみに俺が乗っていた大人のウマに至っては、俺をちらりと見てからそのまま悠々と中へと足を踏み入れていた。
仕方ないから信用してやろうと、視線だけで言われたような気がするな。まあ良いか。
「アキトも早くおいで」
俺が手招きすれば、アキトは迷いなく部屋へと入ってきた。俺達三人と二頭が中へと入ったのを確認して、ボルトが背後のドアを閉めた。カチャリと音が鳴ったのを確認してから、俺が目の前のドアを開ける。
途端に、物凄い量の歓声に包まれた。
びっくりしたシュリが、ぴょこんっと跳ねるぐらいのすごい歓声だった。そんなシュリを大人のウマは優しく宥めている。
こうなるだろうなと予想が出来ていた俺でも、体が揺れたぐらいの騒々しさだったからな。ゆっくり宥めてやって欲しい。
歓声を放ったのは、扉の中に控えていた領主城の使用人の皆だ。周りの目を気にしなくて良くなった事で、感情を解放したんだろう。
「ああ、よくぞ、よくぞご無事で!」
「お二人ともお元気そうですね」
「…無事で…良かった…です」
「自力で脱出とは、すごいですね。さすがお二人です!」
「帰宅を信じておりました!」
「お疲れでしょう?お部屋の寝具はいつもに増して丁寧に綺麗にしております!」
「おかえりなさいませ!」
あまりにも口々に言葉を発したせいで、あんな歓声になってしまったんだな。
ちなみにさっき入口で出迎えをしてくれていた使用人たちも、しっかりと違うドアから入って合流済みのようだ。
ボルトがドアを閉める前は後ろで控えていたから、全速力で移動したんだろうな。今はアキトとキースを囲むように立っている。
「お出迎えありがとー」
キースはというと、さすがにこの大騒ぎにも特に動じた様子は無かった。数日かけて留守にした後は、可愛がられているキースはこれぐらいの熱量で出迎えられる事もあるからだろうな。
アキトはまだびっくり顔で固まっている。
「アキト、びっくりした?」
苦笑しながら声をかければ、アキトは素直に頷いた。
「うん、びっくりした。みんなが歓迎してくれて嬉しいんだけど…」
「ボルトがこの部屋を選んだもう一つの理由は、出迎えの時の大騒ぎが外に漏れないから…だよね?」
「ええ、領主様からお二人の帰宅が告げられた後、普段は聞きわけの良い使用人たちが自分もお出迎えしたいと言って譲らなかったんです」
「それで大騒ぎになるのが分かっていたから、表にいたのは落ち着いた対応を見せられる使用人のみでその他はここに待機してたんだな」
もしここに家族の皆がいたら、きっともっと大騒ぎになってたけどなと、俺は笑って続けた。
今回は母が不在だし、父とキース以外は全員が探索隊に行っているからこんなもので済んだだけとも言える。
「先ほど帰宅の一報を回しましたから、おそらくまだまだ増えますよ」
そう言って笑ったボルトの言葉にかぶせるように、部屋のドアがバンッとすごい勢いで開いた。
無理は無いとも思うんだが、もし近づいてくる気配でラスだと気づいていなかったら、思わず剣を抜いて身構えてしまっていたかもしれないと思うぐらいの勢いだな。
辿り着いた領主城の前には、執事のボルトを筆頭にたくさんの使用人たちがずらりと並んで待っていた。これだけの人数が揃って出迎える事は、実はここでも滅多にない事だ。
先に帰った父さんからアキトとキースの無事は知らされている筈だが、それでも自分の目で確認しようと集まってきているんだろう。二人とも愛されているな。
「おかえりなさいませ、皆様」
すっと一歩前に出た執事長のボルトが、流れるような礼と共にそう口を開く。後ろに並んだ使用人の皆も、おかえりなさいませと声を揃えてから深々と礼をした。
「みんな、ただいま」
「ただいま戻りました!」
アキトとキースが嬉しそうにそう答えれば、全員が笑顔を浮かべて頷いた。うっすらと涙を浮かべている人もいるようだ。
近くに俺に察知できる人の気配は無いとはいえ、ここは誰に見られていてもおかしくない城の外だ。だから使用人たちは必死で自分を律しているんだろう。
ウェルマール辺境伯家に相応しい振る舞いをと考えてくれているのは、俺も知っている。本来なら歓声をあげて、二人の周りに集まっていてもおかしくないぐらいだからな。
そう考えた俺は、すぐに二人に中に入ろうと提案した。ボルトや他の使用人たちから、感謝の視線が向けられたから俺の予想は間違っていないんだろう。
「アキト、キース。中に入ろうか」
「ええ、どうぞこちらへ」
いそいそと案内されたのはいつも使っている玄関では無く、少し離れた所にある大きな扉の前だった。アキトは不思議そうに首を傾げていたが、俺が説明するよりも先にボルトが笑顔で理由を教えていた。
「そちらの二頭のウマのお客様には、玄関では入りにくいでしょうから」
一緒にいるこどものウマが二人の恩人である事も、どうやら父はきちんと伝えていたらしい。そちらに配慮しましたと言いたげなボルトに、俺は笑って声をかける。
「理由は他にもあるんだろう?」
この部屋ならとりあえず外からの人目を気にしなくて良いし、それに使用人たちがたくさん集まっても問題が無い広さがある。そうだろうと匂わせれば、ボルトは笑顔で頷いた。
「ええ、そちらの理由の方が大きいですね」
ボルトはそれ以上の説明はせずに、さっと機敏な動きで大きな扉を開いた。
開いた扉の向こう側にあるのは、今開けたのと全く同じ形の扉だ。ここは外からの視線を遮るために、こういう二重の扉になっている。
「ほら、みんな入って」
俺がそう声をかければ、キースがささっと部屋に入った。その後に続いたシュリも恐る恐る慎重にではあったがすぐに足を進めてくれた。ちなみに俺が乗っていた大人のウマに至っては、俺をちらりと見てからそのまま悠々と中へと足を踏み入れていた。
仕方ないから信用してやろうと、視線だけで言われたような気がするな。まあ良いか。
「アキトも早くおいで」
俺が手招きすれば、アキトは迷いなく部屋へと入ってきた。俺達三人と二頭が中へと入ったのを確認して、ボルトが背後のドアを閉めた。カチャリと音が鳴ったのを確認してから、俺が目の前のドアを開ける。
途端に、物凄い量の歓声に包まれた。
びっくりしたシュリが、ぴょこんっと跳ねるぐらいのすごい歓声だった。そんなシュリを大人のウマは優しく宥めている。
こうなるだろうなと予想が出来ていた俺でも、体が揺れたぐらいの騒々しさだったからな。ゆっくり宥めてやって欲しい。
歓声を放ったのは、扉の中に控えていた領主城の使用人の皆だ。周りの目を気にしなくて良くなった事で、感情を解放したんだろう。
「ああ、よくぞ、よくぞご無事で!」
「お二人ともお元気そうですね」
「…無事で…良かった…です」
「自力で脱出とは、すごいですね。さすがお二人です!」
「帰宅を信じておりました!」
「お疲れでしょう?お部屋の寝具はいつもに増して丁寧に綺麗にしております!」
「おかえりなさいませ!」
あまりにも口々に言葉を発したせいで、あんな歓声になってしまったんだな。
ちなみにさっき入口で出迎えをしてくれていた使用人たちも、しっかりと違うドアから入って合流済みのようだ。
ボルトがドアを閉める前は後ろで控えていたから、全速力で移動したんだろうな。今はアキトとキースを囲むように立っている。
「お出迎えありがとー」
キースはというと、さすがにこの大騒ぎにも特に動じた様子は無かった。数日かけて留守にした後は、可愛がられているキースはこれぐらいの熱量で出迎えられる事もあるからだろうな。
アキトはまだびっくり顔で固まっている。
「アキト、びっくりした?」
苦笑しながら声をかければ、アキトは素直に頷いた。
「うん、びっくりした。みんなが歓迎してくれて嬉しいんだけど…」
「ボルトがこの部屋を選んだもう一つの理由は、出迎えの時の大騒ぎが外に漏れないから…だよね?」
「ええ、領主様からお二人の帰宅が告げられた後、普段は聞きわけの良い使用人たちが自分もお出迎えしたいと言って譲らなかったんです」
「それで大騒ぎになるのが分かっていたから、表にいたのは落ち着いた対応を見せられる使用人のみでその他はここに待機してたんだな」
もしここに家族の皆がいたら、きっともっと大騒ぎになってたけどなと、俺は笑って続けた。
今回は母が不在だし、父とキース以外は全員が探索隊に行っているからこんなもので済んだだけとも言える。
「先ほど帰宅の一報を回しましたから、おそらくまだまだ増えますよ」
そう言って笑ったボルトの言葉にかぶせるように、部屋のドアがバンッとすごい勢いで開いた。
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