生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1093.【ハル視点】二人の話

 他のテーブルに座っている使用人たちは、興味深そうにこちらのテーブルの様子を伺ってはいるがなかなか口を開こうとはしない。テーブルからこちらまで距離があるからか、それとも遠慮しているんだろうか。

 それならと顔を見合わせた父さんと俺は、あれこれと思いつくままに質問を重ねていく。結果としてかなり細かい質問になってしまったが、アキトとキースは嫌そうな素振りもなく楽しそうに話してくれた。

 まあ、話してくれる内容は、話題が話題なだけに決して楽しい話ばかりというわけじゃないんだが。

 兄弟だと思われたおかげで油断させる事ができた話。寝たふりをして二人で情報収取をした話。

 この辺りはさすが二人だなと、感心しながら聞いていられた。

 ただ捕まっていた場所についての詳細な話には、俺も父さんも思わず眉をしかめてしまった。わざわざ見てはいないが、使用人たちもきっと同じような顔をしていただろう。

 見張りが最低でも常に一人は張りついていて、しかも壁は魔法以外の手段で潰せるとは思えないほど頑丈だった。そう聞いてしまえば、今ここに脱出して無事だと分かっていても嫌な気持ちになる。

「見張りもつけられている上に頑丈そうな部屋だったとは…」
「いや、だが、逆に考えれば牢屋のようなひどい環境で捕まっていたわけじゃ無いのは良い事だと思わないか?」

 うっすらと聞こえてきた使用人の声に、たしかにそうだなと思わず頷いてしまった。

「まあ、そうだが」
「だからといって許せるわけじゃない…がな」
「あーそうだよな。もし万が一お二人が牢屋のような部屋になんて入れられていたら…今からでもアジトまで向かいたくなるな」
「分かる」

 ああ、その気持ちは俺もすごくよく分かる。

「それにしても…見張りが常にいる頑丈そうな部屋とは…二人はそこからどうやって逃げてきたんだい?」

 父さんにそう聞かれたアキトとキースは、二人して顔を見合わせた。

 ああ、俺にはシュリが頑張ってくれたおかげで脱出できたんだと言ってたな。シュリの事に触れずに、いったいどう説明すれば良いのかと悩んでいるようだ。

 うーん、出来る事なら助けを出したい所だが、俺は一緒に攫われたわけじゃないからな。俺がここで口を開くと、何故アキト様は説明しなかったんだと思われるかもしれない。ここはぐっと我慢だな。

 話し出すのをじっと待っていると、口を開いたのはキースだった。

「えっとね…あそこにいる小柄な馬くんも、僕たちと同じように捕まってたんだ」
「なんと言う事だ!まだこんなにも小さいのに…」

 思わずと言った様子でぼつりとそう呟いたのは、ウマの世話をする使用人たちを率いているギュームという男だ。知らない人だなと思っていそうなアキトに、ウマの世話に命を賭けていると公言しているウマの世話係だとそっと告げた。

「たまたまあの子が逃げようとして暴れてるのが聞こえてきたから、ちょうど良いってアキトくんが魔力を練ってくれたんだよ」
「なるほど!つまりアキト様の魔法で逃げたという事ですか!」
「さすがアキト様です!」
「素晴らしいですね!」

 キラキラと輝く目で使用人たちに見つめられたアキトは、慌てた様子でぶんぶんと首を振った。

「いえ、それが…魔法が発動できなくする魔道具があったみたいで…魔力を練る事だけはできたけど、発動はできなかったんです」
「魔法が発動しない魔道具…か…」
「…やっぱり父さんもそこが気になるよね。俺も背後にどんなやつがいるんだろうと思ったよ」
「これは…調べる事が増えたな」
「ああ、でも大丈夫だよ。張り切って生け捕りにするってみんなが言ってたから」

 可能なら全員生け捕りにするかもしれない、そう思うぐらいの勢いだったからな。盗賊団に関する情報がたくさん手に入る事になるから、いくら捕まえてくれても歓迎だが。

「それでは…どうやって?」

 さすがに続きが気になったのか、使用人の一人が尋ねた。

「アキトくんの魔力を察知したあの馬くんがね、壁を破って会いにきてくれたんだ」

 ニコニコ笑顔で嬉しそうに言うキースに、部屋の中はしんと静まり返った。

「それは…」
「助けて頂いた事はすばらしい事ですが…」
「よく怖がらなかったですね…」

 使用人たちは困惑しつつも、何とか言葉を搾り出したといった様子だ。

 まあそうなるよな。客観的に考えれば、いくら幼いとはいえウマが壁を破っていきなり登場したら、怖いと思うものだろう。

「ああ、お二人を守るために頑張ってくださったのですね」

 ウマの世話係のギュームだけが、嬉しそうにキラキラと輝く目でシュリを見つめている。うん、あいつは例外だ。

「優しい目をしてたからねー僕たちに怒ってるわけじゃないってすぐに分かったから。それにね、はじめましての僕たちに、乗って良いよって主張してくれたんだよ!」

 だから怖いとかは思わなかったなと、キースは笑った。同意を求められたアキトも、コクコクと頷いている。

「元々俺は馬が好きですし…こちらがひどい事をしなければ何もされないって思ってたので」

 うん、アキトならそう言うと思ったよ。俺としては納得の返事だったが、使用人たちは驚いたようだ。俺は、わざとらしく大きな仕草で頷いてみせる。

「俺が思わず嫉妬するぐらいにはアキトはウマが好きだし、それにウマもアキトが好きだよ。アキトがウマに嫌われるのを見た事がないぐらいに…とにかくウマに好かれる体質なんだよ…」
「おお、まるでグレースのようだな」

 楽し気な父さんの言葉に、俺は苦笑しながら頷いた。

「確かにそう言われると…母のような好かれ方だな」
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