生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1095.【ハル視点】シュリのごはん

「本当にキースくんには、いっぱい助けてもらったんです」

 そう続けたアキトは、みんなにもキースの凄さを少しでも伝えられたと満足そうだ。それにしても、いっぱい助けられたという事は他にもキースが活躍した話しがあるって事だよな。

 そう思ったのは俺だけでは無かったようだ。

「アキト様…他にも何かあるのなら、ぜひ私たちに教えてください」
「「「「「ぜひっ」」」」」

 綺麗に声を重ねた使用人たちからの催促に、アキトはにっこりと笑みを返した。

「はいっ!聞いて下さい!」
「もう良いよーアキトくん」

 さすがに目の前で堂々と自分の自慢話しをされるのは、キースも恥ずかしいようだ。やんわりとアキトを止めようと声をあげた。

 あれ、これはもしかして話して貰えないのか?そんな空気が使用人たちに流れるなか、アキトは言いたいなと言いながらじっとキースを見つめた。

 もし相手がキースでなければ、心穏やかに見守れなかったかもしれないと思うぐらい可愛い表情をしてる。お願いをするような、まるで甘えているようなそんな表情だ。

「分かった…もう好きにして」

 キースもさすがにアキトには勝てなかったらしい。

「馬くんが壁を潰してくれたから、アジトからは結構簡単に出られたんです」

 まだここでシュリの名前を出すわけにはいかないからか、どうやらウマくん呼びで統一するつもりみたいだな。

「お二人の命の恩人…いや恩ウマ…?なんですね」

 キラキラと目を輝かせて嬉しそうにそう口にしたのは、予想通りではあるがウマの世話係のギュームだ。恩ウマという表現には失笑しかないが、確かにシュリは二人の命の恩人だな。

「おい、後であちらのウマ様にお礼の品を持っていっても良いか?」
「私もぜひ!」
「俺もだ!」

 普段はそれほどウマに興味のない使用人たちまで、気づけばウマ様呼びになっているな。しかも何か差し入れしたいと意気込んでいるようだ。

 ちらりと視線を向ければシュリを隠すように立っているウマは、すこし呆れ顔で盛り上がる使用人たちを見ている。

「いや…あの幼さだと、まだ食べ物は食べれないと思うぞ?」

 ギュームは冷静な声で、盛り上がる使用人たちに向かってそう声をかけた。

「え、そうなのか?俺の秘蔵の肉を贈るつもりだったんだが無理なのか?」
「私のご褒美果物も無理ですか?」
「ああ、どっちもまだ無理だろうな。あれぐらいの歳なら魔力の方が良いんだが…そもそも合う魔力の人がいるかどうか…」

 つらそうに呟いたギュームは、まだシュリがアキトの魔力を吸収できる事を知らないからな。

「キース様とアキト様の命を助けてくださったウマ様ですから…最優先で魔力のお試しをしてもらいましょう」

 ボルトはすぐさまそう提案してくれた。

「ああ、それが良いな。使用人で無理なら騎士と衛兵にまで手を広げるべきだと思う。それも無理なら魔石を試すべきだろう」

 真剣な表情でシュリのために相談を始めたボルトとギュームに、アキトは何故かはいと声をあげ挙手をしてから口を開いた。

「あの、俺の魔力は吸収してくれたので大丈夫だと思います」
「…あのぐらいの年齢だと攻撃のために練られた魔力は吸収できないんですが、よくご存じでしたね?」

 わざわざその子に与えるために魔力を練ったって事ですよねと、ギュームは嬉しそうに尋ねた。アキトがウマ好きだと聞いた後だから、詳しくてすごいですねぐらいの気持ちなんだろうな。

 俺だったら偶然知っていてねぐらいで流す所だが、アキトはそこで黙ってしまった。シュリ本人から聞いた事だから、嘘が吐けなかったんだろう。

 言葉に詰まったアキトを助けたのは、キースだ。

「あのね、逃げてる途中の休憩の時に、ラスさんの作ってくれたパンを出したんだけど、あのウマくんは食べてくれなくて…魔力を食べるって何かの本で見た事があったからそれをアキトくんに伝えたんだ」
「ああ、なるほど。キース様が知っていらっしゃったんですね」

 ギュームは、納得した様子でこくりとひとつ頷いた。キースが種類を問わずに色々な本を読むのは、この領主城の使用人なら誰でも知っている事だからな。不自然でない言い訳だ。

「今後…そちらのウマ様の食事は、アキト様にお願いしてもよろしいでしょうか?」

 父さんと俺、そしてアキトと、順番に視線を動かしつつ、ギュームはそう尋ねてきた。

「うん、もちろん!」
「ああ、アキトくんが良いなら問題は無いよ。無理に他の人の魔力を試すのも、幼いからだの負担になるかもしれないからね」
「俺にとってもそのウマには恩があるからね。文句は無いよ」

 三人で口々に答えれば、ギュームはホッと息を吐いた。さっき出逢ったばかりのウマの事を、ここまで親身になって心配できるのはさすがだな。

「すみません、話しの邪魔をしてしまいましたね」
「いや、大事な事だからそれは良いんだが…アキトくん、他にもあるのかい?」

 ニコニコ笑顔でそう尋ねた父に、アキトはハイッと元気に答えた。

「キャルの花を見つけて、ここはルティルーの森だってすぐに教えてくれたんです。ここの森の街道には魔物を寄せる罠があるんだって話しも、しっかり説明してくれました」

 アキトの説明で、おおーとそこかしこから歓声があがった。

「キャルの花かーさすがキース様だな」
「森の中でその花だけを探すとなると、結構難しいんですよね」
「分かります。しかもキャルの花ですから」
「だよな。俺も一応見た目は知ってるつもりだけど…」
「見分けられる自信が無いよな」

 使用人たちは口々にそう言うと、無理そうだと苦笑を浮かべた。
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