1,092 / 1,561
1091.【ハル視点】収納鞄の活用法
ラスはまるで嵐のようにやって来て、嵐のように去っていった。来た時と違って音もたてずに部屋のドアが閉められると、部屋の中は途端にしんっと静まり返った。
急に変わった部屋の空気に、アキトとキースは不思議そうに首を傾げている。
不意に父さんが、ふふと声を出して楽し気に笑った。自然と部屋にいるみんなの視線が、父さんへと集まっていく。
「まさか大事な料理の仕込み中に、あのラスが飛び出してくるなんてね。ラスは本当にアキトくんとキースの事が大事なんだなぁ」
俺も同じ事を思っていたよ。あのラスが?ってね。
俺もだが、周りの使用人たちも控え目に笑いだした。確かにと頷いている人もいれば、びっくりしたなと笑っている人もいる。
「珍しく調理中もずっとそわそわしておりましたから…。領主様がお許しになるなら、私も別に今の行動を問題には致しませんよ」
ボルトがそう明言すれば、数人の使用人がホッと肩の力を抜いたのが分かった。
まあ普通に考えてドアをすごい勢いで開けて入ってきた上に、領主の言葉を遮るっていうのはどう考えても問題行動だとおもうよな。
うちの領ではそんな事は気にしないんだが、ラスを慕っているからこそ大丈夫だろうかと心配になったんだろう。
笑って流した父さんは、ああ、そうしてくれと笑顔で続けた。
部屋の中の空気が、一気に和やかなものになったな。
「さて、それじゃあさっき途中だった、キースの活躍とやらを教えて貰おうか」
「はい!聞いてくれるならぜひ!」
アキトは嬉しそうに、元気にそう答えた。
「ハル、アキトくん、キースはこっちにおいで」
父さんはシュリとウマのいる部屋の隅の方へ向かって歩きながら、そう声をかけてきた。
「では始めましょう」
俺達の移動を待ってから、おもむろに口を開いたのはボルトだった。
不思議そうなアキトが見つめるなか、使用人たちはきびきびと動き出す。
「ああ、アキトとキースの話しを聞きたい者は、誰でも参加を許可するよ」
父さんがそう言葉を付け足せば、部屋の中にいる使用人たちからもう一度歓声があがった。さすが領主様とか、これだからケイリー様は最高なんだよな、なんて声がそこここから聞こえてくる。
ここで使用人を追い出すような事は、しないと思っていたよ。それよりも俺は戸惑っているアキトが気になった。
「アキト、安心して、今から部屋の用意をするだけだから」
笑顔で声をかければ、アキトはゆるりと首を傾げた。部屋の用意って何?と顔に書いてあるな。言葉のままの意味なんだが、さてどう説明しようか?
「それでは、必要なものは全てここに置きますので、みなさんは手分けをして移動をお願いします。そうですね…今回は晩餐会のCパターンで並べるように」
そう声をかけたボルトが取り出したのは、かなり無骨な見た目の鞄だ。ああ、あれか。
ボルトはアキトの視線に気づくと、にっこりと笑みを浮かべてから巨大なテーブルを鞄の中から取り出してみせた。
「え、テーブル!?」
「ああ、あれはねうちの領で一番容量が大きい鞄なんだ」
父さんはそう言うと、執事長のボルトかメイド長のリモが管理してるんだけどねとさらりと説明した。あの中にはそれはもう様々な大きさの各種家具や食器類が、みっちりと収められている。
魔導収納鞄は、見た目より何より収納できる量で値段が変わる。おそらくこれも売りに出せばきっとすごい値がつくんだろう。
うちの領では、数代前の領主がダンジョンで偶然入手してからずっとこうして便利に使われているわけだが。
今度は山のような椅子がずらりとその場に並べられていき、使用人たちはその椅子をささっともってきびきびと動き回っている。
最初に晩餐会のCパターンと告げられているから、細かい指示が必要無いんだよな。よくよく見れば晩餐会のパターンに詳しくない侍従とメイド以外の使用人は、邪魔にならないように壁際に避難している。
「すご…」
思わずといった様子のアキトの声に、俺は苦笑しながら答えた。
「まあ、他の領なら、まず間違いなくこういう用途では使わないだろうな」
「便利なんだから良いだろう」
父さんはそう言って笑った。
まあそうだな。俺もそう思うよ。
俺達がそうして話している間に、室内にはずらりと椅子とテーブルが並べられた。さっきまで何も無かった部屋は、今では晩餐会の会場に早変わりだ。
「お待たせしました。みな様、どうぞこちらへ」
ボルトに呼ばれて再びぞろぞろと移動すれば、部屋の真ん中に位置する一際豪華なテーブルへと案内される。父さんは慣れた様子で一番最初に腰を下ろすと、みんなも座ってと声をかけた。
「飲み物をご用意して参りました」
腰を下ろすなり近づいてきたワゴンを押したメイドは、何が良いかを聞きながらいそいそと飲み物を配ってくれた。
これは何というか、たくさんお話してくださいという圧を感じるな。
急に変わった部屋の空気に、アキトとキースは不思議そうに首を傾げている。
不意に父さんが、ふふと声を出して楽し気に笑った。自然と部屋にいるみんなの視線が、父さんへと集まっていく。
「まさか大事な料理の仕込み中に、あのラスが飛び出してくるなんてね。ラスは本当にアキトくんとキースの事が大事なんだなぁ」
俺も同じ事を思っていたよ。あのラスが?ってね。
俺もだが、周りの使用人たちも控え目に笑いだした。確かにと頷いている人もいれば、びっくりしたなと笑っている人もいる。
「珍しく調理中もずっとそわそわしておりましたから…。領主様がお許しになるなら、私も別に今の行動を問題には致しませんよ」
ボルトがそう明言すれば、数人の使用人がホッと肩の力を抜いたのが分かった。
まあ普通に考えてドアをすごい勢いで開けて入ってきた上に、領主の言葉を遮るっていうのはどう考えても問題行動だとおもうよな。
うちの領ではそんな事は気にしないんだが、ラスを慕っているからこそ大丈夫だろうかと心配になったんだろう。
笑って流した父さんは、ああ、そうしてくれと笑顔で続けた。
部屋の中の空気が、一気に和やかなものになったな。
「さて、それじゃあさっき途中だった、キースの活躍とやらを教えて貰おうか」
「はい!聞いてくれるならぜひ!」
アキトは嬉しそうに、元気にそう答えた。
「ハル、アキトくん、キースはこっちにおいで」
父さんはシュリとウマのいる部屋の隅の方へ向かって歩きながら、そう声をかけてきた。
「では始めましょう」
俺達の移動を待ってから、おもむろに口を開いたのはボルトだった。
不思議そうなアキトが見つめるなか、使用人たちはきびきびと動き出す。
「ああ、アキトとキースの話しを聞きたい者は、誰でも参加を許可するよ」
父さんがそう言葉を付け足せば、部屋の中にいる使用人たちからもう一度歓声があがった。さすが領主様とか、これだからケイリー様は最高なんだよな、なんて声がそこここから聞こえてくる。
ここで使用人を追い出すような事は、しないと思っていたよ。それよりも俺は戸惑っているアキトが気になった。
「アキト、安心して、今から部屋の用意をするだけだから」
笑顔で声をかければ、アキトはゆるりと首を傾げた。部屋の用意って何?と顔に書いてあるな。言葉のままの意味なんだが、さてどう説明しようか?
「それでは、必要なものは全てここに置きますので、みなさんは手分けをして移動をお願いします。そうですね…今回は晩餐会のCパターンで並べるように」
そう声をかけたボルトが取り出したのは、かなり無骨な見た目の鞄だ。ああ、あれか。
ボルトはアキトの視線に気づくと、にっこりと笑みを浮かべてから巨大なテーブルを鞄の中から取り出してみせた。
「え、テーブル!?」
「ああ、あれはねうちの領で一番容量が大きい鞄なんだ」
父さんはそう言うと、執事長のボルトかメイド長のリモが管理してるんだけどねとさらりと説明した。あの中にはそれはもう様々な大きさの各種家具や食器類が、みっちりと収められている。
魔導収納鞄は、見た目より何より収納できる量で値段が変わる。おそらくこれも売りに出せばきっとすごい値がつくんだろう。
うちの領では、数代前の領主がダンジョンで偶然入手してからずっとこうして便利に使われているわけだが。
今度は山のような椅子がずらりとその場に並べられていき、使用人たちはその椅子をささっともってきびきびと動き回っている。
最初に晩餐会のCパターンと告げられているから、細かい指示が必要無いんだよな。よくよく見れば晩餐会のパターンに詳しくない侍従とメイド以外の使用人は、邪魔にならないように壁際に避難している。
「すご…」
思わずといった様子のアキトの声に、俺は苦笑しながら答えた。
「まあ、他の領なら、まず間違いなくこういう用途では使わないだろうな」
「便利なんだから良いだろう」
父さんはそう言って笑った。
まあそうだな。俺もそう思うよ。
俺達がそうして話している間に、室内にはずらりと椅子とテーブルが並べられた。さっきまで何も無かった部屋は、今では晩餐会の会場に早変わりだ。
「お待たせしました。みな様、どうぞこちらへ」
ボルトに呼ばれて再びぞろぞろと移動すれば、部屋の真ん中に位置する一際豪華なテーブルへと案内される。父さんは慣れた様子で一番最初に腰を下ろすと、みんなも座ってと声をかけた。
「飲み物をご用意して参りました」
腰を下ろすなり近づいてきたワゴンを押したメイドは、何が良いかを聞きながらいそいそと飲み物を配ってくれた。
これは何というか、たくさんお話してくださいという圧を感じるな。
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。