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1096.【ハル視点】キャルの花
キースはそこまで詳しくは説明しなかったのか、キャルの花の判別がそこまで難しいと、アキトは知らなかったようだ。
戸惑った様子のアキトは、俺に助けを求めるような視線をさっと向けてきた。頼られているって嬉しいものだな。
「ルティルーの森にしか咲けないあのキャルの花、薬の材料になるって話しは聞いた?」
「あ、うん。キースくんがそれも教えてくれたよ。キャルの花はあそこからは持ち出せないから、森の中で薬を作ったりするんだって」
そこはちゃんと説明しているのか。ああ、伝え方によっては、見分けられる僕すごいでしょと自慢してる事になるから、あえて言わなかったのかもな。
「そうそう。でもね、見た目はそっくりなクレールって花があるんだ」
そっちはどこの森にでも生えているが、かなり強い毒性がある花だと俺はアキトに向かって続けた。
「え…じゃあ」
「そう、もしクレールの花とキャルの花の見分けに失敗したら、薬どころかすごく危ない毒薬ができちゃうんだよ」
笑顔でそう説明すると、アキトは驚いた様子で大きく目を見開いて俺を見つめてきた。
「まあクレールの解毒剤は、衛兵詰所にも騎士団本部にも備えてあるし、冒険者や旅人なら持ってる人もいるからね」
「そうなんだ」
安心したのか肩の力を抜いたアキトに、父さんが続ける。
「キャルの花を使った薬は、全てを集めて商業ギルドで鑑定しているんだ。きちんとした証明書のあるものしか、まともな店では販売されてないからね」
だからアキトくんも安心して良いよと、父さんは優しく語りかける。俺だけが説明するよりも、他の人からも説明された方がアキトも安心するかもな。
次はキャルの花の説明か。さてどうするかと考えながらちらりと視線を向ければ、キースはこくりと頷いてくれた。自分で説明してくれるらしい。
「あのね、アキトくん。キャルの花にはちゃんと葉脈があるんだけど、クレールの花には葉脈が無いんだよ」
キースの分かりやすい説明に、さっき見分けがつかないと言っていた使用人たちもいそいそとメモを取っている。知っておいて損はない知識だからな。
アキトはと言うと、ワクワクした様子でうんうんと頷きながら説明を聞いているようだ。
「キースくん、教えてくれてありがとう」
「どういたしまして」
「そっか、葉脈を見て見分けてるのか…そう言われるとキャルの花とクレールの花、俺もこの目で違いを見比べてみたかったなー」
うん、そうなるだろうなとは思っていたよ。見分け難い素材の見分け方をくわしく説明されたら、採取が好きな冒険者なら次はやってみたいと思うものだ。
「うーん…キャルの花はあの森に行かないと駄目だから…今はちょっと行かせたくないな」
今日と明日で確実にあそこの牙蛇盗賊団のアジトは無くなるだろうが、それでもまだしばらくはルティルーの森には行って欲しくない。
まあこれはただの俺の我儘だから、どうしても行きたいと言われたら止めるわけにもいかないんだが。
「ごめん。本気で行きたいわけじゃなくて…さすがに俺もしばらくはあの森には近づきたくないよ」
「そっか…今度枯れない花にキャルの花とクレールの花が無いか…聞いてみようか」
そっと耳元に顔を寄せてそう囁けば、アキトはバッと顔をあげた。
「ケンなら、どっちもこの領の名産だからーとか言いながら作っていそうじゃない?」
「うん、作ってると思う!今度レイさんに会いに行く時に聞いてみよう」
「ああ、そうしよう」
ひそひそと声を潜めてアキトと話していると、周りの使用人たちから不思議そうに見つめられてしまった。気になると視線で主張されている気もするが、まだ皆の贈り物が終わっていないからな。まだ枯れない花の事を大々的に広めるわけにはいかない。
「ごめんね。今はまだ言えない話なんだ。話して良い時期になればきちんと話すから」
見回してから牽制するようにあえてはっきりとそう告げれば、使用人たちは揃ってすっと引いてくれた。
「あ、僕もアキトくんのすごい所思い出したよ!」
空気を変えるように、キースが笑顔でそう言い出した。使用人たちは楽しそうに、ぜひ聞きたいですと答えている。
うん、俺も聞きたいな。
「さっきのウマくんのための魔力を感じたハル兄がね、僕たちの所に一人で来てくれたんだけど…」
アキトの活躍の話しだと思って聞いていたら、予想外の言葉が飛び出してきたな。別に特に隠すつもりはなかったが、一人で先行した事はまだ父さんに報告していなかった。
「ハル…?」
にっこりと貼り付けたような笑顔を浮かべた父さんに名前を呼ばれて、俺はそっと視線をあげた。
「魔力を感じたからアキトが攻撃をするような状況にいるのかと気が焦って…その、単独行動をしてすまなかった」
「…まあ良いか。そうなるかもと思って総隊長につけなかったんだからね」
報告をしなかった事はどうかと思うがと、視線だけで軽く叱られてしまった。単独行動は後悔していないが、それについてはすまないと思ってるよ。
「でね!その時近づいて来てるのがハル兄だって、僕たちには分からなくて」
「ああ、気配で誰が来たかまで判断するのは難しいからね」
父さんは、私も人まで特定するのは苦手だよと苦笑を浮かべた。
「まあグレースなら誰が来てるかも完璧に分かるけどね」
自慢げにそう続けた父に、アキトはクスクスと笑い声をあげた。
戸惑った様子のアキトは、俺に助けを求めるような視線をさっと向けてきた。頼られているって嬉しいものだな。
「ルティルーの森にしか咲けないあのキャルの花、薬の材料になるって話しは聞いた?」
「あ、うん。キースくんがそれも教えてくれたよ。キャルの花はあそこからは持ち出せないから、森の中で薬を作ったりするんだって」
そこはちゃんと説明しているのか。ああ、伝え方によっては、見分けられる僕すごいでしょと自慢してる事になるから、あえて言わなかったのかもな。
「そうそう。でもね、見た目はそっくりなクレールって花があるんだ」
そっちはどこの森にでも生えているが、かなり強い毒性がある花だと俺はアキトに向かって続けた。
「え…じゃあ」
「そう、もしクレールの花とキャルの花の見分けに失敗したら、薬どころかすごく危ない毒薬ができちゃうんだよ」
笑顔でそう説明すると、アキトは驚いた様子で大きく目を見開いて俺を見つめてきた。
「まあクレールの解毒剤は、衛兵詰所にも騎士団本部にも備えてあるし、冒険者や旅人なら持ってる人もいるからね」
「そうなんだ」
安心したのか肩の力を抜いたアキトに、父さんが続ける。
「キャルの花を使った薬は、全てを集めて商業ギルドで鑑定しているんだ。きちんとした証明書のあるものしか、まともな店では販売されてないからね」
だからアキトくんも安心して良いよと、父さんは優しく語りかける。俺だけが説明するよりも、他の人からも説明された方がアキトも安心するかもな。
次はキャルの花の説明か。さてどうするかと考えながらちらりと視線を向ければ、キースはこくりと頷いてくれた。自分で説明してくれるらしい。
「あのね、アキトくん。キャルの花にはちゃんと葉脈があるんだけど、クレールの花には葉脈が無いんだよ」
キースの分かりやすい説明に、さっき見分けがつかないと言っていた使用人たちもいそいそとメモを取っている。知っておいて損はない知識だからな。
アキトはと言うと、ワクワクした様子でうんうんと頷きながら説明を聞いているようだ。
「キースくん、教えてくれてありがとう」
「どういたしまして」
「そっか、葉脈を見て見分けてるのか…そう言われるとキャルの花とクレールの花、俺もこの目で違いを見比べてみたかったなー」
うん、そうなるだろうなとは思っていたよ。見分け難い素材の見分け方をくわしく説明されたら、採取が好きな冒険者なら次はやってみたいと思うものだ。
「うーん…キャルの花はあの森に行かないと駄目だから…今はちょっと行かせたくないな」
今日と明日で確実にあそこの牙蛇盗賊団のアジトは無くなるだろうが、それでもまだしばらくはルティルーの森には行って欲しくない。
まあこれはただの俺の我儘だから、どうしても行きたいと言われたら止めるわけにもいかないんだが。
「ごめん。本気で行きたいわけじゃなくて…さすがに俺もしばらくはあの森には近づきたくないよ」
「そっか…今度枯れない花にキャルの花とクレールの花が無いか…聞いてみようか」
そっと耳元に顔を寄せてそう囁けば、アキトはバッと顔をあげた。
「ケンなら、どっちもこの領の名産だからーとか言いながら作っていそうじゃない?」
「うん、作ってると思う!今度レイさんに会いに行く時に聞いてみよう」
「ああ、そうしよう」
ひそひそと声を潜めてアキトと話していると、周りの使用人たちから不思議そうに見つめられてしまった。気になると視線で主張されている気もするが、まだ皆の贈り物が終わっていないからな。まだ枯れない花の事を大々的に広めるわけにはいかない。
「ごめんね。今はまだ言えない話なんだ。話して良い時期になればきちんと話すから」
見回してから牽制するようにあえてはっきりとそう告げれば、使用人たちは揃ってすっと引いてくれた。
「あ、僕もアキトくんのすごい所思い出したよ!」
空気を変えるように、キースが笑顔でそう言い出した。使用人たちは楽しそうに、ぜひ聞きたいですと答えている。
うん、俺も聞きたいな。
「さっきのウマくんのための魔力を感じたハル兄がね、僕たちの所に一人で来てくれたんだけど…」
アキトの活躍の話しだと思って聞いていたら、予想外の言葉が飛び出してきたな。別に特に隠すつもりはなかったが、一人で先行した事はまだ父さんに報告していなかった。
「ハル…?」
にっこりと貼り付けたような笑顔を浮かべた父さんに名前を呼ばれて、俺はそっと視線をあげた。
「魔力を感じたからアキトが攻撃をするような状況にいるのかと気が焦って…その、単独行動をしてすまなかった」
「…まあ良いか。そうなるかもと思って総隊長につけなかったんだからね」
報告をしなかった事はどうかと思うがと、視線だけで軽く叱られてしまった。単独行動は後悔していないが、それについてはすまないと思ってるよ。
「でね!その時近づいて来てるのがハル兄だって、僕たちには分からなくて」
「ああ、気配で誰が来たかまで判断するのは難しいからね」
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